テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
吐き捨てて駆け出した瑞希の耳に、追いかけてくる足音は届かない。
それは、瑞希が命懸けでついた嘘が、正しく絵名の心を撃ち抜いた証拠だった。
これで…よかったんだ。
ボクのせいで絵名を傷つけるよりは…絶対に。
肺が焼けるような「39度の熱」を吐き出しながら、夜の静寂へと逃げ込む。
(追ってこないで。ボクを嫌いになって。そうすれば君は、ずっと綺麗なままでいられる)
暗い路地裏で足を止め、震える指でスマートフォンの電源を落とす。
画面が消えた瞬間、そこには「最高の悪役」を演じきった、惨めで滑稽な自分の姿が映っていた。
本当は、君をフルコースの主役にしたかった。
けれど、ボクという毒が混ざった瞬間に、すべての皿は汚れてしまう。
瑞希は、二度と鳴ることのない端末を胸に抱きしめ、ずるずると壁に背を預けた。
目の前には、二人で囲むはずだった未来が、一口も手を付けられないまま、ゴミのように冷え切っている。
「……あはは。本当に、最悪な味」
誰もいない夜の底で、瑞希は独り、飲み込むことすらできない孤独という名の晩餐を、ただ静かに見つめ続けた。
絵名と二度と合わないことを決意しながら。