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二日目午前、竹林を抜けた班は次の目的地・祇王寺へ向かっていた。石畳の細い路地に、伝統的な町家の佇まいが並ぶ。
「このあたり、静かで落ち着くね」
澪が小声で言う。
陽は、石段を一歩ずつ上りながら頷いた。
清水寺の大混雑とは対照的に、ここは人影もまばらで、風が苔むした石にそっと吹き抜ける。
「澪さん、疲れてない?」
「ううん、大丈夫。陽くんといると、苦じゃないから」
その言葉に、胸がじんわり温かくなる。陽は一歩踏み出し、澪の少し前に立った。
「そろそろ、おみくじのところ…いい場所、空いてるかな」
「行ってみようか」
二人が石段を登りきった瞬間、前方で神谷迅と早瀬花の声が響いた。
「おーい、こっちこっち!」
「抹茶アイス、ここで売ってるよ!」
陽と澪は笑いながら合流する。迅はカメラで町家の風景を撮り、花はアイスを手に嬉しそうだ。
「おみくじ、引きたい人?」
「私も、やってみようかな」
「じゃあ…一緒に!」
澪と陽は並んで小さな社へ向かう。手を合わせ、静かに願いを心の中で唱えた。
その後、陽が先におみくじを開く。
「…吉だって」
「吉なら、まずまずだね」
澪が笑うと、陽は胸の奥がきゅっと締めつけられるのを感じた。
「澪さんは?」
澪がそっと引いたおみくじは「小吉」。
「…なんだか、陽くんとここにこれたのが嬉しくて」
ぽつり。
陽は照れくさそうに笑い、澪のそばへ寄った。
「僕も、です」
石段を吹き抜ける風が、二人の距離をそっと近づけた気がした。