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「……ちょっと待ちなさいよ! まだ終わってないわよ!」
ミオの意外な言葉に二人共、口をポカンと開けて立ち竦む。
“そうだった……”
ミオはとても負けず嫌いである事。妹の性格を熟知しているアミは頭を悩ませる。
“どうすれば打ち解けてくれるんだろう?”と。
「まだ私にはとっておきの力があるのよ! さあ表に出なさい!」
ミオのとっておきの力。それがどれ程の力であっても、二人のレベル差を考えれば通用する訳が無いのだが。
「もう、いい加減にしなさい!」
アミはミオを諌めようとするがーー
「分かりました。気が済むまで付き合ってあげますよ」
ユキの方はやる気である。
「ユキまでそんな事言って……」
「大丈夫ですよ。決して危害を加えるつもりはありませんから」
辺りに日が落ち始める逢魔が刻。三人は家の外に出る事となった。
*
「さて、何を見せてくれるんですか?」
対峙する二人。その距離はおよそニ間(約4M)程だろうか。
アミは二人から離れた場所で、呆れ顔で見守っている。
“ユキの事だから、ミオに危害を加える事は無いけど……”
「はぁ……」
アミはこれに深いため息を吐く。
「そんな余裕でいられるのも今の内よ」
ミオを両手を広げ、精神を集中する。突如、周りの空気が変わっていく。
「……これは!?」
常温から低温へ。その温度の変化に、ユキは思わず目を見張った。
ミオの周りには幾多もの氷の結晶が現れ、それが中心に集まっていき、一つの大きな氷の結晶となっていく。
「これは珍しい。氷の精霊の力とは……」
関心した様にその力を眺めるユキは、ミオがアミの妹だという事を思い出す。
アミは精霊使いの巫女なのだから、その妹のミオが何かしらの精霊の力を行使したとしても、何も不思議では無い。
「さすがに驚いたようね」
ミオは自分より更に巨大化した氷の氷塊を、ユキへと向かって放つ。
「ちょっとミオ!」
アミはミオの行為に声を上げるが、既に氷塊はユキへ向かっている。これ程の氷塊が直撃したら、只では済まないだろう。
ユキはその場から動く気配は無い。
「流石の力ですが、私に氷は無意味です」
ユキは迫り来る氷塊へ右手を翳す。その瞬間、氷塊はその存在を否定するかの様に、音も無く消え去った。
「えっ!? 何でいきなり消えるの?」
ミオは突然氷塊が消えた事に驚くが、更に驚いたのが、先程まで目の前に居た筈のユキの姿が無かったからだ。
“ーーっ!?”
ミオは自分の背後に気配を感じ、首だけを振り返る。
「嘘……何時の間に?」
ユキはミオの斜め後ろに移動していた。氷塊が消えてから、その間僅か刹那の時間の出来事。
目では捉える事の出来ない、縮地法に依って移動していたのだった。
ミオの斜め後ろに回り込んだユキは、空中に浮かぶ小さな氷の結晶を、愛しむ様に両手で包み込む。
「初めまして小さな精霊さん。 大丈夫です、怯えなくていい。危害を加えるつもりはありませんから」
ユキが話し掛ける小さな氷の結晶。これこそがミオが行使する力の源、氷の精霊そのものであった。
“――えっ? 何でコイツ、私の精霊の力を見破る処か、普通に話してるの?”
ミオは疑問に立ち竦む。
普通は精霊とコンタクトを取る事は出来ない。それは特別な修業を積んだ、巫女の素質が有る者のみ。
その筈なのに、ユキはまるで無二の友にも等しい感覚で、精霊と普通にコンタクトを取っている。
「ほうほう、人使いならぬ精霊使いが荒いと? 大変そうですね、分かります」
どうやら二人は痴話をしている模様。