TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

西遊記龍華伝

一覧ページ

「西遊記龍華伝」のメインビジュアル

西遊記龍華伝

150 - それぞれの分岐点 弍

♥

24

2026年01月07日

シェアするシェアする
報告する

源蔵三蔵 二十歳
悟空達が俺を置いて広間から出て行く姿を、俺は黙って見つめる事しか出来なかった。


殴られた頬が痛い。


何で、あんな事を言ってしまったのだんだ。


悟空に言っていい言葉じゃない事は、俺がよく知ってるじゃないか。


小桃が手際よく傷口に消毒液を塗り、その上から綺麗なガーゼを貼り、丁寧に包帯を巻いて行く。


「痛くない?」


「あ、あぁ…、ありがとう」


「…、大丈夫?」


「…」


俺は小桃の問い掛けにも答えれる程、気力がなかった。


小桃は俺の雰囲気を察したのか、静かに側を離れて行く。


今見えている光景がボヤけて見えるのも、喉に力が入らないのも、何もかもどうでも良いの。


壁に背を預けていると、李が険しい表情をしながら声をかけてきたのだ。


「さっきの若に対する態度は何だよ」


「は?」


「は?じゃねーよ。人間ごときが、若に上から目線な言葉を吐くなって言ってんだよ」


「何で無関係のお前に、そんな事を言われないけねーんだよ。お前に関係ないだろ、俺と悟空が言い合いをしていたとしても」


俺と李の言い合いを聞いていたのか、丁と胡が走ってくる。


「おい、李。これ以上、からむのはやめとけ」


「隊長!!!だけどっ、若に生意気な事言うから」


「うちの馬鹿がちょっかいかけて悪かったな」


丁が李の首根っこを掴みながら謝ってくるが、それすらもどうでもよく写ってしまう。


「少し、ほっといてくれ」


「分かった、すまない」


俺の言葉を聞いた丁は空気を察し、そそくさにうるさい李を連れて離れて行く。


涙がとめどなく流れ落ち、お師匠との思い出が流れ込んで来る。


俺はまた家族を殺され、失ってしまった。


お師匠とちゃんと話を出来ないまま、お師匠が無惨な死に方を…。


ダメだ、何もやる気にならない。


「三蔵」


「哪吒…」


「空気を吸いに行こう」


グイッ。


手当てを終えた哪吒が現れ、強引に俺の手を引っ張り立ち上がらせる。


「わっ!?ちょっと!!!」


「黙って来い」


哪吒に静止させられた俺は黙って腕を引かれながら、広間を出て綺麗な山の光景が一望できる中庭に

移動させられた。


サァァァァァ…。


初夏の訪れを知らせるような涼しげで暖かい風、新緑の新鮮な香りが鼻を伝う。


あれ、ここから見える景色が凄く綺麗に見える。


「俺達は今、この景色を独り占め出来る場所に居たんだな…」


「あぁ、私もさっき気付いたんだ。中々なものだろ」


「そうだな…」


「そこの岩に座ろう。丁度、二人分座れるスペースがある」


哪吒に促され、俺は岩に腰を下ろす。


初夏の香りを乗せた風に包まれ、泣き腫らした目に沁みて行く。


「ここにお前を連れてこれば、少しは落ち着くと思ってな。どうだ、落ち着いたか」


「外の空気を吸うだけで違うな。俺、悟空に最低な事を言っちまった」


「そうだな、悟空に対して言う言葉じゃなかった。悟空はお前のように人目も気にせず、大声で泣いたりもしない」


哪吒の言葉を聞いて、返せる言葉は見つからない。

冷静さのない言葉を投げ捨て、悟空に八つ当たりのようなものをしてしまった。


「死になれて行くよりも、泣いてくれる存在もいるんだろうな。この世界を作った奴が、三蔵のような奴だったら変わっていたのかもな」


遠い目をしながら話す哪吒の横顔は、死んだ石の事を思い出しているのが分かった。


石は俺達を逃す為に、自分の命をかけて守ってくれた。


旅に出て行かなかったら、一生考える事がなかっただろうと思う事がある。


神々達がしてきた罪、鬼達の悲惨な過去、この世界の残酷さ、大切な人の死。


人が死ぬ時、この世での修行が終えたと言う事としか聞かされていなかった。


六道の中の人間道で産まれた者は、死ぬまで対人関係で悩むのが修行なのだと。


確かにそうなのかもしれない。


どうして、人は争うのか。


同じ道を目指している筈なのに、互いに違う方法で道を目指す事もあれば、争う事でしか目指せない道を選んでしまう事もある。


どうしたら、誰も死なずに済むのだろうか。


この旅になんの意味があるのか、考えさせられる時がある。


「お師匠は信じて信仰してきた神達に見捨てられ、水元も他の坊さん達も皆殺しにされたんだって。俺は直接見てないから分からないんだけど、本当なんだと思う。俺の事を大切に思ってくれていて、この旅に出すのも、本当は反対だったんだって」


哪吒は俺の話を黙って聞いていた。


慰めの言葉をかける訳でないし、相槌を打つ訳でもない。


それなのに俺は勝手に気持ちを吐き出す。


「争わなくて良い道はないのかな。神も鬼達も人間も」


「無理だろうな、神と鬼達は互いの存在を消した世界を理想としている。願いの為に、奴等は血を流す事を惜しまない。お前も見ただろ、鬼達が天界で神や天界軍の奴等にした事を。あれを最初にしたのは神だ、鬼達が同じ事をするのは当然だろうな」


「…、争うしか道はないって感じか」


「お前達の目的は経文を集めて、天竺に行く事が目的だろ?神と鬼の因縁に頭を悩ましても、仕方がないだろ」


哪吒はキョトとしながら、俺に尋ねてきた。


「いや、そうなんだけど…、それが大変なんじゃん。経文集めも一筋縄じゃいかないんだから」


「お前達が苦労するのも、何か意味があるじゃないか?直接、観音菩薩に聞いたら?」


そう言いながら、哪吒は後ろを振り返る。


哪吒の視線を追うように振り返って見ると、観音菩薩がこっちに向かって歩いてくるのが見えた。


「話中だったかな」


「いや、話は終わった。私は席を外すよ」


「悪いね、哪吒」


「気にするな」


腰を上げた哪吒は広間に戻って行き、観音菩薩は隣に腰を下ろす。


少しの沈黙の後、観音菩薩は思い口を開けた。


「和尚の事、申し訳なかった。和尚の死も、君の兄弟子の水元を死も僕達に責任がある。寺の集落に集まってくれた者達も…、死なせてしまった」


「お師匠が言っていた事は…、本当なの?」


「あぁ、僕達の味方だと思っていた天帝が、和尚達の心を壊して助けようとしなかったのは事実だ。和尚は温羅に見せられたのだろう、美猿王と鬼達の過去と先代の神達の犯した罪を。誰でも、神達がしてきた事を見れば幻滅するさ」


「…、これから先、アンタ等が動いても変わるのか」


俺の言葉を聞いた観音菩薩は、視線を下に戻した。


***


三蔵と観音菩薩が中庭で話している中、傷だらけの羅刹天の世話係の雨桐、人の姿をした白沢の二人が、悟空と小桃がいる縁側の茂みから出て来ていた。


孫悟空ー


「美猿王の城に居たとは思いもしませんでしたよ、貴方を探していましたので」


「あれ、この男の人って…。確か、牛鬼の仲間じゃなかったっけ?探してたって、悟空の事を?」


小桃が雨桐の隣に立っている男の事を見ながら呟く。


「俺に用って何だ、牛鬼の手下野郎」


俺は小桃の前に立ち、警戒しながら男に尋ねる。


「あぁ、今は誰の仲間でもありませんよ。牛鬼はどこかに行ってしまわれたので。無論、貴方にも手を出す気はありませんよ」


そう言って男は両手を上に上げて、攻撃の意思がない事を俺に示してきた。


タタタタタタタッ!!!


「おい、悟空!!!妖気を感じたんだが…って」


「アンタ、雨桐じゃないか!?」


廊下を慌てて走って来た沙悟浄と猪八戒が、雨桐の姿を見て驚く中で、二人の背後から付いて来ていた羅刹天は口元を緩ませている。


「よく戻って来たな、雨桐。お前の事だ、何も収穫無しに俺の元に戻って来た訳ではないだろう?」


「はいっ、羅刹天様。こちらを悟空様に、お見せする為に戻って参りました」


「悟空に?それは何だ」


「天帝達が集会をしていた寺の中に、古い書物を保管している部屋を見つけました。ただ、その部屋に保管されている書物全ては、紙が腐り字を読める物はありませんでした。ある一つの書物を除いては…」


羅刹天の問い掛けに答えながら、雨桐は南京錠付きの

書物を見せてきた。


雨桐が見せてきた書物の表紙には吐血痕があり、俺の名前を墨汁で殴り書きで書かれ、沙悟浄と猪八戒の二

人はこの字に見覚えがあるようだ。


「おいおい、マジかよ…。その字は金蝉のじゃねーか」


「あぁ、間違いない。俺達は何度も、アイツが字を書く所を見て来たんだ。この字は金蝉のもので間違いないが…、悟空に宛てた書物があったのは知らなかったな」


「お前等が言うんなら、間違いねーな。おい、その書物貸してくれ」


猪八戒と沙悟浄の話を聞きながら、雨桐から南京錠付きの書物を受け取る。


前世の三蔵が血を吐きながら書いた書物、鍵を付ける程に守りを固める必要があったのだろう。


ジッと南京錠を見ていると、封印の呪文が細かく彫られているのが見えた。


「解《カイ》」


ありきたりな解除呪文を唱えてみると、ガチャンッと音を立てながら南京錠が破壊される。


「あ、開いたね南京錠」


「もしかしたら、悟空が呪文を唱えないと開かない仕組みだったのかも」


俺の左右にいる小桃と猪八戒が、興味深そうに書物を見つめていた。


パラパラッとページを捲って見ると、俺の意識が書物の中に引き摺り込まれる感覚がした。


***


悟空の背後から書物を覗き込んでいた羅刹天だが、眉間に皺を寄せながら不満げに呟く。


「あ?何にも書かれてねーじゃねーか。鍵まで付けておいてよ」


「皆様、お静かに。悟空様が読まれていますので」


「はぁ!?何も書かれてねーのに、どうやって読んでんだよ」


「この書物は、悟空様しか読めない仕組みになっているのでしょう。悟空様反応を見たら、分かるでしょう?彼は今、書物に書かれているものを見ているのですよ」


騒ぐ羅刹天を静止させた白沢は、視線を悟空に戻した。



***


孫悟空ー


天帝と美猿王二人の背後から伸びている巨大な白い手が、赤い糸を引いている見えていた。


馬鹿みたいに巨大な赤い目玉から無数に伸びている白い手、周りにも少し小さい目玉が浮いていてる。


妖怪でもない異質で不気味な生き物が、二人を操り人形のように動かして遊び、目玉を嬉しそうに歪ます。


「何なんだ、この目玉は…」


「悟空、俺達の本当に倒さなきゃいけない存在だよ」


「なっ!?お前がどうして、ここに居んだ」


右隣から声が聞こえ、視線を向けて見ると五百年前と変わらない姿の金蝉が立っていた。


「俺の意識を閉じ込めておいたからね、死んでいてもこうして残せれる」


「金蝉、永遠に読まれないかもって思わなかったのか?俺に」


「思わなかったなー、絶対に悟空の元に届くって確信があったからね」


金蝉はそう言いながら、巨大な目玉を見ながら話し出す。


「五百年もの間、俺がどうやって死んだのか正確に分かっていない。何者かに暗殺されたか、毘沙門天んい殺されたのかってね?悟空も、俺がどうやって死んだのか知らないでしょ?」


今の今まで、金蝉に言われるまで想像もしなかった。


何で、こんな当たり前の事を考えなかったんだ?


沙悟浄も猪八戒も、観音菩薩達さえも深く考えなかったのは…。


“そう言う風に仕組まれていた”の言葉が頭を過った時、頭の中がスッキリして行くのが分かる。


「悟空、俺はこの化け物に殺されたんだ」


「この化け物は何なんだ?」


「破壊と創造の神シヴァ」


金蝉の口から聞いた事がない神の名前が出てきた。


*シヴァはヒンドゥー教の最高神の一柱で、破壊と創造の神として知らされ、ブラフマー【創造】、ヴィシュヌ【維持】と共にトリムルティ【三神一体】を構成します。

破壊は次の創造を生み出す為のものであり、ヨガや瞑想の守護神でもあり、ナタラージャ【舞踏王】やアディヨーギー【第一のヨーギー】とも呼ばれ、多様な側面と名前を持つ神です*


「シヴァ?聞いた事がねーな」


「俺達が信仰しているのは仏教だからね、シヴァは悟

空達が目指してる天竺に居る神だよ。俺も幽閉されなかったら、異国の神についての書物を読み漁らなかったら知らなかったよ。目の前に現れたシヴァは、俺が見た事がある神じゃなかった。人型じゃない異質な生き物、嫌らしい眼差しを向けるモノ」


「異国の神とやらが、わざわざ殺しに来た理由が分かんねーな」


俺の言葉を聞いた金蝉は、俺に視線を向けながら呟く。


金蝉には、シヴァが殺しに来た理由が分かっているようだ。


「俺達の知らない間に、この世界は作り変えられた。シヴァは気に入らなかったのさ、シヴァはよ。自分がいない所で、好き勝手にした仏教徒の連中の事を毛嫌いした。最初に目を付けられたのが、偶然に出会した俺だった」


「偶然だと?シヴァは仏教徒の人間を殺す為に天界に訪れ、幽閉されていた金蝉と出会い殺した…と?

本当にそうなのか?」


「悟空の言う通り、俺とシヴァの出会いは偶然なんかじゃない。必然的に、例の赤い糸に引き寄せられたんだろうな。奴の巨大な手が俺の体を貫き、心臓を簡単に握り潰されたよ。俺を殺せれて満足したのか、シヴァは独り言を呟いていた。”面白い玩具を二つ、見つけた”と」


「それが、美猿王と天帝の二人だった…。そう言う事だろ」


そう言いながら金蝉を見ると、黙って頷いている。


「シヴァは美猿王と天帝を裏から操り、争わせようとしている。天竺、自分の居る場所まで来させる為に」


「…、そんな事をさせて意味があんのか。なぁ、金蝉…、俺達の旅には意味があんのか」


「君達の旅には、大きな意味はあるよ。君がシヴァと

唯一、戦える力を持っている。いや、持たされたんだ」


金蝉の言葉を聞いた時、天帝と共に行った加護の儀式の事を思い出した。


「君の今の体にある木の枝と葉、胸の部分にある梵字は神と同等の力を持った器だ。シヴァが天帝を裏で操っていると言っただろ?加護の儀式の時にも、シヴァは君の器を別の物にしようとしていた。だがシヴァの意識を掻い潜り、神木で作られた器にすり替えた人物が居た筈だ」


「摺り替えた人物?誰だ」


「俺の意識を閉じ込めた書物を持ってきた者だよ」

雨桐の隣に立っていた胡散臭い顔した男の事か…。


「気になるなら本人に聞いてみて、ただ時間は限られて来てる。シヴァの存在を早く、悟空に知らせたかったんだ」


「分かった、他の連中の耳にも入れておく。時間を掛けてる場合じゃない事は承知してる、美猿王の後を追い掛けねーといけねぇ」


「悟空、経文集めの旅は、君達四人じゃないと意味がないんだ。俺が意味を答えなくても分かる時が必ず来るから」


そう言った金蝉の体が薄くなって来ている事が分かった。


書物に込められた金蝉の意識が消えかかっているのだろう。 


「すまない、君には苦労を掛けるね」


「そんな事気にすんのか?お前」


「ちょ、ちょっと!?繊細な事まで気に掛けれるって!!!こっちは真面目な話をしてるのに…」


「ぐだぐだ悩んでたって仕方ないだろ。現世のお前は泣き虫で、めんどくせぇぞ」


生まれ変わる前と後とで、金蝉の性格が変わったな。


俺達と旅をしている三蔵として生きている金蝉は、子供みたいに感情が動いて泣く。


天界で生きていた金蝉は、淡々と自分の仕事をこなして人前で泣いたりもしなかっただろう。


「俺の神は一人だけだよ、これからもずっと悟空だけだ」


「そう思ってんなら、心配せずに黙って見てろ」


「はははっ、やっぱり…、悟空には敵わないなぁ…」


俺の言葉を聞いた金蝉は、顔をくしゃくしゃにさせながら子供のように笑った。


***


金蝉の笑顔を見た瞬間、意識が戻されると小桃が心配そうに顔を覗き込んで来ていた。


「わっ!?悟空っ、戻って来た?で当てるのかな…」


「小桃、顔が近い」


「ご、ごめんっ!!!」


小桃は顔を真っ赤にさせながら俺から離れ、右隣に座っていた沙悟浄が声を掛けてくる。


「俺達には文字が見えなかったんだが、悟空だけには読めたんだよな?」


「あぁ、厄介な事が起きてるって事が書かれていた。俺も詳しくは知らねーから、話を聞いた後に質問してくんなよ」


「…?よく分からないが…、分かった」


「んじゃ、説明すんぞ」


俺は沙悟浄達に金蝉の死にも関わったシヴァの存在、シヴァが天帝と美猿王の二人を使って、何か企んでい

る事を説明した。


沙悟浄達は目を点にさせて、口をパクパクさせている。


そりゃそうだ、自分達が知らない存在が天竺に居るんだからな。


「アンタは何者だ?加護の儀式の時、俺の器を神木で出来た物と取り替えたと聞いた。牛鬼側のアンタが、そんな事をする理由が分からない。牛鬼が命じたのか、アンタ個人が動いたか、どっちだ」


「おや、その事まで書かれていましたか。俺…、いやもう私に戻して良いですね。私個人の判断で、悟空様の器を変えさせて頂きました。私、白沢は神獣と呼ばれる生き物の分類に入ります。貴方の事はよく、金蝉様から聞かされておりましたよ」


「金蝉とアンタの関係をどうこう聞くのは後にする。牛鬼に付いていたのにも、何か企んでの事だろうし。俺の所に来たのは、書物を渡しに来ただけじゃねーよな」


そう言いながら、目の前に居る白沢に視線を向ける。


白沢はもう一つ、俺に何か言いたい事があって来た筈だ。


「俺等が居そうな場所を雨桐から聞いたんだろ、白沢」


「ええ、私は生前の金蝉様にお仕えしておりました。神獣と言う生き物は義理堅いもので、主人が望んでいる事を叶える事が私の使命です。悟空様、私はそこ等の神獣よりも位が高い。悟空様、貴方だけでも天竺にお連れしたいと思い、貴方様を迎えに参りました」


「俺達四人が天竺に行かないと意味がねーんじゃねーのか」


「今の金蝉様は心身疲労が酷い、すぐに動けるかどうか分かりません。貴方様だけでも、天竺に近い距離に居た方が良い。悟空様も、そうお考えでは?」


「「そうなのか!?」」


俺と白沢が話していると、沙悟浄と猪八戒の大声が重なった。


「やはり、釈迦如来を裏で操っていた人物が居たんだな」


鳴神に肩を借りて歩いて来る鳴神が、俺達の方向に向かって歩いて来ているのが見える。


「すまない、話は聞かせてもらった。釈迦如来の思考は、奴の本心だろう。加護の儀式にお前達に与えた神力は、恐らく微々たるものだ。だが、悟空だけは俺達よりも遥かに強大な神力を感じたのは、そこに居る白沢の仕業だったとはな」


「貴方達だけでは頼りないので、私一人…、いや悟空様も知っている兄妹も動いて居ますね。シヴァと言う存在には気付いておりませんが、兄の方は頭が良い。盲目の中、彼等の光は目の前に居る神ではなく、貴方様を光にしておられる」


「経文を五本集めれば、争わずに世界を塗り替える事ができ…」


「そう言う事じゃねーよ、如来」


如来と白沢の会話に割って入り、俺は如来の言葉をわざと遮った。


「塗り替える事は出来るだろうよ、シヴァのどうにかしない限り同じ事の繰り返しになる。一回目の時がいい例だろ。何も変わらないんだよ、塗り替えるだけじゃ」


「悟空の言う通りだ。歴史が残されるように、俺達の代で変えねーといけねぇ。神も妖も人も考え方を変えないと、何も変わらな…」


ドォォォーンッ!!!


「「「っ!!!?」」」


親父が話をしていた時、俺達の体に重圧が掛かり、押し潰されるような感覚がした。


【俺の遊びを邪魔する気カ?猿共】


ドスの効いた男の声が聞こえ、視線を空に向けると、

巨大なシヴァの幻影が俺達を見下ろしていた。

この作品はいかがでしたか?

24

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚