テラーノベル
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日曜日の午後。二人で立ち寄った、昔ながらのカフェ。
木の床が軋む音さえ心地よくて、窓際の席に座ると、どこか落ち着いた。
ふと、奥から現れた年配の女性スタッフが、こちらに歩いてきた。
【いらっしゃいませ。あら……】
私の顔を見た瞬間、その女性の表情がぴたりと止まった。
【……ごめんなさい。なんだか……とても懐かしい気がして……。】
「私のこと……知ってますか?」
思わず聞くと、彼女は小さく首を振る。
【いいえ、でも……あなたの顔を見た瞬間、“光”という名前を思い出してね……。昔の知り合いにそっくりで。】
『光……?』
隣にいた誠也が、反応する。
『すみません。その”光”って、どういう方なんですか?』
【もう何年も前に亡くなった子です。よくこの町に来ていて……同じような雰囲気で。まるで、あの子がまた現れたみたいで驚いてしまって。】
私の背筋が、ゾクリと冷えた
「その“光”さんって……どんな人だったんですか?」
女性は懐かしそうに目を細める。
【静かで、でも芯が強い子でした。いつも“誰か”を待っていて……最後の日も、海の見える場所でずっと座っていたのを覚えています。“もう一度、あの人に会えたら、それだけでいい”って、よく言っていました。】
誠也くんと私は顔を見合わせた。
「それって……」
言葉が出なかった。
でも胸の奥に、小さな灯が灯るのを感じた。
何かが、確実に繋がりはじめていた。
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