コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
誰かを愛せないと誰からも好きになってもらえないじゃないか。
葵は、今の僕をみるとどう思うだろうか。冷め切った瞳に赤く染まった僕のTシャツ。眉を歪ませ、ナイフを持っている僕を。
「……………」
以前の彼なら、真っ先に僕に飛びかかってくれた。いいや、それが僕の理想だったのだ。けれども、葵は僕を軽蔑した目でこちらを睨んでいる。
『君と僕は友達だろう?』
そう、葵が言葉を放つ。ただ、ぶっきらぼうに。友達か……いつから、君はそんな無愛想になってしまったのだろうね。ただその言葉を僕がどう捉えるかなんて考えていないだろうに。
「そうだね。」
曖昧な返事をすると君が困ってしまうだろう。そう、だから僕は泡沫のように。ただ何事もなかったかのように素っ気なくその場を取り繕ってしまった。その時の僕は、得体の知れない”ナニカ”に怯えていてどんな顔をしていたのかなんて考えもしなかった。怖かった。この恐怖心は一体どこに向けられているのか。それすらも、わからない自分にも怯えていたのかもしれない。
『君は友達。だから、◻︎◻︎は君が嫌いだ。いつまで経っても、鈍感な君が。◻︎◻︎は大嫌いだった。』
“大嫌いだった?”思い返せば、彼の言葉が妙に引っかかる。当時の僕は、そんな事気にも止めてなかったけれど、今になってようやく分かった。この時、葵の世界から僕という存在は抹消された。彼は、左肩を持ってひどく格好つけた様子で
『もう、終わりにしようか。』
と、ただ一言。
どこへ行くにもずーっと一緒だった。いや、どんな場面でも彼に尽くしてきた唯一無二の親友。親友、、、そう呼んでいいのだろうか。僕は彼は葵に恋をしていた。心をオリカゴの中に閉ざされてしまった。そんな親友に僕は嫌われてしまったのだ。
葵は僕に背を向けて、早々とここを去ってしまった。
『そうか、、そうだったんだね。好きなのは最初から僕だけだったのか、、、』
その時は、無性に溢れ出てくる涙で視界が歪み彼の背中がより大きく見えて。君を手放したくなかった。どん底に落とされた気分で。僕の心だけをあの苦い、張り詰めた夏に閉じ込めて。夏は、いつまでも君を取り残し過ぎてゆく。そう、”君だけ”。
これは僕と君の刹那的な物語だった。