テラーノベル
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合宿の全日程が終了し、稲荷崎高校の部員たちを乗せたバスが夕闇の高速道路を走っていた。車内は練習の疲れで寝静まっている者も多く、低いエンジン音だけが一定のリズムで響いている。
「……先輩、こっち座って」
乗り込む際、角名くんに手首を掴まれて誘導されたのは、一番後ろの座席だった。
隣に座ると、彼は当然のように私の肩に頭を預け、自分の上着を膝の上にかけて、私たちの繋いだ手を隠した。
「角名くん、みんな見てるよ……」
「いいじゃん、寝てるし。……それに、もう隠すの効率悪いからやめた」
彼はスマホを取り出すと、ロック画面を指でなぞった。そこには、屋上で撮った二人の写真。
彼は迷うことなく、部活のグループラインを開き、その写真を無言で送信した。
「……っ!? 何してるの!?」
「……『独占宣言』。これで、ツムさんもサムさんも、他校の奴らも、先輩に手出しできなくなるでしょ」
直後、静かだった車内で数人のスマホが震え、前方の席から「げぇっ!」「角名、お前マジか!?」という侑くんたちの絶叫が上がった。
けれど、角名くんはそれを完全に無視して、私の耳元に顔を寄せた。
「……先輩。これで、もう逃げられないよ」
スナギツネのような細い瞳が、暗い車内で妖しく、けれどひどく愛おしそうに私を見つめている。
彼はスマホをポケットに放り込むと、空いた手で私の頬を包み込み、ゆっくりと距離を詰めた。
「……レンズ越しじゃなくて、本物の先輩を、一生俺のフォルダに閉じ込めておくから」
重なる唇。
それは、どんなシャッター音よりも鮮烈に、私の心に「永遠」を刻みつけた。
生意気な後輩が仕掛けた甘い罠。
私はその温かな檻の中から、もう一生、出たいとは思わなかった。
スナギツネの甘い罠_。 fin
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