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「先生は、なんでもできてしまうから……」


ダンスでの火照りを落ち着かせようと、彼女がワインの一口を飲み込んで、


「私はそんなに上手にはできないから、やっぱりちょっと恥ずかしくて……」


言うのに、「私も、それほどうまく踊れるわけでもないですので」そう返して、


「熱を冷ますのに、デッキへ出てみませんか?」と、誘いかけた。


ホールからデッキへと上がり、日が落ちて暗い海を隣り合って見下ろす。


船は波間に揺られながらゆっくりと動いていて、吹く海風が彼女の髪をもてあそんでいた──。


風に揺れる彼女の髪を片手で押さえて、もう片方の手で内ポケットを探り、しのばせていた誕生日プレゼントを出した。


彼女の手首を取って箱から出したものを巻き付けると、留め具をカチリと嵌めた。


「これって……」


驚いたように手首をじっと見つめたままでいる彼女に、



「前に私と同じ時計を贈りたいと話していたでしょう? 同じ時を共に過ごせるようにと……」



以前の約束を話して、嵌めている自らの腕時計を彼女の横へ並べて見せた。船上から仰ぐ夜空には星が瞬いていて、「はい、覚えています。あの星空ともお揃いですよね…」と、星があしらわれた時計の文字盤と空を見比べると、彼女が嬉しそうな笑顔をこちらに向けた。


はにかんで笑う顔の愛らしさを感じていると、その瞳がふと潤んだようにも見えた。


「……嬉しい。こんな豪華客船に乗せてもらっただけでも嬉しいのに、こんなプレゼントまで……ありがとう……一臣さん」


ぎゅっと腕がまわされ抱きつかれると、胸が高鳴るのを感じて、


「……そんな風にされては、我慢ができない…智香」


おもむろにドレス姿の彼女を、そのまま横抱きに抱え上げた。


「…きゃ」と、小さく声を上げるのに、そっと口づけると、もう一度腕にその身体をしっかりと抱え直した──。



「…だめ、下ろして…」


真っ赤になっていやいやと首を振る彼女に、「ちゃんとつかまっていなさい」と、言い聞かせる。


「……重いですから」


下ろしてもらおうと口にする彼女に、「あなた一人を抱いても、重たいことなどはありませんので」話して、キャビンへ向かう。


途中通りすがる人たちの視線に、「……だって、みんな見てるのに……」と、首筋にしがみついて、「……恥ずかしい……」と、横抱きにした腕の中で私の胸に顔をうずめた。



彼女の仕草のひとつひとつに愛らしさが募って、キャビンまで理性を保つのが精一杯で、中へ入るなりもつれるようにベッドに倒れ込んだ──。

「責め恋」政宗一臣先生Ver.

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