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あっぶなっ!あっっぶなっ!!あービックリしたぁあっ!
新しくばっちゃんを加えた旅は思っていたよりも遥かに順調だった。ちょっと人見知りのフェルは最初困惑していたけど、ばっちゃんの良くも悪くも強烈なキャラクターに圧倒されたのか、すんなり受け入れていた。そりゃそうだ。ばっちゃん相手にいちいち考えてたら身が持たないって。
まあ、ばっちゃん自身が気さくな感じで不和も起きなかった。と言うか、空気を読むのが上手すぎる。私やフェルが二人で過ごしたいなんて考えてると、いつの間にか姿を消すんだもん。忍者かな?
んで、無事に地球へ辿り着いたんだけど何気なしに地球のニュースを見てみたら大騒ぎになってた。東南アジアで大規模な森林火災が発生、現地での対応も後手に回って焼け出された人も大勢居て、更に規模を拡大させているらしい。このままじゃ自然が破壊されるのはもちろん、そこで暮らしている人々も大変なことになる。いや、もうなってるけど!
私が直ぐに現地へ行くことをフェルもあっさり認めてくれた。問題はばっちゃんなんだけど。
「交流の主役はティナちゃんだよ。君がしたいようにすれば良いよ☆私も手伝うからさ☆」
「ありがとう!」
ばっちゃんもあっさりと認めてくれて、更に手を貸してくれると言ってくれた。ばっちゃんが手を貸してくれるなら有り難い!
そのまま現地の映像を出して転移。三人居るから役割分担が出来た。私はとにかく災害の最前線を飛び回って焼け出された人や危険な状況に居る人達を助け出す。もちろん現地の救助隊が居る場所だけだ。残念だけど全員は助けられないから……。
ばっちゃんには暴動の鎮圧をお願いした。皆不安な気持ちから暴走しているだけだと思う。
まあ本当の悪人も居るだろうけど、広範囲に影響を与える魔法はばっちゃんが得意な分野だ。任せておけば人為的な被害が増えるのを防げるはず。
「知ってるかい?ティナちゃん。彼らはいろんな意味で高揚してるんだよ?☆なら、もっと振り切れさせてあげれば良い☆」
何だか不安だけど任せることにした。少なくとも、手荒な真似はしない……筈。
そしてフェルにはそのチート並みの保有マナをフルに使って根本的な問題の解決、つまり森林火災の鎮火をお願いした。現地の人達も手の打ちようがない有り様みたいだから、どうなるか心配だったけど。
「任せてください。ティナの想いを無駄にはしませんから。火災については心配せずに、ティナがしたいことをしてください」
フェルは優しく笑いながら快諾してくれた。感動して泣きそうになったのは秘密だ。
現地は大混乱になっていたけど、各国から派遣されたらしい国際救助隊に知っている人が居た。
「貴方は!」
「ティナ嬢か!?有り難い!助かった!」
見覚えがあると思ったら、合衆国からの救助隊を率いていたのは、マンハッタンで指揮していた消防の隊長さんだった。
直ぐにアリアが調べてくれた。どうやらマンハッタンでの出来事で知名度が上がって、国際救助隊の隊長に指名されたらしい。もちろん本人も救助隊への参加を強く希望し、常に危険な現場に率先して乗り込む姿勢は、皆から高い信頼を得ているんだとか。
とは言え、知っている人が居るなら話は早い!
「隊長さん!」
「分かっている!医療班を集めろ!ここに臨時の救護所を設営するぞ!」
最前線にいた隊長さんは、直ぐ近くにあったお屋敷かな?そこを臨時の救護所にしてくれた。後は救助隊の皆さんと一緒に現場入りして出来るだけお手伝いをさせて貰った。
たくさんの怪我人を見て咄嗟に医療シートを使おうとしたけど、三回目となれば流石に学習する。これは大切な交易品。使うにしても、断りを入れる方がいい。
アリアにお願いすると直ぐにハリソンさんと繋げてくれた。ただ、時差を考えてなかったからハリソンさんは寝巻き姿だった。寝起きとは思えないくらい凛々しい顔をしているけど、可愛らしいナイトキャップを被ってるからギャップがすごい。
『ティナ嬢、君の気持ちに従って欲しい。我々は何度も君に救われた。また救おうとしてくれている君の行動に否やはない。人命は何物にも代えがたい。どうか、一人でも多く救ってくれ』
「ありがとうございます、ハリソンさん!」
アリアが言うには今のやり取りは向こうでも録画されているらしい。何かのアピールに使うんだろうけど、ハリソンさんが悪いことに使うとは思えないし。ご迷惑を掛けたんだから、それくらい問題ないよ。
ハリソンさんにお話ししたし、今度はこの国の責任者にと思ったんだけど。
「ティナ嬢、残念だが今この国は無政府状態だ」
「えっ?もしかして火災に巻き込まれたとか!?」
最悪の事態を考えて慌てる私を見て、隊長さん達はため息混じりに教えてくれた。
「真っ先に逃げ出したんだよ。今頃ヨーロッパで遊んでいるだろうさ」
「しかも飛行場を封鎖して自分達だけのために使った。あの飛行場が使えれば、もっと人員や物資の輸送も楽になったのに!」
皆さんから教えられたのは衝撃の事実だった。真っ先に逃げ出した!?
トップが危険だから国外へ亡命する話は前世でも聞いたけど、この国にはまだまだ安全な地域はたくさんある。そこに退いて指揮を執るのが普通じゃないの?
いや、そう考えるのは私が市民的な考えだから?高度な政治的判断なのかな?
いや、考えていても仕方がない。取り敢えずアリアにお願いして国のトップに連絡して貰った。バカンス真っ最中みたいな服装でイラッとしたけど、先ずは状況を伝えた。
『医療シートを!?それはありがたい!是非ともお願いしたいが、先ずは此方へ送って欲しい。適切に配分させていただく!』
はっ?なんで?二度手間どころの騒ぎじゃないよね?
断ろうと思ってたら、暴動を粗方鎮めたばっちゃんが割り込んできた。
『分かった☆直ぐに送るようにお姉ちゃんにお願いするね☆』
『おお、妹さんかな!?お願いする!』
通信を切ってばっちゃんに視線を向ける。
「まあまあ、任せてよ☆取り敢えず許可は貰ったんだし、ティナちゃんは医療シートを使って☆こっちは私が対応するからさ☆」
「えっ?送らなくていいの?」
「良いから良いから☆あと、私はティナちゃんの妹のティリスちゃんでお願いね!☆」
「えっ?……まあいいけど」
こんなロリが千歳越えてるなんて理解するのは難しいだろうし、ばっちゃんの言う通りにしよう。先ずは助け出した人の手当てを!
「さぁて……“アオムシ”観察でもしようかな」
ティナを送り出したティリスの目は、ゾッとするほど冷めきっていた。