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※……いいとこまで書けた!と思った方……すいません……ああ……またこの展開か……になっていきます。余韻もなく……。
自分の脳内が憎い……。
大丈夫?遥に飽きてきてない?てか、蓮司?
部屋の天井を見ていた。
目は開いているのに、景色が何も入ってこなかった。
夕飯も口にせず、シャワーだけ浴びてベッドに倒れ込んだ遥の耳に、玄関の扉が閉まる音が響く。
兄たちの気配。
それと、もう一つ──軽い足音が階段を上がってくる。
ノックもなしに、ドアが開いた。
「……元気そうじゃん、思ったより」
蓮司だった。
相変わらずの口調。
けれど、瞳の奥には油膜のような、冷えた光が宿っていた。
遥は身を起こさず、ベッドの上で目を伏せたまま言う。
「帰れよ……」
「なんで? おまえの顔見に来たのに」
「……っ……見ても、楽しくないだろ……もう」
その声に、蓮司はほんの少し口角を上げた。
「そっか。じゃあ、見せてよ。“壊れきった”顔。──さっきの日下部には、見せなかったやつ」
遥の身体が、びくりと強張った。
「……なんで、知って──」
「そりゃあ、見るだろ。昇降口、陰になっててよく見える。……いいシーンだったなあ。
ほら、“ここが感動ポイントです”ってテロップついてたら泣けたと思うよ」
「……ふざけんなよ……っ」
遥が呻くように吐き捨てると、蓮司は、ベッドの端に腰を下ろした。
「ふざけてなんかないよ。感動してる。……遥が、ちゃんと誰かを信じようとしてたって、さ」
蓮司の声は穏やかだった。
だからこそ、その先に来る言葉が、遥には読めてしまった。
「でも──無理なんだよな。
おまえは、そうやって“信じた瞬間”に壊れる。
……だって、おまえが壊れてんだもん。
なあ? 今さら誰を信じたって、触れたって、
“汚れる”のはおまえじゃなくて、相手のほうなんだよ?」
「……やめろ……」
「だってそうだろ?
あの時、日下部が“怖い顔”してたの、見たよ。
優しいだけのやつが、あんな目するわけない。
おまえが泣いてたせいで、“日下部のほうが壊れた”んだよ──わかる?」
遥は、息を止めていた。
蓮司は喉元に手を伸ばす。
添えるだけ。触れない。
けれど遥の呼吸が、浅くなる。
「おまえは、こういうふうにしか、人と関われない。
苦しいなあ。壊れたおもちゃが、他人を壊して喜ばれてるなんて。
ほら、ねえ──“本当のこと”言ってやってよ。
『俺なんか好きになるな』って」
遥の手が、シーツをぎゅっと握りしめた。
喉が焼けるように熱い。
指先が、じんじんと震えていた。
──ああ、これが俺の“罰”だ。
日下部に触れようとしたこと。
信じようとしたこと。
あの温度に、すがりたくなったこと。
全部、俺が壊した。
「なあ遥、さっきのこと──“嬉しかった”って思ったろ?」
蓮司が覗き込んでくる。
その目には、楽しむような、嗜虐的な光がある。
「だったら、おまえ、またやったってことだよな。
……“触れて壊した”。
さすがだよ、遥。ほんと、おまえらしいよ」
遥は、視界がぐしゃぐしゃになるまで泣くこともできなかった。
ただ静かに、声も出さず、息を殺して、
布団の端を握りしめたまま、ひとつも反論できなかった。
蓮司の声だけが、暗い部屋に響いていた。