「私、結構早くに子供を産んだ人だったの。実はあなたにはお兄ちゃんが居てね、陸って言ったわ。」
「それ、竜宮堂くんが配信で言ってた!」
「でも、あなたが生まれた年に交通事故で亡くなってしまったの。」
「えっ…………」
「あなたが生まれるちょっと前までは、お父さんデビューしてなかったから、よく陽斗くんをうちに連れて来ていたりしたの。その時に陸と遊んだりしていて。」
「でもその後すぐデビューが決まって。同じメンバーになった星野くんが売れっ子だったからすぐに人気が出たの。家に帰れない日が続いていた間に、あなたが生まれたわ。」
「その間には陽斗くんがよく遊びに来てくれていて。だからその写真があるの。」
「そんな中お父さんに1日だけ休みの日ができて。陸とあなたを遊ばせてやりたいって言って3人で遠くまで行ったわ。」
お父さん、生まれる前からいなかった訳じゃなかったんだ、覚えてないだけだったんだ。
「でもお父さん、それまでの日々が多忙過ぎたのか、公園で陸を遊ばせていた時、あなたを抱きながら一緒に眠ってしまったそうよ。」
なんとなくそれからの話は想像がついた。
「それで陸から目を離した隙に……?」
「うん。道路に飛び出してしまったんだと思う。」
「その後お父さんは見たことの無い顔をして私の所に帰って来て。」
『俺、アイドル辞めるよ。』
「って言ったの。私は要の夢だったアイドルを家族のせいで諦めて欲しくなかったし、反対した。」
『でも、どちらかにしないと、どちらかに支障をきたしてしまう。』
「ただでさえ多忙だったから、そう思うのも納得がいった。だから私は提案したの。」
『じゃあ、要の理想とするアイドルになれるまで、アイドルに集中するのはどう?私たちのことは心配しないで。めぐだって、要を受け入れられる年になるまで様子を見るわ。』
それで今の生活に……
じゃあお父さんは離婚していなかった訳じゃないの………?
「要はその提案にのって別々に暮らし始めたの。要にとっては両立が難しかったのね。」
「ただ、私から一つお願いをした。」
『要が戻ってくるまでの間は、要をテレビで見たり、調べたりしない。要本人から、色んなこと聞きたいから。その時に、電話を頂戴。』
それでテレビに出てても見ようとしなかったのか……
「めぐにも混乱させたくなかったし、アルバムとかからは私とめぐ以外の写真を全部抜いたはずだったんだけど…ひとつ抜き忘れていたみたいね。」
そういうことだったんだ。だからあの配信の時、ハルくんはこの話を途中でやめたんだ。
「え、ちょっと待って、じゃあなんで、なんで離婚してないのに私は雪田めぐなの?」
「あぁ、それは、元々私の苗字で登録したからよ。だから本当は、お父さん、雪田要って名前なの。」
「いや、だって母子手帳に龍野めぐって…」
「あ…笑、それも見ていたのね。あれは要が張り切りすぎて間違えて書いたのよ笑」
「だから使ってなかったの笑、なんか竜宮堂くんらしい…かも笑」
動揺したけど、聞いてよかったと思った。
その後あかりに返信した。
「お母さんに話したら本当にハルくんだった!」
「やっぱり!小さい頃のハルくんの写真公開してた事あったから既視感があったみたい。……ってか!羨ま!ハルくんに会ったことあるなんて!」
「それどころじゃないんだって!私のお父さん竜宮堂くんだったの!」
「えっ?!」