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午前中まで降っていた雨は止んだけど、まだどんより分厚い雲に覆われていて、いつまた降り出してもおかしくない嫌な天気。
感傷に浸りたい気分になるのは雨だけのせいじゃない。
あんなこと言われたら、尚更。茉莉愛ちゃんの言葉が頭から離れない。
怒り? ショック? それともどっちもかもしれない複雑な心境。実際の事を凪に確認したいとも思った。知りたかった。けれど、怖いのも事実。こんな形で本当の事を知ってどうする?
今更なにが出来るって言うの―――
窓の外を眺めながら終わりの見えない自問自答を繰り返していると、まるで“現実に戻れ”と言わんとばかりに珈琲メーカーから抽出完了のメロディーが聞こえてくる。
いけない。職場にいる事を忘れそうになった。こんなだから桐葉さんに『公私混同するな』って言われるんだ。
「やめよやめよ」
ひとまず忘れようと珈琲をカップに注ぎ再びデスクに戻ると、ちょうどそのタイミングで部屋のドアが勢いよくオープン。驚いたのも束の間、打ち合わせ終わりなのかたくさんのファイルを手にした仁菜が、目を真ん丸に興奮気味で足早に私の元に駆け寄ってきた。
「ちょっと瑠歌! 何があったの!?」
「どうしたの、仁菜」
「それはこっちのセリフ! なんか皆が噂してたよ!? 瑠歌が桜林さんと喧嘩したって!」
喧嘩って……子供じゃあるまいし、どんな話になっているのよ。