テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

恋の季節を越えて

一覧ページ

「恋の季節を越えて」のメインビジュアル

恋の季節を越えて

7 - 迷いの石段、そっと交わる声

♥

45

2025年04月23日

シェアするシェアする
報告する

二日目午前、竹林を抜けた班は次の目的地・祇王寺へ向かっていた。石畳の細い路地に、伝統的な町家の佇まいが並ぶ。
「このあたり、静かで落ち着くね」

澪が小声で言う。


陽は、石段を一歩ずつ上りながら頷いた。

清水寺の大混雑とは対照的に、ここは人影もまばらで、風が苔むした石にそっと吹き抜ける。


「澪さん、疲れてない?」

「ううん、大丈夫。陽くんといると、苦じゃないから」


その言葉に、胸がじんわり温かくなる。陽は一歩踏み出し、澪の少し前に立った。


「そろそろ、おみくじのところ…いい場所、空いてるかな」

「行ってみようか」


二人が石段を登りきった瞬間、前方で神谷迅と早瀬花の声が響いた。


「おーい、こっちこっち!」

「抹茶アイス、ここで売ってるよ!」


陽と澪は笑いながら合流する。迅はカメラで町家の風景を撮り、花はアイスを手に嬉しそうだ。


「おみくじ、引きたい人?」

「私も、やってみようかな」

「じゃあ…一緒に!」


澪と陽は並んで小さな社へ向かう。手を合わせ、静かに願いを心の中で唱えた。


その後、陽が先におみくじを開く。


「…吉だって」

「吉なら、まずまずだね」


澪が笑うと、陽は胸の奥がきゅっと締めつけられるのを感じた。


「澪さんは?」

澪がそっと引いたおみくじは「小吉」。


「…なんだか、陽くんとここにこれたのが嬉しくて」

ぽつり。


陽は照れくさそうに笑い、澪のそばへ寄った。


「僕も、です」


石段を吹き抜ける風が、二人の距離をそっと近づけた気がした。

恋の季節を越えて

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

45

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚