テラーノベル
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「本当に海が近いね、いつでも泳げそう」
コテージに着いて荷物を整理しながら元貴は窓から何度も海を眺めている。
「後で少し入ろうか?夜はバーベキューして、花火も持ってきたから」
「···俺も持ってきた!」
2人で花火を見せ合いっこして、こんなにたくさんできるかなって笑った。
水着着替えて海に入って、浮き輪で浮く元貴を見て、思わず1年の頃を思い出す。
「浮き輪に2人で入ってたのが懐かしいな···あれ、楽しかった」
「俺は恥ずかしくてドキドキしてやばかったんだから!」
「えっ、そうだったの?本当に最高に楽しくて、元貴が帰るのが寂しかったのを覚えてる。だってあの頃も元貴のことが大好きだったから」
「俺もだよ、ずっと大好きだった!」
波の音に消されないように元貴が叫ぶようにそう言った。
こんなの、2年前の俺たちは想像もしていなかった···今こうして恋人としてこうやって泊まりに来て、大好きだって相手に伝えられているなんて。
「俺も大好き!」
そう叫んでキスした元貴の唇はしょっぱくて海の味がした。
「バーベキュー楽しかったぁ、 食べすぎたかも」
「俺も···ちょっと休憩してから花火しよ」
宿泊者全員でのバーベキューは楽しくて俺も元貴もたくさん食べて今は涼しい部屋でベッドに寝転んでいる。
「夏満喫した···。来年は俺たちどうしてるかな···」
元貴の少し寂しそうな声が聞こえる。
「···来年は、同じ家で素麺でも食べてるかもよ。2人でご飯作って、お風呂入って毎日同じベッドで寝て、毎朝俺が元貴を起こしてあげる」
「え···?」
「行く大学は違うけど、近いところ選んだじゃん?その時から俺はずっと考えてた。一緒に暮らさない?元貴が良ければだけど」
「そんなの俺、幸せすぎるよ···」
「じゃあ、決まり」
元貴な声が泣きそうに少し震えていて、俺は慌てて抱きしめた。
来年の約束をしよう。
その次もそのまた次の年も。
ずっと先の約束を元貴としよう。
ずっと一緒にいられるように。
少し休憩した俺たちは海岸で花火をした。打ち上げもして、たくさん持ってきた花火はあっという間になくなった。
「···汗かいちゃったから、シャワーしてきてもいい?」
部屋に入った元貴がそう言ってシャワーを浴びに浴室へと消えていった。
俺はその間にカーテンをピッタリと閉めて、ドアの鍵も閉めて、この日の為に用意したものを枕元に隠した。
用意周到過ぎて引かれるかもしれないけど、元貴が望むなら今日、ひとつになりたいと俺は考えていたから、用意はしておきたかった。
「お風呂、出た···」
元貴はなにか察したのか、薄暗くなっている部屋に戸惑ってるようだった。
元貴の頭をぽん、と撫でる。
「ちゃんと髪乾かせよー···俺は元貴が嫌なら何もしないから、ね。さ、シャワーしてこよっと!ベタベタするー」
わざと明るく言ったけど、それは本音だ。俺は元貴が嫌がることはなにもしたくなかったし、傷つけたくなかった。付き合ってから触り合ったりしてきたけど、最後の一線を越えるのは簡単じゃないって色々調べるうちにわかったから···きっと元貴もそうだろう。
「あちぃー、喉渇いたー」
小さな冷蔵庫から水を取り出して飲むとベッドに座った元貴と目が合う。
「元貴も飲む?」
隣に座る元貴に渡すとこくこくと喉が鳴る音だけが静かな部屋で聞こえて、けどこの静けさはなんだか穏やかで落ち着くものだった。
「···若井もっと飲む?」
「あ、うん、ありがと···」
ちゅ、こくん。
元貴の唇が重なって、水が口に流し込まれる。反射的に飲み込んで、ようやく状況が理解できる。
「もとき···?」
「俺、若井が思ってるほど純情でも初心でもないよ···付き合う前から若井のことをそういう目で見てたし、欲情してた。キスして若井に触れて、触れられて···若井が欲しいって思ってたから。だからね、怖いとか嫌とか全然なくて···。若井の初めて全部俺にちょうだい」
もしかしたら、自分が怖気づいていただけだったのかもしれない。
元貴に覆い被さって、たくさんキスをした。少し日焼けして赤くなった首や、胸にも舌を這わせると声が漏れて、それが嬉しかった。
「ん···ぁ、きもちいい···」
気付けば2人とも裸で熱くなった下半身はどちらのものかわからない潤いで濡れていた。
枕元に隠していたローションを手に取ると、元貴の奥に手を伸ばした。
するっと指がそこに飲み込まれていって、締め付けられるのを感じる。
「痛くない?」
「ん···大丈夫···、その、ちょっとだけ練習したから···」
れんしゅう。
俺のを、受け入れるための?
なんて愛おしいことを言うんだろう。
元貴の練習の成果もあって、指を飲み込んで動かしている頃には気持ちよさも感じてくれているようだった。
「ふ、ぁ···い、んっ··」
元貴の声に俺も限界を感じて薄い膜をつけて、指を抜いたところに当てる。
「元貴、大好き···」
「俺も···大好き、だから···滉斗の、ちょうだい···」
ぐぅ、と力を込めるとゆっくりとそれが入っていく。指で慣らしたとはいえ、その締め付けはすごかった。
「ん···んん、ぁ、はぁ···っ」
「ぜんぶ、···はいった···っ」
元貴は少し苦しそうに閉じていた瞳を開けた。
「好きな人とこうするって、想像よりもすごく幸せなんだね···」
少し潤んだ瞳で幸せそうに笑う、
苦しさとか痛みとかを隠した顔でそれでも幸せだと言ってくれる元貴を心から愛おしく、好きだと思った。
緩く動きながら元貴のを濡れた手で触るとびく、と身体が震えた。
「ぁっ···そこ、だめ···っ」
「元貴にも、気持ちよくなってほしい···俺はめちゃくちゃ気持ちいいから、元貴の中」
「んっ···く、ぁ···どっちも、いい···っ 」
手を動かすたびに元貴の中がきゅぅ、となるのがわかる。もう限界だ···。
「俺···いきそう···」
「んっ、ぁ···俺も···滉斗、一緒に···」
「ぁ、いく···っ、もとき···っ」
身体をぴったりくっつけて中で果てると元貴のでじわ、とお腹のあたりがあたたかくなった。
俺たちは初めてひとつになれた。
刺激的で、甘くて、愛おしい最高の経験だった。
「俺、産まれてきて良かった···滉斗と出会えて良かった」
元貴は俺の腕の中にいる。
抱き合った余韻を2人離れることなく味わいたくて、中々眠れなかった。
「俺も···元貴と出会えて良かった。元貴のいない世界なんて考えられない」
他の人は笑うかもしれない、大袈裟すぎると、世間を知らないと。
けどそう心底思うほどの、一世一代の恋だった。
「ずっと一緒にいて···俺のこと離さないで、愛して」
「元貴、愛してる、一生愛してる、ずっと一緒にいるから 」
こんなに愛おしい元貴から離れることなんて出来るわけない。
付き合いだしても絶えることなく積み重なる好きをこんなにも実感しているのだから。
この気持ちを表す言葉が好きや愛している以外に出て来ないことがもどかしくて、俺は元貴を抱きしめてキスをする。
少しでもひとつになりたい。
夢の中でも離したくない。
溶け合えればいいのにとバカなことを考えるくらいに。
心地よい波の音と元貴の吐息と温もりを俺は一生忘れないと思う。
きっと死ぬ時はこの時を思い出すんだろうとはっきりと記憶に残した。
コメント
3件
恋っていいなあ。
泣いてしまいました‥😭 良かったね2人‥😭 これから何が起きるのか‥