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#ロマンスファンタジー
花月夜れん
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#王道
涙乃
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#ご本人様には関係ありません
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<<デルタ王宮・フローレンスの自室>>
「それでは姫様、本日のスケジュールの再確認になります」
「正面にてお出迎え後、謁見と関係者への挨拶回り昼食対応、締めは見送りですね」
来賓に対応するための完璧メイクを施したフローレンスは仕事モードへと変貌を遂げ、参加者の顔を覚えるためタブレットを弄りながら、小さな口でカジカジとスコーンを齧っている。お行儀が悪いと思われても仕方ないが、午前中のそれも早い時間に対応する場合はこれが普通の姿だ。
「出迎えとお見送りに関しては安全を考慮して中庭に変更されました。謁見は30分程ですので着替えの時間が短うございます」
矢継ぎ早に簡潔にグリゼルは説明するが、謁見室から自室に移動するだけで5分、髪のセットと衣替えに15分以上は必要になり中々ハードな日程だ。しかしフローレンス的には日常なのかさほど驚きもせず、了承したのかこくりと頷く。
「初顔合わせが双方合わせ12名、改革派との取引は再選前と変わらず継続ですね」
商業連合は建前上は特定の国には肩入れしない商いに徹する完全中立国家だが、改革派は星団側、保守派は反星団側に付き従っているのは公然の秘密だったりする。因みに覇権主義のディスティアですら侵攻すれば物流が即座に止まり、危機的状況に陥ることを知っているので、無闇に攻め込む事は決して行わない。
「陛下は改革派との更なる関係強化を所望しております」
裏技を使い復活したコンドラトは正直腹立たしいが保守派が勢いづくのだけは避けたく、副会頭のヴィニー率いる改革派との関係強化を図れということだ。
「商魂たくましい相手に足元を見られないように立ち回れか、難しいよ・・」
将来的にフリップに適性があれば担うことになっているが、まだ未成年なので現在は第二王子のエリアスが兼務している。公務内容を考えるとヤル気を削がれる訳ではないが、少しだけ虚しさが心を過ぎり伏せ目がちになってしまう。
「今回は致し方ありません、アイシャ様のご提案ですので」
公務を行う理由は至って単純でヴィニーが来ればトップニュースとして扱われ、共に映れば公務に勤しむ王女をアピール出来るのだ。
「そうですね、国民の前に顔を出さないと批判が強まりますし、変な噂が立ち始めていますので打ち消すにはいい機会と考えるようにします」
もっぱら最近の彼女の話題は婚約相手の噂話ばかりで、お相手は有力貴族やら有名人、はたまた軍高官の子息などと無責任に囁かれ、全王民が内定発表を固唾を飲んで待つ状況だったりする。しかし当の本人にはその気が全く無いので、出立前のヴィニーとの共同会見の場で質問される事は想定済みなので全拒否する構えだ。
なんでアーレイ様のことを好きになったのかな、わたし・・。
科学が進み古いしきたりが皆無のデルタであっても王族の婚姻に関しては旧来のままというか、王家存続のためには必要なことで「選ばれた相手の事を好きになるよう努力すること」は王族の定めと言われ彼女自身納得していた。だがあの男が現れ、初めて恋愛感情が芽生えたフローレンスの頭の中は、今朝も想い人の事で薔薇色に染め上げられ思考の半分はアーレイ一色だったりする。
今朝も彼の事で頭がいっぱいなのね姫様。
能面の如く感情を表に出さずに取り繕っているものの、想い人の事が脳内を過ればつい胸の奥がキュンとしてしまい寂しさを覚え目線を落としてしまう。そんな感情の起伏に気付かない訳がないグリゼルは生温かな目で微笑む。
「失礼致します、アーレイ様よりお荷物が届きました」
「アーレイ様ですって(喜」
侍女から小さな荷物を受け取ったグリゼルはフローレンスの脇にスッと差し出す。アーレイの名前を聞き曇った表情が一変した事を見逃すわけがなく、ジッと後ろ姿を見つめていた。
筋があるみたいですね、心より応援する所存で御座います。
侍女頭のグリゼルは幼少期からフローレンスの良き理解者であり相談役だ。なので落ち込む理由は聞かずとも想い人のことで頭の中がいっぱいだと理解しつつ、なんだかんだ言って「アーレイが彼女の事を気に掛けている事実が」もれなく女狐に伝わる事になる。
「姫様に贈り物とは気が利いてますわね」
「そうなのかしら、アーレイ様は何も言わなかったけど、何かしら」
無機質なシルバーグレイの小さな箱を手に取るとズシリとした重さを感じ、お菓子の類では無いなと思いつつ、何かわからないけど期待を込めて箱を開ける。
エッ、マジですか!
真紅の輝きがちりばめられた美しすぎるネックレスが目に飛び込んでくると、ギュンと胸が締め付けられ、ドクンと鼓動が高鳴る。
「えっ、えっ、これってルビーだよね・・」
誕生日でも無く、記念日でもなく、思い当たる事が何も浮かばない。余りにも豪華すぎて困惑しつつ手に取ると、無数の深紅の粒は格別な光を放ち、引き込まれるほどの美しさに魅了され思わず息を吞んでしまう。
これ私の為の贈り物なのかな違うよね・・おや何これ。
触ると自動的にリンクが開く設定なのか、モジュールのモニターにアーレイのジョブアイコンと<Can it be connected to the Arley Works shield system YES/NO?>のメッセージが表示される。単なる装飾品ではないと瞬時に理解したフローレンスは口角を上げ、はやる気持ちを抑えながら通話と念じた。
<早速リンクしたんだね、君を守る守護の護符のようなものだよ>
リンクの許可を出すとシールドパラメーターが現れ、同時に骨格測定が始まり、チチチと深紅の底から不規則な光が漏れ、次第にフローレンスの上半身がモニター上に形どられてゆく。
「護符に本物の宝石をこんなに使うなんて、もう思い切り裏読みしちゃいますよ(喜」
<宝石は本物なので贈り物で間違いないよ、とは言っても身を守る装置だけどね(笑>
説明を聞きシールド無効化弾に対応した装置と言われても、深紅の輝きは贈り物としか思えない。それに自分の命を守る為にわざわざ作ってくれた事に深い感謝と愛念が起きる。
「私のためにですね、ありがとうございます♡」
<けどね、ペインキャンセラーがないから衝撃がそのまま伝わってしまうんだわ>
「ええー、それってトンカチで殴られるより痛いよね(汗」
未完成のシールド装置は俗にいう防弾ベストと同じで、直接衝撃が伝わってしまう。取り敢えず既存のシールドと併用すれば酷い事にはならないと説明すると、安堵の表情を浮かべてくれたよ。
「アーレイ様はちゃんと心配してくれているのですね!うふふ一歩前進です!」
<コラコラ勝手に進めるな、俺の責任だから死んだら困るし>
「いま凄く幸せですよアーレイ様♡」
想い人からの、それも命を守る贈り物を手に取れば胸の奥から幸福感が湧き出て、なんとも言えない暖かさに包まれた。アーレイには見えはしないけど、艶のある声、喜び駆け回るフェアリーを見聞きすれば、やり過ぎたかなと反省中だったりする。
<そのシールドはまだ上半身だけしか効果がないから無理するなよ>
「姫様、お時間です」
「はーい、それじゃ行きますねアーレイ様!」
色々不安に埋もれていたけど、グリゼルがしたり顔で着けてくれたネックレスに触れたフローレンスは、破顔しつつ颯爽と部屋を後にする。
もうこんなにはしゃいで、うふふ今晩の報告は楽しくなるよ。
幸せホルモンを撒き散らす軽やかな足取りを追うグリゼルは、良縁に恵まれ幸せに満ちている我が子を見るかの如く優しい眼差しを送り、今宵女王の喜ぶ顔を想像しながら一歩後ろをついてゆく。
ーー
<<アーヴィン国際空港・到着口>>
到着口のシャトル乗り場には、タンクトップに可愛らしいショートパンツを穿いた筋肉隆々の漢が立ち、その前に黒塗りのシャトルバンが止まった。
「君が我が友の部下だな、大佐から聞いている」
「あんたが彼の友だね、宜しく」
顔認証がそこらじゅうに設置してあり、素顔を晒せないメレルはサングラスを掛け、隠語を使い本人確認を手短に終わらせスライドドアを開けた。笑顔で答えたアデリーナは事前に聞いていたので疑う事なく吸い込まれるように車内へと入る。
「アデリーナ少尉、ようこそアーヴィンへ」
「早速で悪いけどメレルに観測手お願いするわね、それとライフルはもう手元にあるのかしら、下見もしたいわ」
挨拶もそこそこに武器の確認と現場の視察を所望するアデリーナの表情は先ほどとは程遠く、既に獲物を狙う鷲のように鋭い。戦い慣れしているメレルも同じように眼光がギラリと光るが・・。
男だよね!けど男好きの漢だよな・・。
見た目もそうだけど喋り方と、微妙なメイクで男好きと理解したメレルは、一瞬ブルルと背中に悪寒を感じる。勿論アデリーナは承知しているのか「ムフフあんたは好みじゃないから大丈夫よん」と断りを入れて来るが、お尻の辺りがムズムズしてしまいメレルの腰は微妙に引けていたよ。
「ライフルは湾岸倉庫に今晩取りに行く予定だ、先に狙撃ポイントに向かうぞ(汗」
「了解、頼んだわよメレルちゃん」
兎にも角にもアーレイの作戦は秘密裏に動き出した。
ーー
<<ディスティア中央軍病院>>
「ヒャッハー」
「駄目だこりゃ、もうお手上げだ〜」
最新医療を駆使してもマテウスは真人間には戻らず、奇声を上げる動物と化したままで、例えるなら生まれたての赤ん坊と何ら変わりがない。防虫シールドによって脳にダメージが入ったと言われ、丹念に調べるもののなんら異常がみつからず、とどのつまり、偶然が重なり廃人になったと結論が出される。そして総統府に報告するため重い腰をあげ部屋を後にするのだった・・。
<<ディスティア総統府・セオドールの執務室>>
「総統閣下、最近捕虜開放のデモが活発化してきました。そろそろ次の行動を起こさないと収拾がつかない事態に陥るかもしれません」
捕虜返還運動はセオドールがスピーチする事でいったん沈静化していたが、進展がないまま時間だけを浪費した結果、再燃の兆しが見え始めていた。そして現状を打破する為にいつもの男が呼び出される。
「セオドール閣下、引き取りの準備は既に完了しております。後は現金だけです」
相変わらずの強面で入室するなり直立不動で敬礼をするルドルフ。振り向いたセオドールは訝しげな表情のまま「どうにかして士官を先に引き取れんのか」と決まっていた下士官引き取りをひっくり返す発言をした。
「現状を鑑みた場合、連れ戻すのは悪手とお考えになった方が宜しいかと」
「そんな事は分かっている、下士官を連れて帰るならアーレイの首も持ってこい」
連れ帰ったマテウスは廃人確定、デモが再燃と、碌でも無い事ばかり続いてしまい、イラつくセオドールはアーレイ暗殺を失敗したルドルフに八つ当たりをしていた。まぁ彼が糞真面目に真顔で淡々と答えるのも癪に障る理由のひとつだろう。
「ご命令とあれば最善を尽くす所存であります」
「諜報部から2人参加することになったぞ、家族を大事と思うなら次こそはアーレイを仕留めて来い」
訝しげな表情のままギロリと睨みつけ、普段決して口にしない家族のことを話す。要は実行できなければ不敬罪を適用して家族もろとも処罰すると脅しているのだ。
閣下は捕虜を見捨ててまでアーレイをそんなに亡きものにしたいのか。
脅せば必死になるだろうとセオドールは考え、ルドルフは家族のことは勿論心配だが、捕虜を見捨ててまでアーレイ暗殺を優先することに違和感を覚える。とはいえ命令されれば従うのは当たり前なので当たり障りのない返事をすると、怯まないことに不満を感じたのか髭をいじり始め見下すような視線を送ってくる。
「何か不満なのか元々捕虜は死刑だったんだろ、なら奴の処分を優先しろ」
謁見ではアーレイが死刑を回避した事は事務方も承知しているものの、そのまま伝えれば怒りを買うと考え、ジェフの温情のお陰だということにしてある。にも関わらず我儘総裁は敵からの施しが気に食わないらしく暗殺を優先しろと言い放つ。
「畏まりましたセオドール閣下」
表情には決して出しはしないけど真面目な武人はアーレイ暗殺より下士官解放を優先するつもりだ。家族の顔が思い浮かび、従った方が楽だなと思いつつ、信念を貫きたい思いが勝り、暗殺の機会を与えず捕虜を解放する手立てはないのかと思案しながら総統府を後にした。
<<数分後・・>>
「おいマスコミに下士官の捕虜解放に目処が付いたと伝えろ」
無理難題をルドルフに押し付け気分良くなったのか、ニヤリと笑ったセオドールは琥珀色の液体が入ったグラスを手に取ると、一気に喉に流し込み余韻を味わい終えると執事に指示を出した。
ククク、暗殺に失敗して捕虜を死刑にすればそのネタで煽動できるし、奴が表に出て来なければ勝機が見えてくるぞ。
捕虜が帰還しようが死刑になろうが命の価値を軽く考えるセオドールは強かというより、悪ど過ぎる碌でなしと言った方が表現としてはピッタリくるだろう。
「ヘルムートよ司令本部には作戦が動き出したと伝えるのだ。ヒャンド攻略を成功に導けと付け加えろ」
「かしこまりました。セオドール閣下万歳!」
そしていよいよアーレイ暗殺とヒャンド攻略作戦が動き出すのだった・・。
ーー
<<レジスタンスの根城・メレルの隠れ家>>
「いや〜困ったわ色は手配したことはあるが男色なんてツテがないよ」
下見を終えたメレルはアデリーナをホテルに送り届け一旦隠れ家に戻っていた。別れ際にアーヴィンで遊び相手を探すスポットを知らないかと問われ、身震いしたのはいうまでもないだろう。愛用の椅子に座り落ち着きが戻ると思ったけど、思い出すとやはり尻のあたりのムズムズが再発してしまう有様だ。
仲間A<お頭、仲間から連絡が入りやした、少量ですが生鮮品の搬入が始まったとの事です>
「おおやっと動いたか、詳細はよ頼むぞ」
カルネ国から届いた武器弾薬の受け取り準備を進めていると、突然仲間から生鮮品搬入の連絡が入り、ヒャンド攻略作戦が動き出したと言わずしてもわかる。後は作戦発動時間が判明すれば完璧だけど、流石に獣人の乗組員には正確な時間が伝わる事がなく精々集合時間だけだ。そして待つ事数十分、期待する追加情報が齎されることに・・・。
仲間B<親分、シールドゲート解除時間は10半から1時間だそうです」
「皆んなありがとう、明日の作戦は是が非でも成功しなければならない気合を入れて頑張るんだぞ」
デルタ諜報部では絶対入手できない超重要情報が次から次へとメレルの元に集められ、正確な出航時間が掴めなくてもゲートの開放時間が判明すれば空爆を行うには問題ないだろう。経験からメレルは10:50に舫を解き11:00過ぎにゲートを潜ると予想する。
※アーヴィンの首都にはシールドが張り巡らされ、戦艦が通過する際に必要な範囲だけ一時的に開くスポット的な範囲のことを指す。
「さてと、あっちは早朝だけど直ぐにでも連絡しなきゃな」
要となるシールド無力化という重大な任務を帯びたメレルは緊張してきたのか、スマホを持つ手が微妙に震えている。そりゃ彼の一言で数時間後にはミサイルの雨が降ってくるので当然だろう。静かに画面を見つめていると沸々と闘志が漲り始めたのかピタリと止まり、意を決してアーレイのアイコンを押す。
コメント
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第80話読みました!まずフローレンスがアーレイからルビーのネックレスもらってテンション上がってるシーン、めっちゃ可愛かったです。守護の護符でありつつ本物の宝石っていうアーレイのセンス、渋いですね。グリゼルが生温かい目で見守ってるのもいい。一方でセオドールの暗殺命令と捕虜の話が同時進行で、ヒャンド攻略に向けて動き出した感じがヒリヒリします。メレルが「男好き」アデリーナにビビってるのも笑った。次の展開が気になる!