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「東海達に話してたから遅れるかもって思っとったけど、なんとか間に合って良かったわぁ」


日本国に着いてすぐに僕はそんな事を呟いた。


愛媛県から船で45分。


やっと三重県に着いた。


懐かしい潮風、懐かしい自然の景色。此処に来るんは、実に五年ぶりやな。


またまた暫く歩き続けて、おかんとおとんの墓の前まで来た。


「久し振りやなぁ。そういや、いつから僕は二人の事をおかん、おとんって呼ぶようなったんやったけ」


二人が好きだった干し柿を供えながらそんな事をぼやいた。


「二人にねだられてからやったけ」


「それすらも、今はええ思い出や」


そっと微笑んでみながらそんなふうに語りかけてみた。


「皆はさ、海での恩を空で返したとか言うけどさ、僕は、まだ、恩返せとるきぃせんのよ。恩返しも墓参りも、僕が死んでも、僕の後継者がやってくれるさかいに、安心してな。まぁ、今んとこ死ぬ気は微塵もないけどな」


二人の前やと、不思議と沢山話せる。でも、二人からの返事がないんは、ちょっと寂しいな。


「あれ?炎土?」


急に声掛けられてごっつう驚いた。


振り返ると、そこには鈴華が居った。


「久し振りやなぁ」


「だねぇ」


そんな言葉を交わした。


「鈴華も墓参りしに来たん?」


「そー。うちも、仲良しだったからさ」


「そっか」


会話が全然進まへん。鈴華は他の人らと話す時なんかもっとハイテンションやったのに。どうして、今日はこんなテンション低めなん?!気まずいから止めて欲しいんやけど!


「あ、ごめんね。うち、変な感じだったしょっ。いや~、今頃二人のこと思い出してちょっと寂しくなるとか、変だよね。ごめんごめん」


何時ものテンションに戻ったけど、その言い方は、僕はちょっと嫌かも知れんわ。


「別に、寂しくなっても、ええやろ。僕も寂しくなった時には、ようここに来とるし」


「ほんまあかんよなぁ。僕らドールはなかなか死なへん。でも人間は死ぬ。そんぐらい何回も経験しとんのに、理解もしとんのに、やっぱ、寂しくなんねんよ。でも、それは“当たり前”やったんや」


「やからさ、謝らんとってや」


さっきまで二人の方を見て話しとったけど、今度は鈴華の方を見てそう、一言言った。


「炎土ってさ、此処の人達に似たよね」


嬉しそうな、ちょっと寂しそうな、そんな声で鈴華はそう言い放った。


墓参りの後、暫く二人で三重県を観光してから、僕は家へ帰った。​

語り継ぐ絆 〜海の恩を空で返す〜

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