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僕が椅子に座り、僕の後ろにラズールが立っている。

僕の前にユフィとテラが立ち、ゼノは窓の外を、ジルは扉の外を警戒している。

テラが先ほどから僕の方をチラチラと見てくるので、ラズールが怒り出す前に僕が口を開いた。

「テラ、そういえば何か聞きたいことがあったんじゃないの?何でも聞いて」

「え?はい…。あの…イヴァルの王族の方は皆、銀色の髪をしていると聞いたのですが」

「そうだよ。これはカツラをかぶってる。前にバイロン国にいた時は、髪を染めてたんだ」

「なるほど。あのぅ、銀髪を見せてもらっても…」

「おまえっ、無礼にも程があるぞ!」

「ラズール!」

ドンッと床を鳴らしてラズールが前に出る。

僕は咄嗟にラズールの腕を引いて怒った。

「もうっ、怒りすぎ!仲良くしてよね。テラ、ごめんね。ラズールは僕のこと心配しすぎてるんだ」

「いえ、大丈夫です。こんなに可愛らしい王様ですから、心配するのは当たり前だと思います」

「……」

僕と歳が変わらない人に可愛らしいと言われた。たくさん鍛えてるのに、まだ足りないのかもしれない。

「フィル様?」とテラが首を傾げて僕を見ている。

僕が誤魔化すように笑っていると、ユフィも「俺も見たいです」と言い出した。

「おまえら、フィル様に気軽に話しすぎだぞ。フィル様も、嫌なことははっきりと言ってくださいよ」

「嫌じゃないよ。いろいろと言ってくれる方が嬉しい。ユフィとテラ、ちょっと待ってね」

窓の横の壁にもたれて腕を組み、外を警戒しながら注意をするゼノに答えて、僕はカツラに触れる。

すぐにラズールがカツラを取ってくれて、上着のポケットからくしを取り出し、丁寧に髪をとかしてくれた。

「結い上げてたからクシャクシャだけど。これが僕の本来の姿だよ」

長い銀髪の先を触りながら、僕は二人の様子をうかがう。

二人はポカンと口を開けて、僕を凝視している。

あまりにも見つめてくるものだから、僕はだんだんと恥ずかしくなってきた。

「あの…なにか言って?思ってたのと違うかな。リアムの金髪みたいにキレイじゃないから…」

「はっ、すいません!あまりにも美しいので見とれてましたっ」

「本当に…月の光を集めたみたいだ」

テラとユフィが褒めてくれるのが嬉しくて、僕は照れ笑いを浮かべる。

隣でラズールが、面白くなさそうに「ふん」と鼻を鳴らした。


数日かけて、王都の手前の街に着いた。ここに着くまでに、半分近くの騎士達が、家に帰るべく離脱していた。僕達はこの街に留まり、王都までは行かないとゼノが言う。

早くリアムに会いたい僕は、ゼノに詰め寄った。

「どうして?悠長になんてしてられない。早くリアムを助け出さないとっ」

「わかってます。フィル様、どうか落ち着いて」

ゼノに飛びついた僕を、ラズールが引き剥がす。

「フィル様、ゼノ殿には考えがあるのですよ。話を聞きましょう」

「ラズール…」

そうだ。僕一人が騒いでも何もできないのだから。冷静になろう。

僕はラズールに勧められるままに椅子に座り、ゼノに顔を向ける。

「ゼノ、ごめんね。リアムのことが心配で落ち着かない」

「俺達もそうですよ。今、王城にいるリアム様の叔父上、ラシェット様に手紙を出してます。この宿に来てもらうように」

「リアムの叔父上に?」

「はい。ラシェット様は、リアム様を牢から出すよう、王に直々にお願いをされてますが、全く聞いてもらえないようで、大変困られてます。ですのでラシェット様には領地に戻って、そちらで待っていただくよう、頼むつもりです」

「そうだね。それがいいと思う。リアムの叔父上までもが捕らえられたら大変だ」

「はい」と深く頷くゼノの後ろで、ジルとユフィとテラも頷いている。

王都に入る前の、最後の休憩地としてこの街に入った。休憩が終わると、第一王子の軍は、王都に向かう。しかし僕達は、王都には行かずにこの街の宿に泊まり、リアムの叔父上と会う。

リアムの叔父上は、どんな方なのだろうか。リアムが慕っている方だから、きっと素敵な方だ。会えるのが楽しみだな。

「ラシェット様が宿に来られるのは、夜になります。それまでフィル様は、ゆっくりと休んでください。疲れたでしょう?」

「うん、疲れた。どうしても緊張してしまうから。ゼノ達も休んで。ここに着くまで、僕を守ってくれてありがとう」

「俺達がしたくてしたことです。それにこれからの方が大変ですよ」

「そうだね。たくさん食べて体力もつけなきゃね」

「そうしてください。では俺とジルは右の部屋に、ユフィとテラは左の部屋にいます。何かあればすぐに呼んでください。ラシェット様から連絡があれば伝えに来ます」

「うん、よろしく」

ゼノとジル、ユフィとテラが、挨拶をして出ていった。

部屋の中が静寂に包まれる。窓の外から、賑やかな話し声と通り過ぎる荷車の音が、かすかに聞こえる。

僕は椅子から立ち上がるとベッドに行き、ゴロリと横になる。

「少し寝ますか?」

ラズールが近寄り、僕の足からブーツを脱がす。

僕は天井を眺めながら「うん…」と呟く。そしてラズールの袖を掴むと「ラズールも寝る?」と聞いた。

「いえ、俺は誰も来ないよう、見張ってます」

「結界を張ってれば大丈夫じゃない?ラズールも寝た方がいいよ」

「しかし」

「ちょっと来て」

手招きをすると、ラズールが顔を寄せた。

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