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クラス中が凍り付いた……気がした。
後ろから慌てた様子で担任が駆け込んできた。
「おい、内田!ドアは静かに開けなさいっ」
息を切らしながら呼びかける担任を尻目に、彼女――内田さんは教卓に立った。そして、黒板に癖のないきれいな字で。
内田 東
「隣の市から転校してきた内田です。趣味は理系研究とスポーツ。よろしく」
左右対称な名前だな、と思った。
それ以上に、内田さんは綺麗だった。
綺麗とか、儚いというか、その場にいる人々を魅了するような不思議な力を持っている気がした。
ほら、前の方の席の男子たちが見入っている。
「……質問あれば受けるけど」
気まずく思ったのか、内田さんが切り出した。すると、誰かがハーイ!と声を上げた。
「内田サンって、ハーフなんですかぁ?」
皆が頷く。
最初に教室に入ってきたときも思ったけど、日本人では珍しく腰まで伸びた髪は少しウエーブのかかった金髪で、肌も色白だ。その上、不機嫌オーラ全開の瞳ははちみつ色だ。ハーフだと思うのは自然な気がする。
「ちげぇよ。私は純日本人だけど、生まれつき色素が薄めなんだよ。つか家族全員そうだし」
他に質問が無いなら席行くけど、と言って内田さんは机の間をツカツカ歩いて行ってしまった。
なんか、とても不愛想で……。関わりづらい。そんな雰囲気の子だ。
オマケに言葉遣いも粗雑だし、初っ端からケンカ腰だし。……元ヤンなのかな??
あたしが思考の沼に嵌っていると、上から「……隣失礼」と声が降ってきた。
「……あ」
空席だったあたしの隣に内田さんが腰かける。
……マジか。
災難の予感しかしないんですけど。