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「皆様、大変お待たせいたしました。只今より、REIジュエリーの新ブランド発表会を始めさせて頂きます」
するとしばらくして発表会が始まるアナウンスが。
「皆様本日はお忙しい中、集まっていただきまして誠にありがとうございます。では、早速ですがまずは新ブランド立ち上げの発表前に弊社代表取締役REIKAよりご挨拶がございます。それでは、よろしくお願いします」
「本日は、REIジュエリー新ブランド発表会にお集まりいただきありがとうございます。ただいま、ご紹介に預かりました、REIジュエリーの代表を務めておりますREIKAでございます。皆様方には普段からREIジュエリーを愛していただき感謝しております。この度、弊社でブランドを新しく立ち上げることになりました。それに伴いその新ブランドは弊社の子会社として成り立ち、後々はREIジュエリーを引っ張るメインブランドとして成長させていきたいと思っております。まずはそちらの新ブランドの代表を新たに務めます人物からご挨拶させていただきます」
REIKA社長から紹介され、檀上に新ブランドの社長が姿を現す。
何気なく見たその人物を見て目を疑う。
そこにいるはずのない人物がそこに立っていた。
堂々と凛々しくそこに佇んでいるその人物は、ずっと会いたくて仕方のなかった樹だった。
え・・・ちょっと待って。
あれ・・樹だよね?
なんで樹があの場所に・・・?
「望月さん・・あれって・・早瀬さん、ですよね?」
「う、うん・・」
やはり三輪ちゃんが見ても樹に見えるらしき人物。
うちの社のプロジェクトに関わっていた皆は当然見覚えがありざわつく。
「ただいま、ご紹介に預かりました、REIジュエリーの子会社新ブランドの代表に就任いたしました早瀬 樹と申します」
やっぱり紛れもない樹だ・・・。
なんで・・樹がこのブランドの社長に・・?
全然理解出来なくて頭がついてかない。
「この新ブランドAngraecum(アングレカム)はREIジュエリーの新ブランド、そして子会社としてREIジュエリーとはまた違うコンセプト・ラインナップを揃えさせて頂きました。本来のREIジュエリーの良さと価値を活かしながら、更にたくさんの方に手に取りやすい商品を提供したいと思っております。元々のREIジュエリーは女性が輝き続けられる希望ある商品として提供させて頂いておりましたが、こちらの新ブランドは男性・女性どちらもそれぞれに愛ある商品を贈り合い、更に輝き続けてほしいというコンセプトがメインになっているブランドです。ペアアクセサリーとして共に持っていてもオシャレな商品から相手を想いオリジナルで作れる商品など多数の魅力ある商品をご用意しております。とにかくこちらのブランドではパートナーへの愛をこのアクセサリーと共に感じられて、更に輝いてほしいという願いが込められております。デザイナーも若手の新進気鋭の素晴らしい人材が揃っており、他にはないこちらのブランドでしかない必ず気に入って頂ける商品がお届け出来ると自負しております」
樹が社長として立派に次々と語る言葉を必死に聞いていくだけで精一杯で。
「そしてこのブランドの立ち上げのきっかけになったのは、私にとって大切な大きな存在である一人に出会えたからです。その人のおかげで私は縁あってこちらのジュエリーと関わることが出来、自分の力でその愛しい人をもっと美しく輝かせたい・その想いを永遠に残る絆と形を残していきたいと思ったのがきっかけで、この商品は生まれました。すでにREI社との独占アクセサリーとして、今もなお皆様に先立って気に入って頂いておりますが、このブランド立ち上げと共に更にそちらとの商品・このブランドでの商品を自信持ってたくさん届けさせて頂ければと思っております。最後にこのブランドのAngraecum《アングレカム》という名前は、実際にある花の名前で、花言葉は『祈り』『いつまでもあなたと一緒』。この花言葉のように、愛する方に贈って頂きたい特別なモノとして、そしてずっと愛して頂けるアクセサリーになることを願っております」
初めて聞く樹の言葉や想いに、ただ胸がいっぱいになる。
「新社長としてまだまだ経験も浅く未熟ではありますが、これから誠心誠意愛ある商品をお届けし日々尽力して参ります。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます」
また私の知らない樹だ・・・。
こんな立派な樹どこにいたんだろう・・・。
そっか・・。
こんなにすごい人だったんだ。
そりゃ、私と別れるはずだよね。
こんなすごい立ち上げに関わってたなんて、そりゃ何も知らない私の存在は邪魔だっただろうし。
いくら付き合っててもこんなすごいこと言えるはずないか・・・。
そっか・・・。
やっぱり樹は、私なんかには到底釣り合わない別世界の人だった・・・。
これで理解出来た。
あの時何も言わず優しさと共に別れたこと。
あれから一度も連絡がなかったこと。
どれだけ月日が経っても元には戻れないこと。
だから会社にもずっと顔出してなかったんだね。
まさかまったく違う会社の人間になってるとは思わなかった。
さすがにうちの会社を継ぐんだろうって思ってたし。
そうすればいつかは出会えるチャンスも・・なんて淡い期待持ってたのに。
やっぱり樹にとっては私とは別世界の道を歩んでいて、私との出会いは一時的に楽しんだ時間だったってことなのかな。
最初から樹との出会いも始まりも普通じゃないってわかってたのに。
ずっと私の知らない何かを隠していて、すべてを言ってくれなかった人。
樹との関係もきっといつの間にかどこかで勘違いしちゃって、都合よく考えてただけなんだろうな。
樹にとって、本当はどれも深い意味はなかったのかも。
結局は別れを選んでる今がそういうことなのだろうから。
樹の隣にいれる人生でもパートナーでもなかったってこと。
ただそれだけ。