テラーノベル
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※ 注意 ※
・irxs
・青桃
・病み
・パロディ含む
・ss連載に入れようか悩むほどの短編
このお話に喜ぶ人と激怒する人が現れると思います(·▷.)
入店音が店内に響く。今はそれさえ鬱陶しく感じ、少し眉を顰める。
ちらりと確認したレジには、相変わらず学生時代の同級生が立っている。
あぁ、もういいか
いつもなら、知り合いに見られる自分は隙間から絶対に『自分』が見えないよう取り繕っていた。完璧で、抜け目ひとつない自分を崩さないように、と。
いつもの頭痛薬に、エナドリを3缶と水のペットボトルを2本。それから昼飯のゼリー飲料をカゴに投げる。
我ながら終わってる買い物だなと笑いながら、知り合いのいるレジへと向かった。
カゴをがたんとカウンターに置き、スマホで決済アプリを開く。残高が足りるかと確認しようとした時、明らかに目の前の知り合いから息を呑む音が聞こえた。
そりゃそうか。俺はいつでも他人に優しくて、こんな生活とはかけ離れたような性格してるもんな
その息の音で、俺がいつもそんな風に見せられていたことに安堵した。上手く誤魔化せていたみたいだ
決済を終わらせ、レシートを受け取る。
レジ袋を引っ掴んでから出入口へと向かった。
『……ぁ、』
最後に悪あがきでもしてやろうかと、ふと後ろを振り返る。
目を見開いて俺を見つめる知り合いと目が合った。
『…ぁー……つかぇ゙た、』
1人ぼそりと呟きながら、路地を歩く。
多分アイツが目を瞠ったのは、この隈と笑みのせいかなあと想像しながら、暗い夜道をぶらぶらと歩き続けた。
家はどっちの方向だっけ、多分逆だな、と思いながらも足を止めることはしなかった。
無意識に手が首へと伸びる。掻くよりも強く爪先に力を込めると、少し強い痛みがぴりと走った。
どうせバレる自傷をするなら、これぐらい地味でいい
ふと胸が苦しくなる。思わずレジ袋が手からすり抜け、音を立てて地面に叩きつけられた。
運良く人がいない路地裏で良かった、そう考えながら壁に寄りかかり座り込んだ。
『…っぃ”つも…これ”…っふ、』
鬱陶しいほど毎日、何度もやってくるコレ。嫌いでたまらなくて、力強く胸元を掴む。
俯き浅い呼吸を繰り返す俺に、正面から大きな掌がそれに重なった。
「だーいじょーぶ、ないこ、……苦しいね、」
『っは、…ぇ゙…まろっッ泣』
久しぶりに聞いた、でも聞き馴染みのあるその声に堪えていた涙が零れ落ちた。
『…』
結局、久しぶりに会ったその友人に捕まった。
「これ捨ててええやつ?」
『あー……?多分、…』
「…あかんな、先話聞くわ」
まともに頭に話が入らなくて、部屋も散らかったっきり。
それがどれだけ続いているかも分からない
どうやらまろは医者になっていたらしい。幸か不幸か、精神科医だと。
会った瞬間に引き寄せられ、話を聞くと言って聞かないまろを渋々家に招き入れる。
どうせ話を聞かれるしと、どうでもよくなった。
「…ないこお前……よう生きてんな」
『いや…そうするしかないやん』
「……」
一通り話して終わった頃、まろが鬱のグレーゾーンだと言い切った。
いつの間に診察してたんだろう
それすら分からないほど普通の会話だった。
「まあお前の場合、もう黒寄りやから診断書書いたってもええけど…」
『やだ、絶対いらない』
「だろうな」
『…まろにお金も払ってないのに』
「久々に会ったお土産ってことで」
『……むり』
まろは、散らかりまくっていた俺の部屋を一緒に片付けてくれた
それから、これからは一緒に住んでやるとも言っていた
それは
久しぶりに感じた、人の温もりだった
Fin.
コメント
3件
鬱のグレーゾーンって言葉、何処かで聞いたような…… 作品最高すぎる青桃まじ尊い🫶💕
今度余裕が出来たらこれの挿絵とか描いてもいいかもね✌🏻