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「望月さん。ちょっといいかしら」
休み明け、会社で部長に呼ばれた。
「はい。これ」
「部長。なんですか?これ?招待状?」
「ええ。この前望月さんたちが成功させてくれたプロジェクトで一緒だったREIジュエリーからなんだけど」
「なんの招待状ですか?」
「あちらの新ブランド立ち上げの話題作りとしてこちらにもプロジェクト用に提供してもらってたでしょ」
「はい」
「今回のプロジェクトもヒットして随分話題にもなったし、その新ブランドが規模を大きくして本格的にREIジュエリーのメインブランドとして立ち上げるらしくて。それが正式に発表されるみたいなの」
「そうなんですね。確かにプロジェクト用に新ブランドで作ってもらってただけですし、まだ正式に立ち上がってなかったですもんね」
「それで望月さんたちプロジェクトメンバーも、ぜひその新ブランド発表会にも参加してほしいってご招待受けて」
「それは光栄なお話ですね。わかりました。喜んで出席させて頂きます」
「じゃあ、そう伝えとくわね」
「はい」
招待状を受け取って自分のデスクに戻る。
そっか。
一緒に最初から作り上げたあのブランドがようやく立ち上がるのか。
確かにうちの独占ブランドになってたから、それでどちらの人気にも繋がったっていうのもあるし。
でも、あのブランドは素敵なデザイン多いから、確かにもっとクオリティー上げて、メインで出しても必ず人気出るだろうな。
すでに世間ではそういう声も上がってるし、このやり方だとブランドもここから大きくなっていきそう。
そっか。ちょっとまた楽しみになって来たな。
そしてREIジュエリー新ブランド発表会の当日。
パーティー会場のホテルは前の記念パーティーと同じ場所だった。
それだけで少し胸の奥がキュッとする。
忘れようと思ってたのに、同じホテルにしなくてもさ・・・。
いや、向こうはなんの悪気もないんだけど、たださ、ただ、このホテルは樹との想い出があるだけに、ちょっと複雑・・・。
そういえば、樹が元々このREIジュエリー知り合いだったみたいだけど、樹もここ・・来てるのかな。
忘れようとする時に限って、樹と会ってしまうかもしれない状況とか、何。
出来ればもう樹との想い出を思い返さないようにそっとして頂きたい・・・。
って誰に言えばいいのかわかんないけどさ。
まぁ今日会ったとしてももう無視無視。
ここで気持ち切り替えないとまたズルズル引きずってしまう。
今は会社の人間なのかもわからないし、私が気にする必要なし。
「いや~望月さん。すごいですね~。さすがREIジュエリーの新ブランドパーティー。前の麻弥ちゃんの結婚式の時もすごいと思いましたけど、またレベルが違いますよね」
「三輪ちゃん、そればっか(笑)」
パーティー会場で待機している中、一緒にいた三輪ちゃんがまたまた興奮してその状況を楽しんでる。
「透子さん」
「あっ、栞さん。お久しぶりです」
プロジェクトでお世話になった栞さんが声をかけてきてくれた。
「プロジェクトではありがとうございました」
「いえ。こちらこそ。栞さんの素敵なデザインのおかげで、ホントに思ってた以上にヒットして。いろいろとありがとうございました」
「こちらの方こそです。あれがきっかけでうちの新ブランドも立ち上げ前なのにここまで話題になりましたし、本来のREIジュエリーも更にそのおかげでまた人気復活してますし感謝してます」
「新ブランド立ち上げおめでとうございます」
「ありがとうございます。ようやく皆様にこのブランドを発表出来るので嬉しいです」
「私もこちらのREIジュエリーと新ブランドのファンとしてこれから楽しみにしてます」
「ありがとうございます。では、私準備がありますのでまた」
「はい」
なんか栞さんすごいな~。
自分で作った作品を手掛けて、それを自信を持って届けるというその意気込みが感じられて活き活きしてる。
このジュエリーは女性が活き活きと輝く姿を感じられるブランドで、やっぱり好きだな。
一ファンから仕事としてここまで繋がれてホント幸せなことだと実感。
プロジェクトでは私の理想の意見も栞さんは取り入れてくださった作品もあったし、ホントにたくさんの女性の夢を叶えるブランド。
これも樹がこのブランドとプロジェクトで繋げてくれたおかげだな。
樹のことを想い出してしまうのは少しまだ切ないけど。
でも、こうやって一つ一つの仕事に繋げてくれたことや、樹が存在していたその一つ一つの時間はかけがえのないモノだから、それは否定したくない。
樹が作って来てくれたこのすべての道は確かに存在していて、今ここにいなくても、それが樹が一緒にいた証、存在していた時間だから。