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午後の光が差し込むリビング。
イギリスはソファに腰掛け、膝の上にはすやすやと眠るミル。
その隣で、フランスは腕を組んでふてくされたように壁を見ていた。
フランス「……ねえ、イギリス。ミルばっかり可愛がってさ」
イギリス「はい?」
フランス「僕のことはもう飽きちゃったの?」
イギリス「……そんなわけないでしょう。いきなり何を言い出すんですか」
イギリスは静かに返しながらも、視線はミルに注がれたまま。
優しく撫でているその手が、なんだかやけに優しい気がして──
フランス「……ふーん。じゃあ、ミルと僕、どっちが可愛い?」
イギリス「……質問の意図がまったくわからないんですが」
フランス「いいから答えてよ」
イギリス「…………はあ。比較するものじゃないでしょう、それは」
フランス「ねえ、なんでそんなにはぐらかすの? ……僕のこと、構ってくれないくせに……」
ぽつりと呟くと、イギリスの手が止まった。
しばらく沈黙が続いた後、ミルをそっとクッションに寝かせる。
イギリス「……フランス」
フランス「なに」
イギリス「構っていないつもりはなかったんですけど、そう見えたなら……ごめんなさい」
真っ直ぐにそう言われると、フランスは途端にばつが悪くなって目を逸らした。
フランス「……べつに、本気で怒ってるわけじゃないんだけどさ。
ただ、イギリスが猫ばっかり見てると……ちょっと、面白くないってだけ」
イギリスは一歩近づくと、フランスの手を取って、小さく握った。
イギリス「じゃあ、これからは公平に撫でます。フランスにも、ミルにも」
フランス「……僕は猫と同じ扱い?」
イギリス「いえ、フランスは特別です。……撫でる以外にも、してあげられることがありますから」
フランス「……なに、それ……」
思わず照れて、言葉の後を濁すフランスの頬に、イギリスはそっとキスを落とした。
イギリス「……それくらい、わかってください」
フランス「……わかった。っていうか……もう、ずるいよイギリスは」
その瞬間、クッションの上で丸まっていたミルが、のそのそと立ち上がる。
「にゃあ」と一声鳴いて、二人の間にずいっと割り込んだ。
フランス「あっ、ちょ、ちょっと、今いい雰囲気だったじゃん!」
イギリス「……ああ、また君ですか、ミル……」
ミル「……にゃ。」
ふたりのヤキモチと、一匹のヤキモチ猫。
仲良しの家には、今日も甘くてちょっぴり賑やかな空気が流れていた。