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セミの鳴き声が騒がしく鳴り響いていた夏。俺は窓際の席で永遠と外を見ていた。方程式なんざ知ったこっちゃねえ。周りに座っている生徒も何やら話したり、スマホをいじったりしてサボっていた。数学担当である原口先生は元々嫌われており授業をまともに聞いている人はごく数人。真面目な生徒だけだろう。
俺は外にある朱色の鳥居を見つめていた。その先には祠がありいつもそこに白い花が置いてある。そこは稲荷神社と言ってお稲荷様を祀っているところらしい。俺は歴史が苦手だからそういうことは疎(うと)い。だがこれだけは覚えている。俺が小学二年生頃に祖母が生前言っていたこと。この稲荷神社には昔からとある話があるそう。ある少女が村で仲間外れにされていた。少女はいつも煙たがられ、避けられていた。しかし、一匹の白い狐がその少女を助けてくれたという。それに少女は恩返しがしたいと思っていたがその白い狐が現れることはなかった。そこで、少女はその狐の家を作ったという。村の地面の砂で山を作り、周りに小石を並べる。砂山の中心には一本の枝を立て少女はそこを白狐様のお家だと言った。それから少女はそこに恩返しとしてカスミソウを添えたのだ。奇跡なのかそのカスミソウは一年、二年経っても枯れることがなくそれを見た村人たちはそこには本当に白狐様がいると思い、そこに神社を建てたという。
まあ実際そうなのかは昔の人に聞かなきゃわからないが俺はそこまでその話を信じていない。まあ信じる信じないといった問題じゃあないだろうが。
「お〜い!坂口。購買行こうぜ」
もうそんな時間だったのかと俺は時計を見た。すでに時間は午前12時をとっくに過ぎていた。
「ん?どした〜?」友人の竹島悠人(たけしまゆうと)はそう俺に近づいてきた。
「あ〜いや平気。ちょっとぼーっとしてて」俺はそう言った。
そして、俺と竹島は購買部へ行った。購買では焼きそばパンとクリームパンを買った。竹島にはいつも「少なくね?」と言われる。一方の竹島は焼きそばパンとクロワッサン、サンドイッチの3つを買っていた。俺にとってそれが多く感じる。
俺達はいつも教室で食べる。生徒の少なくなった教室が何となく落ち着くのだ。俺は部活には入っていないため昼休みはのんびり学校中をフラフラしてる。だが昼飯を食ったら竹島はサッカー部の練習へ行ってしまう。彼はサッカー部の中でもエース的な存在で期待されている。そしてモテモテ。バレンタインでは本命を3つくらいもらっていた。俺なんか0なのに。そんな事考えているといつの間にか竹島は3つあったパンを食べ終え、部活へ行こうとしていた。
「それじゃあ俺は行くな!」そう言って竹島は教室を出ていった。
そして、俺は教室に残った。周りは5〜8人ほどいた。しかし、その人達は勉強をしていたりスマホを見ていたりとても静かだった。