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こうして、ユリメアは悪夢と止まない幻聴に悩まされつつも、忍び寄る謎の呼び声の誘惑に惑わされ、奇怪な行動にも多々出ることがあり、夜間徘徊、幻覚……いや、明確に言うなら、幻覚でもないかもしれないが、そんなこんなの連続に苦闘を強いられながら、まだまだ終わらない警備の日々を過ごしていく。
その一方で彼女は、あの機械人形達と心を通わせるようになった瞬間の頃から段々と『彼ら』に対して感情移入の状態になり、尚更彼らに…心の干渉を許してしまう事に。
夜間警備をしていた、とある時の事だった。母親が彼女の事を気にして、横に視線を向けると、彼女は何故か、ポツリと涙を流していた。
絶え間なく襲ってくる恐怖心に刺激されて、思わず涙を流していたのかと思ったが、彼女の突然の涙の聞いてみたところ、どうやら違った。
彼女は、涙を溢しながら、こう言った。「あの子達が…教えてくれたの…過去の出来事の事……知っちゃったの……だから、それが頭の中に浮かんできて……悲しくなっちゃったの……」
恐怖心に怯えていたかと思えば、次は、彼女が持つ『不思議な超能力』が自然と働いた事によって、感情移入し、同情の意思。
「また彼らの心情を読み取ったのね。貴女のその『超能力』は幼い頃からのもので毎度驚かされてたけど‥…あ……」
マーティルはふとぼやく。「…………」複雑になって行く感情を抱き続け彼らの気持ちに干渉した事で更に彼らの手に引き込まれてしまいそうに、そんな事態に陥りかけるも、傍にいてくれている母親の存在のお陰で何とか引き摺り込まれるなく居るが、彼女はまた、また一つと奇怪な行動を頻繁に起こし、度々警備時間外なのにも関わらず、誰かに導かれて行くように深夜の真っ只中あの店の中で徘徊している機械人形達に会いに行こうと出歩くなんて事も増えた。
「とりあえずこの警備時間を乗り越えましょう、だからお願い…彼らの元へは行こうとしないで、行ったら駄目……」母親として娘を守る姿勢を見せ、そっと娘があの機械人形達の元へ行く事を拒む。「…………寂しい……お友達になってあげたい、なりたいの………」
彼女はポツリ、ポツリと涙を流しながらそう言った。監視カメラ越しに彼女はあの機械人形達を見つめ、今度は何も言わず、ただ寂しさから溢れてくる涙を静かに流していた。「あの子達の声……聞いたの、全部…あの子達は悪い子達じゃないんだよ、奪われたって…どうやったらあの子達とお友達になれるかな、でも……あの子達も言ってた、ママと同じ事……もうどうしたら良いか分からなくなってきそうだよ…… 」
「駄目よ、行こうなんてもう考えないで、お願いだから……」マーティルはそう言って彼女を説得し、引き続き警備を続ける。もうあの『前任者』の電話もかかってくるとはない為に警備の助言も聞く事が出来なくなった以上ここから先の警備は自分達の感覚と腕前のみを信じて退勤時間までを乗り切るしかなくなった。
だが、前は警備をするという事に恐怖心を抱きながらでも比較的前向きに向き合えていたユリメアだったが、今も尚悪夢のような夢の中で干渉してくるという謎の存在と意思疎通をし、感情面でもそれが鮮明にわかる程にやたらユリメアは度重なる現象の最中でこのレストランのあの機械人形達について、心を寄せるような素振りが多く、同情しているようにも思える。だからか、警備をこの続けるという事に対して疑念を抱くと同時にそれもあって今や消極的になった。
「終わった……何とか乗り越えられた……」
「う、うん……そ、そうだね……」
やっと乗り越えられ、時刻は午前六時になり、今日のところはこれで退勤だ。さて、今日も彼女が居るのか、と思ったらそうではなかった。とりあえず帰宅して何時ものように休息の時間を過ごす事に。「あの子達、きっと……寂しがってる…でも……また夜になったら会える…」
ユリメアは恐怖心ではなく不可解な引き寄せによって、寧ろ『彼ら』の方への執着心や興味といった感情が浮き出る事が増幅し、毎晩見る奇妙な悪夢にまで干渉してきているあの機械人形達の本当の『中身』の存在と悪夢の中で会うようになってから、機械人形達の方に歩み寄りたいと今度は思うようになり始め、けどその一方で悪夢の中に機械人形達の『中身』の影に隠れている『凶悪な悪人』の存在がある事により、彼女の心にある恐怖心を煽る。
「ユリメア……どうしてそこまでしてあの子達のところへ行きたいって思うの?寂しがってるから……??」
「うん……」
「そう……でも絶対に行ったら駄目よ、お願い…行かないで」
「ママ……あの子達の元へ行ったら私…私は…もうママと会えなくなるの…?何でなの‥私、分からないよ……」涙を流しているユリメア。そんな彼女をそっとマーティルは抱きしめた。こうして警備時間終わりの休息の時間を過ごしていた時の事だった。あの日以来だろうか、数ヶ月振りにジュディアの方から連絡があり、もう十分あのピザレストランの警備員として認定され、極めて優秀な警備業務をこなしていると組織から評価されたようで、その恩恵もあって彼女は今なら以前会って話そうと思っていた事を改めて話したいとの事だった。
「あれから、また随分と久方振りになってしまったわね、警備業務…相変わらず順調のようで正直驚きました、あそこに勤めた警備員でこんなにも長い期間続けられているのは、ほんとに極めて異例な事よ、バイトの人でもせいぜいもって一週間、いやそれ以下で辞めて行くのが殆どだもの、ここまで耐え抜けてる貴女方達はほんとに凄いわ」
「ありがとう……ございます……」
「それと、ユリメアちゃんの最近の様子は……?」
「はい‥‥何とか私と一緒に日々こなしてくれてるんですけど、ある日突然悪夢や幻聴や幻覚といった妙な現象が彼女に起きてて、それと…今度は突然警備時間じゃない……まだ深夜じゃなくて少し明るい夜の時間帯になると、誰からまるで糸を引かれて引っ張られてるように不自然に歩き出して、どこに行こうとしてるのって聞くと毎回あのレストランに行ってあの機械人形に会いに行くのって、お友達になりたいってずっと言ってて……それも決まって夜の時間帯時なんです」
そう打ち明けるマーティル。と、この言葉を聞いた途端に彼女は何かを察したようで、「よほどその子は彼らに気に入られたようね、完全に魅入って標的として見られてる証拠よ…何より干渉して、同情を誘えば…恐らくその一連の出来事の根本は、やっぱり彼女が彼らの『ガワの中身』に近いものがあるからでしょうね」
「子供……あの、それこの子も毎晩見る悪夢に子供が複数出てくるって、子供だって良く言うんだけど、もしかして何か関係が…?」
「そうね、以前何れは話すって約束したんだもの、それにもう貴女方親子は我々フレディ−ファズベアーズピザの警備員の一員として優秀な警備業務を日々こなしている、ほんとに異例な警備員を迎え入れ……それは関係者の多くがお二人の警備業務の見事な遂行力を認めてる、いえあらゆる項目を高く評価してるわ、何であれ関係者になった以上は貴女方も此処の血に濡れた悲しき悲劇の過去の数々を遅かれ早かれ、何時かは必ず知っておかなければならなくなるのもまた事実‥…」
「実は今日此処へお二人をお呼びしたのは電話でお伝えした通り、以前お会いした際に話すべき事だった事をお伝えする事が出来なかった、けどやっと話す決意ができたので……それでお呼びした次第です。でも正直今から話す話を聞いてユリメアちゃんがトラウマになったり、ショックを受けるんじゃないかって、それがどうしても心配で躊躇してたの、それと単にまだあの頃は何があっても今は『過去に起きた事件』の事は話すなって……口封じもされてたので…… 」
とジュディアは話せなかった本当の理由を告げ、だがずっと内緒にしておけるような事ではない、いや、今でなくとも何れは必ず話す時がきていた。ただそれだけ。
「けど話さないといけない、ずっと内密な情報として閉ざしていたら後悔する…それにもうあんな『悲劇』を、あんな……悲しい事なんて起きてほしくない……私はずっとその現場を……この目で見てきたから……」
「知りたい…あの子達の事も…過去に何があったのか知りたい」
「……そうよね、過去に起こったあんな事、こっちだって何時までも隠しておくなんて出来ない、それに過去の事件事例の殆どの死傷者が子供だったという事もあって、ユリメアの年齢的にも通ずるものがあるから、何よりだからこそ…我々フレディーファズベア−ズピザレストランのスタッフの一員になった貴女方お二人には、尚更隠さずきちんと過去の事を話しておかなければならない義務がある」
とジュディアはそう言って、そっと深呼吸をして「やっと話せる決心がついたんだもの、今から話す事は以前忠告したように、関係者以外の人には他言無用でお願い、これは『関係者間でしか共有が許されない』、そういう決まりなの」
「それは心得てるつもりです」
「誰にも、周りの人達には言わない、約束する!」
「お二人共、承諾ありがとう。じゃあ早速本題に入るけど、二人はあの店で閉店になる以前に何があったのかは…ご存知?」
「何も知らない。ただ、急に閉店したってニュースで見たよ、あの時は皆んな驚いたって。そんな詳しい理由までは分からないけど」
「そう…それもその筈よ、だって事の詳細を確認し、認知してたのは関係者側のみ…それにもし何かの弾みで内情を外部の人間に話して、それが広まったりでもすればそれは店舗自体、存続の危機に陥る事になるんだから、だから何がなんでも隠し通した、何なら犯罪もどきのような事まで……信じられないような事を我々は繰り返してきたの」
「あの店は閉店になる以前、実は信じ難いかもしれないけど…不慮の事故やはたまた、警察沙汰にもなった大事件が複数発生していた、それも一件や二件どころじゃない、複数…私が記憶している中で、大騒ぎになった最もな重大事件は噛みつき事件……それから、児童誘拐事件、そして殺害事件よ、しかもこの今挙げた事件は、偶然か何なのか、いや最悪な共通点があって、それがこれらの事件の犠牲者が全てにおいて、『子供』だったという事」
ジュディアの口から告げられた驚愕の言葉、という事はユリメアがある日突然悩まされるようになった幻聴や幻覚の正体、そうして彼女の生まれ持った能力で、、彼らと心を通わせ。その末に悪夢にまで、発展し干渉してくる謎の正体は、多数発生した事件や不慮の事故によって犠牲者となった子供の亡霊‥なのか……?。
「子供………じゃああの子達が言ってた事は、ほんとなんだね……言ってたの……突然自由と光を失ったって、それに中にはある男の事がとても憎いって、恨みを抱いてた 」
「恐らくユリメアちゃん、誘われてるって事だけど…思うに仲間入りさせようとしてる、けどそれは貴女が彼らと同じ年頃の子供だからでしょう」
「噛みつき事件やその他の件に関しては不慮の事故として処理されているけど…だけど彼は認めようとしないの、事実を現実を認めようとしない…後ろめたい事や疾しい事を自分が持ってるから、それを知られたくないだけなのでしょうけどね」
「あの………それって、まさかそれをやったのが‥…その『彼』だから……とか?」
そうジュディアに問うと、彼女は何も言わず、「肯定しちゃったら何されるか分かったもんじゃないわ、多分いや、ユリメアちゃんが怖がっているその悪夢の中に機械人形達と一緒に出てくるその人間、間違いない…彼の事で間違いないと思うわ 」
そう彼女は言った。
更に事件の詳細を関係者である彼女は奥深くまで知っている為に、もっと教えてくれた。
「大体はこんな感じよ」
「まさか、あのピザ屋にそんな事があったなんて…… え……?というかちょっと待って、警備員の任命を私だけじゃなくてこの子にもした理由ってまさか……」
とかなり最悪ない事に勘付いてしまった様子のマーティル。
「ご想像している通りかと……」
「そんな‥…………」
「彼は完全体のアニマトロニクスを創るなんて意味不明な事を言っていた事もあったわ、機械人形達の設計や技術担当は彼何だけれど、あの大事件の数々が起きて以降、彼は行方不明になったの」
「…………………」
「噛みつき事件も、誘拐殺人事件も当時その事を目撃した時は思わず背筋が凍ったわ、鮮血が飛び散っていて噛みつき事件の現場も……目も当てられない程に残酷で亡骸も無惨な姿だったわ、もうあんな事は繰り返されてはいけない……」
そう言い、噛みつき事件、それからもう一つの事件の事…被害者の子供達についてなど、彼女が記憶している限りでの範囲の話を赤裸々に話してくれた。
深く知っていけば知る程に残酷な……過去に起こった事件…。二人に恐怖心を更に追い討ちをかけるきっかけになったのは、被害者がどれも『幼い子供』だったという事。そして、これで全ての点に合致がいった‥ユリメアが魅入られ、ユリメアが寄り添いたいと思う理由も、全て。
この数々の事件の犠牲者が幼き子供で、その亡霊が彼女に悪戯しているのだと。「……………………」
「まさか、あの閉店の裏でそんな事が……それに今の話を聞く限り、電話の声の主‥そして前任者と名乗っていた人がもし、その人なら子供達を殺めた悪い人って事になる」
「ええ、何時かは話さないといけないって分かってたけど、でも亡くなった被害者の年齢層を思い返すと、その年齢に近しい年頃のユリメアちゃんには……言いたくても言い出せなかった…」
「ねえ、やっぱりお友達になっちゃ駄目なの?」
「………駄目よ、貴女がもし、彼らとお友達になっちゃったら貴女はもうこの世からは居なくなる……それが何を意味するか、ユリメアちゃんは分かる?」
と幼い子供に対し、そう質問した。