俺が写真にハマってから、こいつも始めるようになった。こいつの吸収力はすごくて、今では俺よりいいカメラを持っている。旅行中、俺を撮りたいなんてなったときはびっくりしたけど。
それでもこいつの腕は悪くないし、なんならどういうふうに映るのか、見てみたかった。二人で歩いた砂浜も、こいつだけ後ろを歩いてシャッターを切る。きっと俺のこと撮ってるんだろうなってのはわかった。
俺が食べたいって言った海鮮丼の店では
「なんで今日来ることにしたの?」
って聞かれて。いやまぁお前が誘ってきたからだろって思ったんだけど…
えおえおも、自分と二人の旅行に俺がノッてきたことが疑問だったようだ。元々あんまり馴れ合う感じじゃない。ライブの練習ならダンス組で一日中一緒にいることはあるけど、それ以外だとお互いをなにかに誘うってあんまりないんだよね。
「別に。高そうなとこだし行ってみてもいいかなって思っただけ」
全くの嘘。俺は今日一日でどれだけ嘘をつくんだろうな。
俺の前に出された蟹たっぷりの海鮮丼。それを羨ましそうに見つめるえおえお。そりゃこいつも食べたかっただろうに。慈悲でこいつに一口やることにした。めんどくさいから俺のやつでいいか。
「ほら、食えよ」
スプーンで一口掬って目の前に出してやる。こいつは驚いた顔して俺とスプーンを交互に見ていた。なんだよ、いらないのかよ。遠慮はしてるんだろうけど。遠慮なんてする仲じゃないだろ。
俺はその口に強引にスプーンを突っ込んだ。
「んむ…」
「ははっ、変な顔」
俺にされたことが理解できなくてポカンとしているけど、すぐにそれは嬉しそうな表情に変わる。
「んまい」
「だろ?」
我ながら恥ずかしいことをした自覚はあった。でも、こんな時じゃないとできないから。いつも他のメンバーとつるんでて、俺とはあまり関わらない。旅行中という、こいつを独り占めできる今じゃないとできないと思った。独占欲強いのかな、俺。
その後もまた浜辺を歩いたり、ジンクスのある鐘を鳴らしてみたりした。そのときに撮った写真は、俺の目に焼き付いて離れない。なんでかって?
だって―
こいつは写真に感情を乗せるのがうまい。家の猫を撮るときだって、好きって感情が現れてるのがよくわかる。時分の好きなものにはとことん愛を注ぐタイプなんだろう。
俺の写真を見たときに、それは一目瞭然だった。猫を撮るときと同じ雰囲気が見て取れたからだ。
「お前さ、撮るとき何考えてんの」
「何っていうか…普通にきれいに撮れたらいいなって思いながらだけど…」
そんなの嘘に決まってる。だってこんなの…
To Be Continued…
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