【no side】
夜中2時。
軍基地内に明かりはなく、月明かりだけが頼りとなる暗い廊下で何かが動いている。
動いている生き物の正体は、昼間幹部が拾ってきた黒猫だった。
黒猫は足を引きずりながらどこかへ向かっている。
黒猫は虚ろな目をしており、その目は猫だが、死んだ魚のような目だった。
黒猫は庭のベンチを見つけると、そこまで足を引きずりながら歩みを進める。
ベンチに着くと、ボフンっと音を立て、黒猫の周りには煙がまかれる。
数秒後、煙の中から茶髪の青年が裸で現れる。
その青年の両足には見るに痛々しい大きな傷が露わになっている。
しかし、目立つのは両足の傷だけでなく、青年の身体にも傷痕があった。
痣や切り傷の痕、他にも火傷の痕…
きちんと処置などがされていないからか、その傷は醜く見える。
???「………はぁ、」
青年はその場でため息をつく。
ため息をつくのも束の間、青年の目からは涙がぽろぽろと流れ落ちる。
涙は地面に落ち、その場所は少し湿る。
ぐすっと涙を流しながらも手で自分の目を擦る青年を月明かりは照らしていた。
tn「…誰かおるんか、?」
廊下の方から書記官…トントンが声をかける。
何かがいたように見えたのだ。
しかし、トントンは今夜で3轍目。少し頭も限界に近い。
そんなトントンに気づいたのか、青年はボフンっと音を立て、黒猫となる。
tn「お前……シャオロンの部屋で寝とったんとちゃうんか…」
「こんなところまで足ひきずって来たんか…?」
トントンは黒猫を抱きしめ
tn「しゃーないなぁ、俺の部屋に来るか」
そう言って歩こうとした。
しかし、トントンはある事に気づく。
tn「…お前、包帯がほどけとるやん…寝る前に包帯だけちゃんとしよな」
それだけ言って、トントンは自室へと歩いた。
tn「ちょっと待ってな、包帯出すから」
トントンはそう言って、黒猫をベッドに載せる。
『ミャァゥ…』
黒猫はトントンに向かってないた。
tn「どぉしたん?」
足をひきずりながらトントンのそばに寄る。
tn「無理したあかんで」
トントンは黒猫を抱きあげ、足に包帯を巻く。
包帯を巻き終わった黒猫を静かに抱きながらトントンはベッドに横になる。
tn「一緒に寝よな…」
黒猫は暴れる事なく、トントンの腕の中で静かに横たわっていた。
tn「……きっと、さっきの人はお前やったんやな、」
トントンはそう呟くと、黒猫とともに目をつむった。
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