「なぁ…リョウ、おかしかったな」
「おかしいな。ショックから回復するには時間がかかるか…」
「昨日は母さんも、目が合わなくて良子ちゃん様子がおかしいって、何度も言ってたし」
「朝時間通りに出勤できるのかとホッとしたけど…なんかいつもと違った」
「昨日の電話は忠志くんだったみたいだ。結婚するらしい」
「そうか…めでたいけど今のリョウコの気分には…どう感じたか……同窓会のこと言っていないだろうしな」
「周りがめでたきゃ、余計に言えないだろうな」
俺たち二人はリョウコのことを話しては深いため息を吐き時計を見る。
なかなか進まない時計の針が夕方5時を過ぎると
「迎えは俺な」
「ああ、リョウの体調が良さそうならそのまま夕食に連れて帰って。佳佑ここに戻らなくていいから」
「了解。連絡入れる」
そう言い店を出る俺に、時間が早すぎるのをわかっていても颯佑は何も言わなかった。
2階の弁護士事務所の灯りを見ながら待つが、5時半を過ぎてもリョウコは出て来ない。
他に階段を降りてくる人が、弁護士事務所の人か3、4階の人かもわからず声は掛けられない。
「もしもし、颯佑?そっち、リョウコが行ったり通ってないか?」
‘…どういうことだ?’
「出て来ない」
‘はぁ?とっくに帰って来るはずだぞ。佳佑、事務所行け’
「ああ。一応母さんにリョウコの家を確認してもらってから事務所に行く。颯佑はリョウコに連絡してみて」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
佳佑から連絡がありリョウに連絡を入れるが
‘お客様のお掛けになった番号は現在使われておりません…’
はっ?
もう時間を気にしてる場合じゃない。
店を閉め、弁護士事務所まで走りながらリダイアルする。
また……使われておりません……ってどういうことだ?
視界に入った弁護士事務所前では、軽トラから降りた佳佑が電話中だった。
「裏も?…いないか…わかった。うん、連絡する」
佳祐は首を横に振りながら、俺の方を見た。
「母さん?」
「家に帰ってないって」
「佳佑……」
「何?」
「リョウの電話……使われておりませんって」
「……行くぞ」
今までの人生で弁護士に用はなかった。
こんな風に弁護士事務所を訪れる日が来るとは予想出来なかった。
リョウはどこにいる?
「失礼します」
ドアを押して事務所を覗くと、手前のデスクは全て空いており、事務員が帰ったのだと想像出来る。
奥に半分個人スペースのようなデスクがいくつかありスーツの一人が
「ご予約はございましたか?」
こちらへやって来た。
「いえ、間宮と申します。佐藤良子を今朝送って来て、迎えにも来たのですが、こちらの事務所から出て来ない。それどころか電話も繋がらない」
「母もリョウの家の前でずっと帰りを待ってます。きっと父も探している。リョウを返して下さい」
コメント
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リョウコちゃん覚悟を決めて過去と決別したんだね🥺でも佳祐と颯祐に黙って姿を消す、どんだけ葛藤したのかなと…