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コメント
1件
共感求むだね
私は『普通』ではない。
そう気付いたのは小学校六年生の頃だった。
昔から、みんなとは少し、違う思想をしていたことはわかっていた。
いわゆる『目立ちがりや』『自己中』というやつだ。
だが、何をしても中途半端。
小5のときにやっていた楽器も先生がいやでやめてしまった。
有一続いたのはダンスぐらい。
家族からも面と言われたことはないが、態度からして嫌われている。
自分も悪いところがあるのだ。
それは知っている。
それに、小学6年生頃まではそんなことは気にしていなかった。
友達もいたし、喋れる人もいたからだ。
けれど、決定的に自分が『普通』ではないと気づいたのは、小学校のいわゆる『陽キャ』の集団の悪口だった。
放課後帰り道に聞いたのだ。
私の悪口を言ってる人達がいるよ、と。
私はその悪口の内容を友達に問い詰めた。
友達は渋い顔をしながら答えてくれたのだ。
私はその内容を聞き、頭が真っ白になる感覚だった。
面はあんなに優しいのに、私に接してくれるのに、心でそんなことを思ってたなんて。
その時、陽キャに恐怖を覚えたのだ。
その日から、私は反射的に陽キャを避けるようになってしまうようになってしまった。
そんな私に声をかけてきたのは友達だった。
「紗凪ちゃん、どうかしたの?」
「……何もない、大丈夫」
最初はその優しいことに嫌気が差し、無理やり笑顔を作って断った。
「何もなくないでしょ、最近一部の子のこと避けてるよね?噂になってるよ」
「何かあるなら聞くよ」
その優しさに、思わず涙を流しながら悩みを打ち明けた。
陽キャに悪口を言われるのが辛いこと、それで最近怖くなって近寄れなくなってしまったこと。
友達たちはその話を黙って聞いてくれた。
今となってはお礼が言えないが、嬉しかった。
そして。
中学一年生の頃では。
あれから少しだけ陽キャとは喋れるようになったが、未だに怖いことは違いない。
そして、陽キャからは嫌われている現状は変わらない。
なぜか私が陽キャと関われなくなったのを知った陽キャは私のことを影で『陽キャアレルギー』と呼んでいる情報はもう知っている。
朝、学校の廊下で戯れる陽キャ達。
(…邪魔だ、消えればいいのに)
ちょうどドアの前でクソでかい声で喋っているので教室に入れない。
私はため息を付き、仕方なく廊下にあるロッカーにカバンを詰め込んで筆箱だけ手に取る。
そしてチャイムが鳴り、各教室に帰った瞬間に素早く教室に入り席につく。
朝からうるさい声で耳鳴りがしている。
あの時からストレスを感じると耳鳴りがするようになったのだ。
「おはよう〜」
「おはよう紗凪ちゃん〜」
笑顔でクラスの子に挨拶をする。
その子も笑顔で挨拶を返してくれる。
授業はつまらない。
わかるところを何度も復唱されるのが嫌いなのだ。
一度言えば私はだいたい分かる。
「先生、これわからん〜〜〜!」
陽キャの一人が声を上げて授業を中断する。
(…わからないからと言って授業止めないでもらっていいかなクソ)
心のなかで悪態をついてしまう。
だって後で個別で聞くとかして何とかすればいい話だ。
クソでかい声で周りを妨害する意図が全く見えない。
そんな陽キャを注意せず、また同じところを説明し直す先生もどうかとは思うが。
「部活行こー」
「オレ掃除やわ」
ぞろぞろと帰っていく人たちの中の中で、私は別の階段を使って逃げる。
文化祭を控える吹奏楽部はより一層気合が入っている。
一生懸命に、何事もなんとなくやる私には向いていないはずなのだが、もともと少しやっていたからか親に言われ吹奏楽に入った。
私は絵を描くのが好きだ。
アニメや何かを作る、想像が好きだった。
美術部に入ろうとしていたが親に反対された。
「美術はいつでもできるでしょ?もともとやっていた楽器やるほうがいいんだよ。それに美術部は活動日数が少ないし家にいてほしくないから」
「…」
その言葉に反論するのもめんどくさくなり、吹奏楽に入った。
楽器は嫌いなわけじゃない。
けれど好きでもない。
部活終わりは友達と喋りながら帰る。
今日もまた人の悪口だった。
人間として生きていたら苦手な人ができるのも当然だ。
実際に私もそうだし。
けれど別に、それをわざわざ人に言う必要性を感じない。
というか聞かされるこちらの身にもなってほしかった。
(…なんて、いったら即いじめられるだろうし、私は言えるほど勇気はない)
そんな私にも、家に帰れば至福の時間があった。
絵や小説を書く時間だ。
まだまだ未熟でスラスラと文字を打つことができないが、この時間は好きだ。
自分に嘘をつかなくていい。
自分は被害者だ、と主張すれば被害者になれる。
けれど、それはしない。
嫌のことがある、それは人間として当然のこと。
綺麗事だが、語彙力のない人間にはこれまでのことしか言えない。
『普通』じゃないと言われても、私の世界は私が決めたい。
自分のことを少しは認めてあげようと思った。
世の中には、こんな普通じゃない人間は必要ないかもしれない。
今日は私も、『普通』を演じる。