テラーノベル
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「うっ__」
風が吹きつける。周りの落ち葉がそれに反応して僕を囲む。美しい。
(僕も、こんな風になれたらよかったのに。)
そんな虚しい思いは叶うはずなく、僕からあの日の記憶は頭の端でずっと生き延びていた。葵の行方を探して、はや10年。俺は今、あの高校で教師をしている。教員免許の取得のために日々を費やして、彼のことは、頭の隅に隠れていった。自分の母校で働くというのは、こんな感じなのか。幸い、学校に来てからすぐは、葵のことなんか思い出さなかった。だが、ある日、あの教室に入ることがあり、その時彼との思い出を思い出してしまった。
(こんなこと、すぐに忘れよう。)
自分自身、あの日の出来事は1年もすれば忘れると鷹を括っていた。季節は変わりもう秋も終わろうとしていた。背丈も、すっかり伸びて、高校生の頃とは比べ物にならないくらい伸びた気がする。
(葵のことだから、僕を抜かすくらい伸びていたり…)
なんて思ってしまう自分が嫌いだ。僕はお気に入りの本を片手に洒落込んだカフェに足を運んでいた。これが、1日の日課になってしまっていたのかもしれない。
僕は今でも忘れてはいない。今はどこで何をしているのだろうか。そんな事しか思えないほどになっていたのだ。当時、情熱を注いだ葵の一人称すら、まともに思い出せない始末だ。どこまで僕は堕ちてしまったのだろうか。そう思いながら心の底では葵にまた会いたいという意思はあった。
あの頃の続きを…また……。
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