テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
朝、陽の光に目を細める。重い体を起こすとLINEの通知が酷いことになってるのに気づいて、なんとなく開いたらめちゃつえーのグルラだった。なんか、僕の家にみんな来るらしい。僕許可してないんだけどな……。はぁ、と溜息を付いて気分を変えようと背伸びを1つ。
「んー…!よし、きがえよ」
私服に着替えたらいつものお散歩。スマホと財布だけ持って1人の部屋に行ってきます。散歩してる最中には色んな人から物を貰っちゃって腕がパンパン。近所のおばちゃん、みっちゃんからはケープ、ガキンチョことカンタからは小柳ロウのスーパーキラキラカード。他にも手作りアクセとか色紙に描かれたヒーローの集合絵とか。諸々。ボク恵まれてるなーって思いながら家に帰宅後、貰ってきたものを1つ1つ整理。色紙は飾ってケープは洗面台。小柳ロウのカードは携帯の裏にでも付けとけばいいだろう。そこまでやってそろそろ時間だとリビングを片付けて、時間余ったから唐揚げでも作ることにした。
「よし、できた。えーと、こっちはお持ち帰りか」
お持ち帰り用は冷蔵庫にIN、と慌ただしく一人でしまい込んでいく。油物はやっぱり暑いので夏場は注意しないとなと水分補給。準備完了したところで時間の確認。時計の針は午前九時辺りを刺していてそろそろあの早とちりのに真面目な2人が来る頃。
「やっべ、ギリじゃん、あぶねー」
僕の独り言も静かな空間に相変わらず大きい。とりあえず背伸びをしてからリビングで人が来るのを待つ。ときたま鼻歌を歌ったりしてしまうくらいには僕も楽しみだったらしい。だんだんと携帯にも飽きてきたころ、ぴんぽんという無機質な音が響いた。携帯の画面を伏せて玄関にお出迎え、すると戦闘おわりのロウとマナが挨拶してくれた。挨拶はお返しして、そしたらマナが疲れたーと先陣を切って入っていく。ここはお前の家かって突っ込もうとしたけど綺麗に整えられた靴と、何よりも満身創痍の姿を見ては何も言えない。はーぁ、とため息をついてお茶を用意。
「はい、ロウきゅんとマナの」
「ロウきゅん言うな、さんきゅ」
「ありがとなー…」
「wいいえー」
相変わらずこやろうってば律儀。きゅんキャン(デイリーボーナス)もお礼も忘れない。ま、そーゆーとこが好きなんですけど、なーんて。マナがお茶一気に飲み干して、くぅー生き返るーなんて言ってるからなんか空気も和んだ。おかわりをついであげて違和感。
「あれ、2人とも戦闘終わりじゃん荷物あんの?」
「星導」
「リトテツ」
なるほど。僕の素朴な疑問に一言の2人。これだけで通じるって言うのはもしかしたらほんとうにディスティニーなのかもしれない。なんちゃって。とりあえず、僕なんかが癒しにはなれないけど、マナの頭撫でてあげた。偉いねー、おつかれーって。そしたらマナうるうるし始めたからなんかごめんって謝ったら怒られてわけわかめ。もしかしてもしかすると嬉しくて泣いたのかなって1分遅れで理解。ならいーやと胸を1撫で。横目でみた2人は楽しそう。案外あの2人は仲良くて僕は密かに羨ましかったりそうじゃなかったり。そもそも3人の関係っていうのは大体2あまり1だし。まぁ、僕も2人のこと嫉妬させるくらい余裕なんでね、大目に見てやりますけど。そうやって胸を張ってみたはいいものの、やっぱり寂しいものは寂しいわけで。ちょっぴり、ほんとにちょっと、めちゃめちゃ小さい声でね、寂しいなって言っちゃったり。2人には聞こえてなくてほっとしたのかイラッとしたのかなんなのか分からないんだけど。そうやってダラダラと悶々と一人で考え続けて20分位たった後、また無機質な音が鳴る。あわてて覗けばリトテツだった。
「いらっしゃーい」
「「おじゃましまーす」」
2人の声にさっきのバカみたいな考えは簡単に吹き飛んだ。嬉しくなって上がって行った2人を見送るように背中を見つめた時、あるものが写り一瞬で嬉しさが消し飛ぶ。視界端に写った靴に動きが止まった。ざつい、あまりにも。そう、靴が。乱雑に脱ぎ捨てられた靴があちらこちらに飛び散っていて、なんならまなの靴まで飛ばされてしまって可哀想なことになってる。さすがに治してあげた。本当に礼儀を知らない男たちだ、さすがの僕も頭を抱える。しかも、問題はそこだけじゃない。そう、靴を直して文句を言おうとリビングに戻ったら、戻ったら、、もう寛いでる。それはもうさも当然かのように。自分の家かのように。白目を向きそうになるのをなんとか堪えて、大人しく、従順に全員が来るのを待つことにした。
そして、3度目のインターホン。声が多数聞こえるところから察するに残りの全員が来たみたい。覗けば想像通りのメンツ。カゲツきゅん、いなみそ、るべしょーの3人。いらっしゃいと玄関を開ければカゲツきゅん以外はちゃんと靴を揃えていった。カゲツきゅんも気づいてごめんと一言謝ってくれた。本当にいい子だ。あのデカブツ共とは違って。まぁ、そんなことはどうでも良くて。問題はこれからどうするべきかなんだよね。ぼくは確かにみんなと満遍なく仲良い自信はある。ロウと相方ぐらいになってるのも自覚はある。でも、やっぱりぼくは結構よそ者未が強くて。いなみそとマナ、るべとロウ(+カゲツ)、リトテツ、僕、っていう関係図ができるのは考えるまでもない。…別に1人が嫌とか、そういうのは無いんだけど、ただ、若干羨ましいっていう嫉妬が湧いてきちゃって、そんな自分が嫌なだけでね。別に皆が楽しそうにしてるのは僕も嬉しくて、全然幸せなんだけど、やっぱり、僕だってみんなと仲いいのになっていうのはあるわけで。まぁ、るべとロウ、リトテツ、のあの2人組は僕が出会うよりも前に出会ってた訳で、そりゃぁさ、そんな腐れ縁の絆を、ロウとるべ、リトテツの関係を、新参者の僕が引き裂けるかと問われれば答えは即答の100%NOだよ。そんな力は僕にはないし、あの二人は実際相性がいい。マナといなみそだってそうだ。確かにの2人も僕と出会った時期と同じだけど異様に相性が良かった。カゲツきゅんは正直そういうの考えないアホの子なんで多分あの子は誰とでも簡単に打ち解けられる。現に僕とは違ってあの二人の空間に入っていけてる。とりあえず少しでも嫌なこと考えないように離れた位置で携帯をいじることにした。まだ、心がザワつく感覚が不快ではあるが、一旦受け入れよう。
2人の話を夢中になって聞いて居たら遠くの方でフラッと倒れそうな赤城を発見した。急いで駆け寄ったせいで全員の視線を集めたけどそんなのはどうでもいい。サッと手を差し込んで何とか頭をぶつけるのは阻止できた。顔を見れば、眠っているだけのようで安心。グイッと僕より2センチ大きい兄弟の頭を持ち上げて、僕の膝の上に乗せる。すーすーと大人しく寝息を立てていて、なんだかお兄ちゃんになった気分。そうか、赤城は普段こんな気持ちなのか。こんな優越に浸っているのか。羨ましい。なんてのは嘘だ。 自由気ままに振る舞えるのは末っ子の特権なので、出来ればずっと末っ子がいい。まぁ、兄に憧れもあるが。本当に僕の兄弟は端正な顔立ちをしている。僕とは違う、男らしい顔。色合いと声は可愛いけど見た目だけで言うならかっこいいの最前線を張れる。スーッと通る鼻筋に長めのまつ毛、シャープな輪郭に小さな口。かっこいいと可愛いのハーフと言ったところ。僕にかっこいいを強めに足した感じ。でもそんな兄も可愛いというか、柔らかい猫毛の髪を撫でると若干顔が緩む。撫で続けてると擦り寄ってきてなんかいけないことしてる気がして手を退けた。それを見ていたらしいタコと狼が寄ってきては弄ってくる。タコに関しては赤城にメロメロなだけだが。タコに限らず狼もだけど。そりゃ僕だって赤城はいい男やと思う、いいお嫁さんになれるって。でも、いくら赤城に甘いぼくでも、結婚相手にこんなヤツら連れてきたら許さへんでな。僕が認めへん限り結婚は出来ひんで。…そりゃ、良い奴ではあるけど。
「ん、……カゲツ…?」
「なんや起きたん?」
下から声が聞こえて見てみれば、眠そうに目を擦ってる赤城。タコと狼がやたらと代われ代われと訴えかけてきてウザイ。幸い寝起きの赤城の耳には届いてないみたい。
「ぁ〜……、ごめんね、足痺れてない…?」
なんともまぁ僕の兄弟は律儀な男だ。まだ眠そうな目を擦りながらもサッと僕の膝の上からどいた。大丈夫とだけ返して赤城を立ち上がらせる。
「ん、立たんと体スッキリせんやろ」
僕の言葉に赤城はキョトンとしたけど、すぐにはにかみ笑顔っていうやつを見せてくれた。
「なんか、カゲツきゅんがお兄ちゃんみたい」
お兄ちゃんみたいっていう言葉に僕は若干嬉しくなる。あかん、こういう所がちょろいって言われる原因やのに。分かってはいるんやけど、元からのもんはそう簡単には直せへんもんで。案の定チョロって言う声が聞こえてきたから後でぶん殴ってやる。……宇佐美の野郎。
「はーぁ、寝ちゃったかぁ〜」
背伸びしながら後悔のような事を呟く赤城に狼が寄っていきよった。いざという時は僕が守らなあかん。目は離せへん。
「ウェン」
「ロウきゅん」
「ロウきゅん言うな、何、疲れとん?」
「w、んーん……」
今のところ変わった内容では無い。油断はしんけど。
「んーん、ただ考え事してたら眠くなっちゃったみたいで」
「そ、ならいいわ、迷惑かけたわけじゃなくて」
「いや、急遽は迷惑だけどね?」
「ハッw」
いや、良かったのは本心だがね。急にカゲツが突っ込んだと思ったら倒れてて内心こっちは冷や汗どころの騒ぎじゃねぇんだから。ケガとしてたらあれだし、迷惑かけてたら申し訳ないし。まぁ、本人がいつも通りで良かった。そういえばさっきからカゲツに見られてて居心地が悪すぎるな。……カゲツは勘違いしてるみたいだが、俺は別に無闇矢鱈と手を出したりはしない。ウェンが受け入れてくれるまでは手出をするつもりは無いし、開発を試みるつもりもない。…どっかのタコとは違ってな。…あいつはダメだ。すぐに手を出そうとするし、目を離せばウェン探し、隙を見せればウェンの話ばかり。いや、俺もウェンの話が多いのは認めるけどね。でもあいつは本当に俺とは違った末期だろ。いつまで経ってもウェンのいい所を細かく噛み砕いて1時間2時間は余裕で話してるからな。もう途中から誰も聞いてねぇよ。
「ロウ?」
「ん?あぁ、わりぃ考え事してた」
「そう、ならいいんだけどさ」
心做しかウェンの顔がしょんぼりしている。……もしかして、こいつなんか嫉妬してんのか?ちょっと素っ気ない返事もだし、若干顔が拗ねてる。……、絶好のチャンスというべきかなんというべきか。これは、案外簡単に俺のもんになるのでは?
「ウェン」
「…、なに」
「拗ねてる?」
「拗ねてない」
「嘘だ」
「嘘じゃない、 」
相変わらず嘘が下手くそで可愛い。拗ねてないなんて絶対に嘘だ。あからさまにほっぺ膨らましてるし、目合わせてくんないし。
「ウェーン」
「……」
「なぁ、わるかった」
「……」
「こっち向いて…?ウェン」
「……、なに、 」
「ごめん、ウェンのこと考えてただけだから」
「ほんとに…?どうせ、るべしょーのことだろうが」
「はぁ?なんであいつ?あんなやつ考えるだけ時間の無駄だろ」
そりゃあ思考に出てきはしたが、根本はウェンだぞ。あんなやつただの腐れ縁にすぎん。想い人やらなんやら勘違いされるくらいなら死んだ方がマシだし、それこそウェンに勘違いされるならわかるまで解らせるぞ。
「ちょっと、酷くないですか!?」
なんか喚いてるが無視だ無視。あんなもの絡む必要ない。
「…w…、ぁーあ、拗ねてたのにるべしょーのせいで台無し」
「ぁ゙?」
「あ、ちょっと怒んないでよロウ、るべしょーで
和んだだけでロウの方がもちろん特別よ?」
それならよしか。
「…ふはっ、ロウわかりやすすぎねw」
「はぁ?そんな顔に出てるか?」
「出てる出てる、嬉しいって」
「……」
「w、なんですねんの?ワンちゃんみたいで可愛いよ 」
「嬉しくねぇ」
「なぁんで、」
可愛いって言われて喜ぶ男に見えるか?俺が。あぁ、もう、最悪だ。こいつにずっと振り回されてる。感情はぐだぐたに掻き回されるし、思考も簡単に左右されるし。俺をどうしたいんだこいつは。幸せにしたいのか不幸にしたいのかはっきりしてくれ、頼むから。こいつの何がそんなに魅力的に見えてんだよ俺は。……くそ、かわいいな。
「ロウきゅん」
「ロウきゅんいうな」
「へはw、可愛いも本心ね、でも、ちゃんとかっこいいよ」
……これは反則だろう。普段見せないような顔でいたずらにかっこいいなんて言われたら、惚れたヤツはどうあらがえってんだ。綺麗な顔が異様に腹立たしい。幸せそうな面晒しやがって。……自分がその顔にさせてんだなと思うだけでにやけるなバカ。俺のアホ。単純野郎。
小柳くんとニキは相変わらず仲がいいようです。俺が入る隙は1ミリもありませんね。んー、失恋というものは辛いです。でも、生憎、見張り人が居るようですね。全く、カゲツに限らずですがみんなニキに対して過保護になりすぎなんじゃないでしょうか。ニキだって成人男性のヒーローですよ?善悪、利益不利益くらい自分で判断出来るというのに。……俺が言えたことではないでしょうけど。それにしてもあの距離感は羨ましいですね。ニキにかっこいいって俺も言われたいです。何度か、優しいとは言われましたが、かっこいいは1度もないのでね……。さて、考え事もそろそろやめにしましょうか。時間もたち始めてますし、そろそろカゲツのようなお子様が見るような場面は終わるのでね。大人の時間はカゲツは見てはなりませんから。
「カゲツ」
「ん?」
「あちらにアイスが売っています。良ければ皆へのサプライズ
として一緒に買いに行きませんか?」
「……」
やはり、手強いですね。流石にニキと労いではニキの方が強いですか。ならば、
「恐らくアイスを渡せばニキ、それはそれは笑ってくれんだろうな」
「いくー!」
はい、釣れました。簡単ですねぇ。それはもう、まるで12ピースのパズルゲームのようです。
「ふふ、カゲツのセンスに任せてもいいですか?」
「……、任せぇ!!」
「頼りにしてます」
あー、ニキもこれだけ簡単ならいいのに。あ、この後の話はまたいつか。