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第15章:封じられし世界と、雷の記憶
――転移の光が収まり、目を開けたゲズとセレナがいたのは、
静寂と霧に包まれた、どこか懐かしさを感じる空間だった。
セレナが周囲を見回しながら言う。
「……ここ、“現実の宇宙”じゃない。
時空の狭間――記録と記憶だけで構成された、封印領域のような場所ね」
《境界領域・アーカ=ヴェス》
星々が滅んだ後に作られた、最後の“知識と真理”の図書館。
彼らはここで、“ある存在”と出会うことになる――
⸻
―記憶の番人―
霧の中から現れたのは、浮遊する球体のような存在。
無数の光を纏いながら、古代語でこう語り始めた。
「雷の継承者よ。
君の中に眠るのは、“始まりの者”の記憶」
ゲズが目を見開く。
「……俺の中に……何かがいるってのか?」
番人は静かに頷いた。
「君の雷は“偶然”ではない。
君の血には、かつてルシフェルと並んで生まれた一柱――
《雷帝ゲル=オルド》の力が受け継がれている」
⸻
―ルシフェルと“かつての英雄”―
番人が空間を揺らすと、幻影のように1万年前の記憶が映し出された。
そこには、まだ“神々が共にいた時代”のルシフェルと、
それに並ぶ“雷帝ゲル=オルド”の姿があった。
かつては共に宇宙を守った神たち。
だがルシフェルは、命の循環を否定し“永遠の存在”を望み、
ゲル=オルドはそれを拒んだ。
そして――ふたりは戦った。
雷帝は敗れ、その魂は肉体を失いながらも、遠い未来に託された。
それが――ゲズだった。
⸻
―新たなる道標―
番人が最後に語る。
「ルシフェルを“完全に滅ぼす”唯一の手段。
それは、“魂を斬る刃”――
**《ソウルスレイヴ》**を呼び覚ますこと」
それは、雷帝の意志と共鳴した者にしか使えない、魂に届く唯一の武器。
ただし、それを扱うには――
自身の“弱さ”をすべて乗り越えなければならない。
⸻
―旅立ち前夜、ふたりの心―
その夜、アーカ=ヴェスの静寂の中。
ゲズとセレナは、炎のように揺れる記憶の灯りを見つめていた。
「俺さ……怖いんだ。
ルシフェルに立ち向かうのが……じゃなくて。
“誰かを失う未来”が……」
セレナは、そっとゲズの手を握る。
「私はね、もう誰も置いていかないって決めたの。
リオン兄さんも、あなたも。
もし“あなたが壊れそう”になったら――」
「私が、あなたを止める」
ゲズの胸が熱くなる。
「ありがとな、セレナ……」
ふたりは手を繋いだまま、静かに夜を迎えた。