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童磨は宣言した通り、今度は繋がったままではなく、愛おしい宝物を壊さないようにと細心の注意を払ってしのぶをベッドへ横たえた。自分もその隣に滑り込むと、しのぶの細い体を正面からぎゅっと抱きしめる。今度は下卑た欲望ではなく、互いの体温を分け合うための純粋な抱擁だった。しのぶの背中に回された童磨の手が、ゆっくりと、あやすように一定のリズムで上下する。
「……ようやく、静かになりましたね」
しのぶは彼の胸板に顔を埋めたまま、籠もった声で呟いた。二回戦まで終えた身体は鉛のように重く、シーツの柔らかさが心地よい。童磨の胸からは、激しい情事の名残である速い鼓動が、次第に落ち着きを取り戻していくのが伝わってきた。
「ごめんね、しのぶちゃん。あまりに君が可愛いから、つい。……でも、こうして静かに抱き合っている時間も、僕は同じくらい大好きなんだ」
童磨の声は、いつもの芝居がかった調子ではなく、心の底から安らいでいるような響きを帯びていた。彼はしのぶの額に優しく口づけを落とすと、彼女の髪を指先で弄ぶ。
「撮影中は、君のこんなに柔らかい匂いを嗅ぐこともできなかった。……あそこは冷たくて、暗くて、悲しい場所だったから。だから、今こうして君が僕の腕の中にいて、温かいのが、なんだか夢みたいだよ」
しのぶはその言葉を聞いて、少しだけ顔を上げ、彼の金色の瞳を見つめた。いつも空っぽだと言われるその瞳に、今は自分という存在だけが鮮明に映り、慈しみで満たされている。
「……夢ではありませんよ。私はここにいますし、あなたという困った恋人も、ここにいます」
しのぶは自分からも童磨の背中に腕を回し、その大きな背中を抱きしめ返した。互いの心臓の音が重なり、部屋の空気は穏やかな充足感に満たされていく。
「……しのぶちゃん」
「なんですか」
「大好きだよ」
「……知っています。五月蝿いですよ、早く寝てください」
口では邪険にしながらも、しのぶは彼の腕の中に深く潜り込み、その胸の温もりを存分に吸い込んだ。
激しい熱狂の後の、静かな静かな午後の微睡み。二人はそのまま、外の喧騒を忘れたように深い眠りに落ちていった。シェアハウスの寝室には、ただ穏やかな二人の寝息だけが、春の陽だまりのように重なり合っていた。
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れもんてぃ🍋
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