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kaede🍁
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五人は魔王城のすぐ近くにある最後の街へ到着した。
大きな城壁。
緊張した表情の兵士たち。
街中には「魔王討伐隊募集」の張り紙が至る所に貼られている。
ラウールは周囲を見渡しながら呟いた。
「いよいよだね。」
「今日はここで休んで、明日魔王城?」
すると佐久間が首を横に振る。
「いや。」
「寄らないよ。」
「え?」
康二も当然のように言う。
「そのまま魔王倒しに行こか。」
「……え?」
深澤も頷く。
「準備は全部終わってるし。」
阿部も杖を肩に担いで笑った。
「回復草もいっぱいあるしね。」
ラウールは四人を見回す。
「……。」
「みんな。」
「ラスボス前だよ?」
「普通、街で情報集めたり。」
「宿で休んだり。」
「装備を確認したりするよね?」
四人は顔を見合わせた。
「そう?」
「うん。」
「俺たち。」
「レベル上げの方が好きだから。」
ラウールは頭を抱えた。
「ゲームの遊び方がおかしい!」
「魔王よりレベル上げ優先って何!?」
四人は笑いながら、そのまま魔王城へ向かった。
___________
魔王城。
入口を守る魔物たちは――
一撃。
また一撃。
阿部の魔法で廊下の魔物がまとめて消える。
ラウールは口を開けたまま立ち尽くしていた。
「え……。」
「これ。」
「勇者いらなくない?」
佐久間は苦笑する。
「まあ。」
「今日は賢者の日だから。」
康二も笑う。
「阿部ちゃん無双やな。」
深澤は回復魔法を使う機会すらなく、のんびり後ろを歩いていた。
「今日は平和だね。」
「うん。」
気付けば。
玉座の間だった。
大きな扉が開く。
玉座には黒い鎧をまとった魔王。
ゆっくり立ち上がり、腕を広げる。
「よく来た勇者たちよ――」
最後まで言わせなかった。
「えい。」
阿部はポーチから一本の毒針を取り出す。
「お願い。」
ひゅっ。
毒針は一直線に飛び――
ぷすっ。
魔王のおでこに刺さった。
「…………。」
魔王は一瞬固まり、
そのまま光になって消えた。
静寂。
「……。」
「……。」
「……。」
ラウールが最初に口を開いた。
「え?」
康二も呆然としている。
「終わった……。」
佐久間は苦笑いする。
「毒針で?」
深澤は肩をすくめた。
「あべちゃんだからね。」
阿部本人も困ったように笑う。
「当たると思わなかった。」
その瞬間。
部屋中が白い光に包まれた。
「お。」
阿部が笑う。
「今度こそ帰れる?」
しかし。
光の中から現れたのは――
「お疲れさまー。」
あの天使だった。
「また会ったね。」
阿部は嫌な予感しかしなかった。
「……。」
「帰れますよね?」
天使はにこにこ笑う。
「ううん。」
「え?」
「まだ。」
「裏ボス倒してない。」
五人全員が固まる。
「……裏ボス?」
「そう。」
天使は軽く頷く。
「本番はこれから。」
阿部はゆっくり天井を見上げた。
「……聞いてない。」
「言ってないもん。」
天使は悪びれる様子もない。
「ちなみに。」
「裏ボス倒すなら。」
少し考えてから笑顔で言った。
「レベル百五十くらいかな。」
「…………。」
「えへっ。」
天使が舌を出す。
「じゃ。」
「レベル上げ頑張ってね。」
その瞬間。
阿部はその場に膝から崩れ落ちた。
「またレベル上げぇぇぇ!?」
佐久間は苦笑し、
康二は大笑いし、
深澤は「やっぱりね」とため息をつく。
ラウールだけは小さく呟いた。
「……このパーティー。」
「絶対、普通の冒険じゃ終わらないんだね。」
その言葉に四人は顔を見合わせ、
なぜか全員が笑ってしまうのだった。
___________
魔王城の玉座。
本来なら、この世界で一番緊張感のある場所のはずだった。
しかし今は。
玉座の前へ円になって座り、五人は真剣な顔で作戦会議を開いていた。
「まずは現状確認。」
佐久間が冒険者証を広げる。
「レベル。」
阿部も自分の冒険者証を見る。
「俺は80。」
深澤が続く。
「俺は105。」
「俺も105。」
佐久間が笑う。
康二も頷いた。
「俺も105や。」
最後にラウールが少し照れながら見せる。
「俺は30。」
全員が静かに頷く。
「十分強くなったけど……。」
阿部が苦笑する。
「裏ボス推奨は150くらいだったよね。」
深澤は大きくため息をついた。
「ここから40とか70上げるのか。」
「気が遠くなるね。」
「うん。」
佐久間も苦笑する。
「また泉に戻る?」
「さすがに飽きるかも。」
康二は腕を組みながら笑う。
「レベル上げ好きやけど、さすがになぁ。」
ラウールだけは驚いていた。
「え。」
「みんな、まだ上げる気なの?」
四人は当然のように頷く。
「うん。」
「裏ボス強いらしいし。」
「負けたくないから。」
ラウールは小さく呟く。
「ゲーム好きって怖い……。」
その時だった。
阿部が何気なく玉座の奥へ続く長い廊下を見る。
「……あ。」
廊下の向こう。
何かがゆっくり跳ねていた。
「銀色?」
「まさか。」
銀色のスライムより二回りは大きい。
巨大な銀色のスライムだった。
「あべちゃん!」
深澤が立ち上がる。
阿部はすぐにポーチを開いた。
「毒針!」
狙いを定める。
「お願い!」
ひゅっ。
毒針は一直線に飛び――
ぷすっ。
巨大な銀色のスライムへ命中した。
次の瞬間。
眩しい光が玉座の間を包む。
『大量の経験値を獲得しました。』
『レベルが上がりました。』
『レベルが上がりました。』
『レベルが上がりました。』
『レベルが上がりました。』
「また!?」
阿部が目を丸くする。
全員の身体が次々と光り始めた。
ラウールも驚いて冒険者証を見る。
「一気に上がった!」
佐久間は笑いながらアイテムボックスを開く。
「ちょうどいい。」
中から一つの腕輪を取り出した。
銀色に輝く不思議な装飾品。
「これ。」
「経験値が二倍になる腕輪。」
ラウールへ差し出す。
「え?」
「俺が付けていいの?」
「もちろん。」
深澤が笑う。
「今はラウが一番レベル低いから。」
康二が腕輪を付けながら笑う。
「これで追いつきやすくなるで!」
「ありがとう!」
ラウールは嬉しそうに腕輪を見つめた。
阿部は魔王がいなくなった玉座を見回す。
「もしかして。」
「魔王城って。」
「経験値稼ぎ放題なんじゃ……。」
四人の目が輝く。
「……。」
「……。」
「……。」
「行こう。」
佐久間が立ち上がる。
「裏ボス。」
「待ってろ!」
康二も拳を握る。
「今すぐレベル150にしたる!」
深澤は笑いながら杖を担いだ。
「天使もびっくりするね。」
阿部も嬉しそうに頷く。
「魔王城、全部探索しよう!」
四人は宝探しへ行く子どものような笑顔で走り出した。
最後尾を歩くラウールだけは、その背中を見送りながら苦笑する。
「……。」
「普通、ラスダンって怖がる場所だよね。」
「何でみんな。」
「経験値稼ぎのボーナスステージみたいな顔してるの……。」
ラウールの小さなツッコミだけが、静かになった魔王城へ響いていた。
___________
魔王城は、いつの間にか五人にとって「最後のダンジョン」ではなく、「最高のレベル上げスポット」になっていた。
「あっ!」
廊下の奥で、大きな銀色のスライムが跳ねる。
「いた!」
阿部が毒針を構える。
しかし、その前に。
「今回は俺が行く!」
佐久間が剣を抜き、一気に距離を詰める。
「はぁっ!」
鋭い一撃が銀色のスライムを真っ二つにした。
『大量の経験値を獲得しました。』
「やった!」
佐久間が嬉しそうに笑う。
「毒針なくても倒せた!」
その後は康二も負けていない。
「どいてや!」
魔物の懐へ飛び込み、
「せいっ!」
強烈な回し蹴りが銀色のスライムを吹き飛ばす。
『大量の経験値を獲得しました。』
「よっしゃ!」
康二がガッツポーズを決める。
阿部も笑顔になる。
「みんな、どんどん強くなってる。」
「もう毒針だけに頼らなくていいね。」
___________
しばらく戦い続けたあと。
「ちょっと休憩しよう。」
深澤の一言で、五人は再び玉座の間へ戻ってきた。
ラウールが玉座へ腰掛けようとする。
「王様気分!」
その時。
ゴゴゴゴ……
「え?」
玉座がゆっくり横へ動き始めた。
「隠し通路!?」
五人は同時に立ち上がる。
玉座の下には、地下へ続く石階段が現れていた。
「絶対行くよね。」
「行く。」
「こういうの好き。」
誰も迷わない。
五人は階段を降りていく。
地下最深部。
小さな祭壇があり、その中央には一本の剣が刺さっていた。
黄金に輝く、美しい剣。
「これ……。」
佐久間が息を呑む。
剣へ近付くと文字が浮かび上がる。
『勇者の剣』
「本当に勇者専用だ。」
恐る恐る握る。
すっと軽く抜けた。
剣が眩しく輝く。
『勇者の剣を手に入れました。』
「うわぁ……。」
ラウールが目を輝かせる。
「主人公じゃん!」
佐久間は照れ笑いを浮かべながら装備した。
「似合う?」
「めちゃくちゃ似合う。」
阿部が頷く。
___________
その後。
銀色の大きなスライム三匹と遭遇する。
「今回は試してみる。」
佐久間が勇者の剣を構える。
「いくよ。」
一閃。
キラリと光が走る。
銀色の大きなスライム三匹は、その一撃だけで光となって消えた。
『大量の経験値を獲得しました。』
「一撃!?」
康二が目を丸くする。
「強すぎるやろ!」
深澤も笑う。
「勇者専用装備ってすごいね。」
佐久間本人も驚いていた。
「これは反則かもしれない。」
___________
それから何日経ったのか。
誰も数えていなかった。
気付けば。
阿部が冒険者証を見る。
「レベル150。」
ラウールも嬉しそうに笑う。
「俺も150!」
佐久間は肩をすくめた。
「俺。」
「200。」
「俺もや。」
康二が笑う。
深澤も苦笑した。
「俺も200。」
五人はしばらく沈黙したあと。
同時に笑い出した。
「……やりすぎた。」
「完全に。」
「裏ボスより。」
「レベル上げが目的になってた。」
___________
「そろそろ出よう。」
阿部の一言で、五人は魔王城の外へ出る。
すると。
突然、空から優しい光が降り注いだ。
どこからともなく音楽が流れ始める。
街の人々が集まり、
「勇者様!」
「ありがとうございました!」
花びらが舞う。
王様まで現れ、盛大な祝福が始まる。
「……。」
佐久間が首を傾げる。
「これ。」
「エンディング?」
深澤も笑う。
「魔王を倒した後のイベントだ。」
康二は大笑いした。
「今さら始まった!」
ラウールも吹き出す。
「みんなが魔王城にこもりすぎたからだよ!」
阿部は照れ笑いする。
「レベル上げが楽しくて。」
「完全に忘れてた。」
五人は笑いながらエンディングを眺めた。
___________
翌朝。
「よし。」
佐久間が勇者の剣を背負う。
「今日は本当の目的。」
深澤が杖を握る。
「裏ボス討伐。」
康二は拳を鳴らす。
「もう負ける気せえへん。」
ラウールも盾を構えた。
「俺も頑張る!」
最後に阿部が笑う。
「行こう。」
「今度こそ、この世界をクリアしよう。」
五人は朝日を背に、裏ボスが眠るという地へ向かって歩き始めた。
コメント
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第7話、読み終わりました!魔王が毒針一発で倒される展開には笑っちゃいましたね(笑)。ラウールの「勇者いらなくない?」ってツッコミ、めちゃくちゃ分かります。でもみんなでレベル上げに夢中になって、エンディングイベントをすっかり忘れてたくだりが最高でした。勇者の剣もゲットして、いよいよ裏ボス戦…楽しみです!