テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
外に出るという行為は危険である。
何故か?
それはいたって簡単。
”心身共に削れるから”
「…はぁ…やる気でない」
探偵事務所、ニヒルでは探偵がぐだぐだしていた。
皇帝を目指そうと探偵試験を突破したものの、自分には大層な能力一つない。
「何だっけ、今年は女性探偵は私と…もう一人…えーっと…」
「闇鶴凌葵さんでは」
「あー、そう、それ」
「梨亜さん、貴方も探偵なのですからしゃんとしたらどうです。みっともない」
「はい…唯斗サン」
私は探偵事務所の部下に慕われることがない。
何故かって?
親のコネで入社してきた心愛という人に立場を奪われかけているから。
「泰造さぁーん、梨亜さんはまた仕事してないですよぉ?」
甘ったるい声。
「彼奴の話する必要ねぇよ」
冷めた目。
どこに居ても居場所なんて無いんだ。
疲れた。
探偵事務所は基本3人〜20人程度のグループである。
ただ、人数が多ければ多いほど階級は下ということになり、階級が上がるに連れグループが分裂するか一定人数クビになるかである。
此の事務所…ニヒルは5人メンバーに心愛で6人。
竹村唯斗、斎藤泰造、坂本心愛、美咲健司、浦本標本……そして私、如月梨亜。
しかし、前回の事件の終わりから浦本君と美咲君とは連絡がついていない。
通常なら心配するはずなのに唯斗も泰造も心配していない。心愛に至ってはその日は笑っていた。
勿論影で…だが。
「梨亜さんっ!いい加減、私に仕事を押し付けずに自分で仕事をして下さいっ!」
必死こいて何いってんだろう。
「私は仕事してるけど」
「嘘つきっ!今日も私に押し付けてきたくせにっ!」
「なっ…本当に最低だな…。梨亜。やはりお前には失望した。どうせ標本と健司の失踪もお前のせいだろ」
何でそうなるの。
健司は私の味方をしてくれていただけ。標本はわからない。
「…っ…唯斗?」
そんな目で見ないで。
近づかないで。
「貴方はそれでも探偵ですか!貴方は探偵失格…いいえ、人間としても失格です!猿です!人を傷つける存在が探偵を名乗るなんて侮辱にも程がある!……貴方と同じ女性探偵の闇鶴さんはすでに上位ですよ?此処は未だに中位!」
「な…んで」
叩いたの。
それは、言えなかった。
ただ、心愛の笑っている顔が目に入った。
心愛の手には御母さんの遺品。
「返してぇ!!!」
私の叫びは虚しく。壊された。
ばき、と音を立てて崩れた。
「…ぁ」
「きゃぁ!梨亜さんがちゃんと管理してないから壊れちゃったぁ!」
「大丈夫か、心愛。」
「心愛さん、其処に近づかないで下さい」
皆、何で心愛の味方をするの…?
「…もういいや。さよなら」
気がつけば財布とインカム、探偵証を持ち外に飛び出していた。
光が痛い。
音が怖い。
呼吸はどうやるんだっけ…?
やだ。
「カヒュッ…」
助けてッ
誰か…ッ
「!…ぃ…じょ…?!」
なんて言ってるの…?
「…ま…を…て」
口の動き的に…真似をして…?
「すぅ……はぁ」
呼吸…?
「ゲホッ…」
「…大丈夫?」
きれいな人…
「は…い」
「…大丈夫そうじゃないよ。ほら、こっち」
手を引かれながらたどり着いた先は上位探偵が居る地域。
探偵事務所は町中に構えているグループと位が集まっているところがある。
「始めましてではないけど…。試験振りかな…?私は闇鶴凌葵。此の探偵事務所、スペスリストの名探偵をやっているわ」
”スペスリスト”
希望の一覧表…。
「は、じめまして…。私は如月梨亜。探偵事務所ニヒルの元探偵です。」
「元?探偵が辞めたという話は此処一週間で20人の汚職しか…その中に貴方の名前はなかったはずよ。貴方の事務所の人は居たけれど」
ふとよぎったのは標本と健司。
「…ぇ?」
「その事件の依頼が世界統一組織から来てたのよ。はぁ…何であんな奴らの依頼を受けなきゃならないんだか」
此の人はすごい。
確か15歳…私はすでに20歳なのに。
「おや、闇鶴さん?」
「なにー?」
「お客さんを招き入れる際はお声がけをとあれほど言ったでしょう…」
「ごめんて…」
まだ15歳、彼女には抜けてるところがあるようで安心。
「いきなり押しかけてごめんなさい…」
罪悪感が凄い…こんな私が此処に来るのは良くないのでは…?
「いえいえ、直ぐに紅茶を入れてきますね」
顔も整っているし…何故其処までスペックもいいのだろうか…。
「くつろいでいいよ〜」
「闇鶴さん、貴方の部屋には他人を入れないように!!」
圧が強いような…?
「…はぁーい」
「あ、あの…?」
「客間はあっちだから行くよ」
「凌葵?どうしたんだい」
「素晴が起きてるの珍しいじゃん」
誰だろう…世間知らずすぎるし…失礼かな。
「嗚呼、失礼。僕は和樹素晴だ」
「は、はい…私は_」
「名は知っているから言わなくてもいいさ。ところで円周率は覚えているかい?」
「い、いえ…」
「へぇ。まぁいいや」
癖の強い人達だ…。
「暁月の馬鹿〜!!」
闇鶴さんの声…?
「私は馬鹿じゃありません!いいですか?後で片付けをするまでゲームは禁止ですよ」
…あ、深刻そうじゃなくてよかった…。
「まぁた怒られてるのかい?阿呆だね凌葵は」
「阿呆じゃない!名探偵!」
微笑ましいなぁ。
あの頃の皆も、こんな感じだったっけ…。
「嗚呼そうだ。どうして外で過呼吸になってたの?対人恐怖?フラッシュバック?それとも_坂本心愛になにかされた?」
15歳でも、彼女は探偵なんだ。
なんで分かるんだろう、なんて疑問はなかった。
その蒼い目が凡てを見越しているような気がしたから。
「さすがだね(笑)…心愛が事務所に入ってから、皆可笑しくなったの。心愛は言いがかりをつけてきて、それを皆肯定するようになった。」
言ってしまった、怖い。
怒られないかな。
「ふーん。先週の事件の後に味方と中立だった2人が行方不明。其れを梨亜の所為にされ、遂に耐えられなくて抜け出してきたら怖くなって過呼吸になったってわけか」
直球。
「ちょっと、闇鶴さん、それは…」
「いいんです。事実ですから。」
私には笑うことしか出来ない。
無力なんだ。
「…ねぇ。貴方の無実を証明してあげる。依頼料は…あなたの笑顔がいいなぁ」
「え?」
何故、私に時間を割くのか。
「はぁ…仕方ないですね。準備してきますね」
「僕も行くのかい?」
「そりゃそうでしょ。」
ありがとう。
私はそれを言わない代わりに笑った。
「そうだね、先ずは坂本心愛について今持ってる情報を出そうか。」
その瞬間。
《Quest発生。探偵事務所ニヒルの裏切り者。受諾しますか》
「…YESだけどNOかな」
《理由は。》
「如月梨亜は裏切り者ではない。坂本心愛は情報を敵対勢力に横流ししている。証拠のデータは…あれ、どこだっけ」
え、そんな大事なものをなくす?
「こちらですよ、闇鶴さん」
心愛が全身黒ずくめと話して写真を渡してる写真。
情報データを抜き取った様子。
戸籍データ…。
心愛が健司と標本を…ッ…ころした写真…。
「…そ、んな」
そんなつぶやきは聞かれていなかったのだろう。
「此れ!そう、此れ!さすが元公安だぁ」
「その話は禁句ですよ」
ん?元公安…?え、そんなすごい人が…此処に?
《証拠データを確認。Quest放棄を認めます。》
「嗚呼そうだ。その代わりに坂本心愛を捕まえてもいい?」
「それはいい案だね。僕も戦っていいかい?」
《上司と連絡を取ります。…許可が得ました。どうぞ》
「さぁて。真相の時間だよ。君の希望への道でも有るかな?」
凄いなぁ…此れが上位なんだ。
「アポ無しですいませーん!私達、スペスリストです」
「早くない…?ねぇ、早すぎない??まだ心の準備がっ」
「はっ…?梨亜…?何で、なんで?依頼料はあなたの笑顔って言ったでしょう!何でっ」
「…ごめん…なさい…」
「やっぱり。世界は求めれば求めるほど壊れる」
次回。
儚いニヒルの子 弐
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!