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翌朝、いつものように三人で学校の校門を通り抜けた所で、俺と絹子は驚愕のあまりその場に固まってしまった。な、なんと、校門から校舎の入り口へ続く道の両側に、昨日の連中の仲間らしき不良生徒どもがずらっと二列になって並んでいたからだ。
よく見ると昨日美紅に撃退された四人も混じっている。そして、あの住吉とかいう番長が列の奥の方から間を通ってつかつかとこちらへやって来る。
げ! 昨日のお礼参りのつもりか!今日はおそらく不良グループを総動員したんだろう。列の片側に十人、合計で二十人はいやがる。
美紅のあの力があればなんとかなるか?いや、そうだとしても人数が多すぎる。いくら美紅のあの霊能力でもこれだけの人数を一度に相手に出来るか?それに俺や絹子の方に同時に襲いかかられたらいくら美紅でも……
どうする?二人を連れて逃げだすか?いや、しかし、女の子二人を連れてじゃ逃げてもすぐ追いつかれるだろうし……うわあ、どうすりゃいいんだ?
そんな事を俺が真っ青な顔して考えているうちに番長の住吉が美紅のすぐ目の前まで来てしまった。ええい、こうなりゃ、俺だって男だ!せめて絹子だけでも守って……
と思ったら、住吉がいきなり地面に片膝をついた。それを見た二十人ほどの子分連中も一斉に同じ姿勢を取る。
な、なんだ、こりゃ?以前にテレビで見たホストクラブの「片膝ついてのいらっしゃいませ」ってやつみたいじゃないか。
住吉が下から美紅の顔を見上げながら、なんとこう言った。
「おはようございます、美紅のアネさん!」
ア、アネさんって……いや、住吉さんとやら、あんた俺とタメ年なんだから、美紅より年上のはずじゃ。
美紅は美紅で今の事態が分かっているんだか、いないんだか、表情を全く変えずにのんきに返事した。
「はあ……おはようございます」
ええい、じれったい!代わりに俺が番長に訊いてみた。
「こ、これは一体何のまねなんだ?」
「昨日、俺の舎弟からあの時の事を詳しく聞きまして。要するに美紅さんは俺の命の恩人だと分かったわけで。これはそのお礼のつもりです。おい、2年C組のやつ!ボケっとすんな!」
列から不良の一人が腰をかがめたまま美紅の所までやって来て、片膝ついたまま両手を美紅の前に差し出した。
「おカバンをどうぞ。教室までお持ちします」
な、なんだ、こりゃ!まるでヤクザの一家の親分お出迎えじゃないか。そうか、武闘派の不良というのは自分より強いと分かった相手には従順になると聞いたことがあるな。それに確かに美紅があの番長の命を救ったというのは、あながち間違いじゃないし。