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そうして、覚悟を決めて目標ノルマの達成を目指して、六夜目の警備へと足を進める。ユリメアにとっては悪夢として、またトラウマとして植え付けられてしまって居るために、警備初日よりも、心の余裕が持てなくなってしまって居るのが、現状…、「さて、着いたわね、あともうちょっと頑張れば、とりあえずは良いみたいだがら、もう少しの辛抱よ」
「うん…………」
二人は恐怖心に踠きながら、六夜目の警備へと進む。ユリメアはこれまでは感じなかった筈の強い恐怖心に駆られ、怯え数日前よりも足取りがゆっくりになった。
「何だか、空気がとっても重たく感じる…不気味な感じがする……」
「ええ、そうね重圧感があって異様な感じね」
襲い来る恐怖心を必死に抑えつけながら、ゆっくりと警備室の方へ向かう。と、その前にジュディアが居ないかを今日も関係者用の部屋を見てみたが、彼女らしき姿は、やはり今日もなかった。「居ない……ジュディアさん、何処に行っちゃったのかな……」ユリメアはそう言って、不安がりながらも、次なる警備時間へと進む。
「そうね……」
その後、すぐに二人は警備室へ六夜目の勤務に向かう。警備室に入るとそこは初日とうって変わって何だか異様な空気感が流れ込んでいた。
「あと、ちょっとでとりあえず最初に言われた日数は終わった事になる、怖いかもしれないけどママが一緒にいるから安心して」
「ありがとう……ママ……」
そうして、二人は六夜目の警備の、あの電話がかかってきた。
『ハローハロー?あーびっくりしたか?休日出勤って奴さ、昨日で終わりだと思っただろう?まあそんな心配はしなくて良い、彼らは初日以上にアグレッシブになって、動きが活発的になるが、これまでアドバイスしてきた事をよーく思い出せば良い、正直ここまで来れた警備員は居ない…君らはほんとに凄いよ、……とまあもうアドバイスするような事はもうないな、じゃあ健闘を祈るよ』
と、言って電話は切れた。
昨日はノイズ混じりの意味不明な電話で、その前日は電話主、つまりこの夜間警備の前任者と思わしきと思われる人物の最期となった電話、そしてその終わり際に電話の声の主が複数の機械人形達に襲撃された音も入っていた電話だった。
「電話、終わったね…それにしても、何で電話がかかってきたの…?だって、さっきの電話の人って一昨日の電話の時に…」
「ええ、色々考えたい事はあるけどまずは目の前の警備に尽力しましょ、考えたい事は警備時間が終わってからね」
「う、うん…そうだね、ママ」
こうして、休日出勤の警備時間が始まった。この警備を終えれば、とりあえずは指示された日数は全て完了した事になるが、「皆んな、頻繁に移動してる…これじゃいつもの対処してる速度だと間に合わないかも…!?」
「大丈夫よ、ゆっくり慌てずやりましょう、大丈夫…大丈夫よ 」
「………怖いの、数日前よりも私の事を…睨みつけてる感じが…ずっとこの映像越しでも伝わってくるの…けど何だか寂しそうに、見てる……」ユリメアは監視モニター越しに視える機械人形達を見て、震え怯えている。
前任者と思わしき人物が襲撃されたような音が紛れ込んでいた録音音声のその翌日の電話にて、前任者と思わしき人物の声とは違う、ノイズ混じりの意味不明な内容が電話で流れた、その電話内容を簡易的に言うと、『機械人形にも、命が宿っている』…つまり、此処で徘徊しているあの機械人形達は、魂と生命が宿っていて、ただの機械人形じゃない……生きているのだと。
「ママ……、怖いよ……怖いよ……モニター見るの、怖いよ……」
「ユリメア、大丈夫…?やっぱり怖い…?」
「怖い…怖い……怖い……私の事呼んでるの、こっちにおいでよ…って、それに何か恨みのようなものも感じるし、それに寂しさも…ずっと呼んでる……」
ユリメアは、ビクビクと怯え、もはやまともに監視カメラの映像ですら、直視できなくなってる程、この頃の悪夢が酷くこびりついているようだ。
恐怖の感情が湧き上がり、ポツリ…またポツリと彼女は涙を溢した。「ユリメア‥明日の朝まで耐えられそう?」
「分からない…でも、あと少しだもんね……分かった、頑張って乗り越えるよ……」と何とか恐怖心を堪えて、気持ちを整えた。
この休日出勤が終われば、とりあえずは彼女から指定された日数は完了したという事になる、だが二人はバイトではなく、正式な警備員として任命された為…辞職という選択肢を取らない限りは、この悪夢のような警備から、もう逃れる事は許されない。
警備開始から数時間が経過、機械人形達の動きが数日前に比べると明らかに行動頻度もアグレッシブになっている。
一瞬の油断も隙もしてはならない、其々警備室に接近してくる機械人形の動きに応じて対処方法を変え、ずっと牽制を続けてゆく。警備の最中、ユリメアを誘おうとする声、彼女にしか聞こえない幻聴の声というのも、段々と大きくなっているようで、警備にも支障をきたしてる状態だ。
「…………やっぱり聞こえる……私の事を呼んでる、知らない声が…聞こえる……」
謎の幻聴に悩まされて苦しんでいる我が子に静かに目をやりながら、退勤時間まで、『午前6時』までの時間を乗り越えて行く。
あと、残りの数時間を耐え切れば…!。
そして、あっという間にやってきた時間…、退勤時間になり、今回は今まで以上に電力の消耗が激しく、停電に危うくなってしまう、ほんとにギリギリだったが何とか停電状態になる事態は避けられた。
「これで……やっととりあえずやらなきゃいけない数はこなせた事になるんだよね……」
「ええ…」
二人は、それから帰宅してこの翌日最初の六日分の報酬賃金が送られてきたのだが、「え…?これだけ…?」
送られてきた賃金は、120ドル。命懸けで下手すれば命を落としてしまうかもしれないというまさに危険と隣り合わせの警備内容に対して支給額が割に合わない。
過酷な環境下で、経営も低迷した末路…衰退したこの経営状況で今も尚バイトを募集している事にも疑念を抱いてく。
それにこの低賃金具合は、前々からそうでバイトの殆どは一週間も持たずに辞職したという事例もこのピザ屋は珍しくない。
「ママ‥…………」
一先ず、最初の一週間は無事に乗り越えられた。けど。此処まではあくまで新人警備員に対しての試練、練習の為の言わば新人の為の研修期間のようなものだった、と認識した方が良いだろう。
「大丈夫よ」
二人は警備終わり後の休息に入る。ユリメアは、やはり何やら気配を感じているようでやたら後ろを気にしている。
「やっぱり怖い?」
「怖い……怖い……あの子達の視線の範囲からはもう離れてる筈なのに、何だか居心地が悪く感じるの、ずっと今だって話しかけられてるような…そんな感覚を、感じるの」ユリメアは震え、明らかに怖がっているというのが感じ取れる程、恐怖に囲まれてるみたいだ。
彼女は、最初は怖いとも、何とも感じなかったが、今ではあの機械人形達に対して、恐怖の感情が強く根付き、トラウマや恐怖が脳裏から離れなくなった。
でも、そんな彼女に無慈悲に、更なる迫りゆく恐怖が自身を襲うなんて、今の彼女は知る由もなかった。
それはあのピザレストラン店で警備勤務に勤め始めてから約数ヶ月後程の頃の事だった、彼女は心に蓄積された恐怖心から生じた『幻聴』と、ある時から毎晩のように見るようになった『悪夢』この二つが大きな影響を及ぼす影響となり……深夜の時間、彼女は悪夢に魘され…時より聴こえてくる声も止まない、そんな状態が続き、上手く眠れない日々がずっとだからか不眠状態になっていて、また精神的にも少し病みかけていた時、彼女は……突如として何かに引き寄せられていくように、暗闇の廊下をゆっくりと歩くようになって、更にはぼやき事をボソリと言う。
「声………あの子達の声が……聞こえる……私を呼んでる…………」ユリメアは、真夜中の真っ暗く家の廊下をゆっくりと進み、まるで何かに操られて、引き寄せられいるかのような感覚に彼女は囚われる。
警備に行く前の仮眠を取っていた母親は足音で床が軋む音を聞き、彼女が起きている事を察知し、彼女を見かけ、優しく声かけをしに近寄っていく。
「ユリメア、どうしたの?こんな真夜中近い時間に、何処へ行こうとしてるの?」
「呼んでるの……あの子達が……こっちにおいでって手招きされてるの、だから行くの…私…あの子達と………『お友達』になりたいの…」
妙な事を言い出したユリメア。誰かに身体ごと引っ張られているかのように見える、それくらい不自然な歩き方、それに意識も妙に曖昧な雰囲気を何処となく感じる、異様な彼女。