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棺に横たわり眠っている吸血鬼を1人の男が見つめている。


一切の曇りを許さないクリスタルガラスで出来た棺桶には、継ぎ目に壮厳な銀の装飾をあしらい、内からの力で開くことは不可能であろう重厚な鍵が掛かっている。


中の吸血鬼はというと、無垢な少女の顔には不釣り合いな大きく尖った耳に、寝ている間に空いてしまったのだろう、小さな唇から鋭い牙が覗いている。 

そんなおぞましい特徴を思わせない穏やかな表情はなんともアンバランスで美しい。


少女は一切の衣類を剥がされ、その白く血の気の無い滑らかな陶器《ビスク》の肌を晒している。

クリスタルの光を点々と受けて輝くその美しい身体は、神々しくも見える。

吸血鬼に“神々しい”などとはおかしな話だ、と男は小さく、けれど彼女が深い眠りから覚めることのないよう、不気味に笑った。


吸血鬼というのは古来より自分の持ち物への執着が強いらしい、彼女も例外では無いだろう。

靴下を片方無くし取り乱していたのを思い出しながら、心底愛おしそうに目を細める。


目を覚ました彼女はどのような反応をしてくれるだろうか、最近やっと馴染んだ制服が無くて狼狽する?それとも棺桶の節々にある金属の煌めきに顔を顰める?


あぁ、もしかしたら頬を染めながら感謝の言葉を、あの可愛らしい唇で紡いでくれるかもしれない…! 素敵な棺桶をありがとう、このベッド《棺桶》を置く場所を一緒に決めてくれないかな?…と。

なんて勿体ないお言葉!!!胸に銀の輪を嵌め込んだ騎士も、歓喜に打ちひしがれ、その枷を破裂させてしまうでしょう!!!!

えぇ、えぇ、我輩はちゃんと解っておりますとも!貴方もそう思ってくださると!!我輩と同じ気持ちだと!!!!!


がたり、と男はトネリコを削っていた(と言っても少女に見惚れていたので持っていただけだが)手を止め、彼女に近づき、ガラス越しにこれまでの、親愛の挨拶でない接吻を彼女に贈ったのだった。

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