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第14章:不死の女帝、降臨
アステリアの空が裂けた。
無数の封印術式が解除され、
大地はうねり、空は血のような紅に染まる。
そして――彼女は、降り立った。
⸻
―顕現―
190cmはあろうかという異様なほどの高身長。
漆黒のドレスを纏い、背には翼のような骨格の羽が伸びていた。
その姿は確かに“美女”でありながら、
一目見ただけで、脳が「この存在は異常」と警告を鳴らす。
髪は流れるような銀色。
瞳は左右で異なる色――片目は深紅、もう片方は虚無の黒。
ルシフェル。
その場の空気が瞬間で“死”に変わる。
セレナは震える声で言った。
「……あれが、ルシフェル……。全然、気配が読めない。まるで、空間そのもの……!」
ゲズが一歩踏み出そうとした瞬間――
「あ……れ……?」
足が、動かない。
まるで重力が何倍にも跳ね上がったかのように、
ゲズの身体が凍りついたように止まる。
「な、なんだこの威圧感……!」
ルシフェルは、ただ一歩、ゆっくりと前へ出る。
その瞬間、地面が崩壊した。
セレナが倒れそうになるゲズを支え、ふたりはようやく構えを取る。
⸻
―絶望の交戦―
ゲズが雷を纏い、吠えるように拳を放つ!
「雷閃裂衝――!!」
光を超える速度で放たれたその拳が――
ルシフェルの胸に直撃した。
だが――
音すらしなかった。
衝撃波も爆風もない。
拳は確かに当たったのに、
ルシフェルは一歩も動いていない。
「な……っ!? 効いてない……?」
セレナが魔法を撃つ。
「《閃光槍・滅式》!!」
光の槍が無数に降り注ぎ、彼女の身体を貫く……はずだった。
ルシフェルは、
ただ、瞬きひとつせずそのすべてを受けて立ち尽くしていた。
「物理、魔力、魂波。全て、既に“私に届く”ことはない」
その声は柔らかく、まるで囁くようだった。
「私は、“死なない”のではない。“死という概念”が存在しない」
⸻
―沈黙と問いかけ―
ゲズが息を切らしながら叫ぶ。
「じゃあ、どうやってお前を……!」
ルシフェルはゆっくりと歩み寄る。
そのたびに、地が軋み、空気がひび割れていく。
「あなたたちは、“死ねば終わる”と信じている。
だが私にとって、それは笑止」
「死ぬことが敗北なら、私は敗北しない。
なぜなら――私は生まれながらにして、死を持たない存在だから」
セレナが震える手でゲズの肩に触れる。
「……ゲズ、逃げよう。今はまだ……無理よ。
今は、まだ“戦うための鍵”がない……」
ゲズは唇を噛んだ。
「こんな奴が……“最終敵”だってのかよ……!」
⸻
―最後の一撃と脱出―
だがルシフェルは、わずかに微笑んだ。
「でも、面白いわ。あなたの“感情”は。
少しずつ熟れてきた果実のよう……まだ刈るには早い」
次の瞬間――
ルシフェルは指を軽く鳴らしただけで、
ゲズとセレナの背後にあった山一つが崩壊した。
それは警告。
「次はあなたたち」と、無言で告げられた圧。
セレナが緊急転移魔法を起動。
「今だけは……私に任せて!!」
ゲズの腕を掴み、空間が光に包まれる。
⸻
―消える間際の囁き―
転移の刹那。
ルシフェルは静かに、ゲズの方へ顔を向けた。
「また会いましょう、雷の子。
次は、あなたが**“絶望を愛する者”**になった頃に」
――その声が、心に焼きついた。