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「こりゃァ困ったな……」
中原中也。現在、動けない状況である。
「お早う中島。新しい下宿寮はどうだ?善く眠れたか?」
『お蔭様で……こんな大層な寮を紹介いただいて…』
中原中也が取った行動といえば。
中島敦を頼ったのだ。
「そりゃァ好かった。ところで頼みが有るンだが…」
『?』
「助けてくれ。動けねェ」
『え?』
「おぉ、来たか」
「早速だが助けてくれねェか」
「え……何ですかこれ…?」
「なんだと思う?」
「…犬の群れに囲まれた中原さん」
「正解だ。助けてくれ」
そう、犬が数十匹程何故か着いてきたのだ。しかも中原は買い物次いでに寮に来たもので両手には袋なので退かすことも出来ない。
そして中原は犬が結構好きなのだ。下手に動くと何か踏み潰しそうで怖いのだ。
「よいしょ、よいしょ、」
どんどん犬を掻き分けて中原の足場を作る。
そして中原はふわっ、と浮いて、犬の群れの外に行った。
「最初から異能を使っていれば解決だったんじゃないですか?」
「いやなァ、何故か浮いても永遠に着いて来ンだよ。どっかのピ〇ミンかよと思ったわ」
「ピク〇ン…??」
街中の国道。
中々に賑わっている。
「ところで今日はどこへ?」
「あァ、手前に仕事を斡旋してやろうと思ってなァ」
「本当ですか!?」
「伝手の心当たりがあンだ、先ず探偵社に行くぞ」
「まァ、俺に任せろ。俺ァ重力遣い中原中也だ。伝手も多い。」
と云うと向かい側から国木田の大声が聞こえる。
「ここに居ったか中原!!!」
「この生粋の放浪者が!!」
「……国木田、今の呼び方はセンスどうかと思うぜ…?」
「五月蝿い!この非常事態に何をとろとろ歩いて居るのだ!!疾く来い!!」
「朝から元気なこッた。あンまり怒鳴ると色々あって痔に罹ンぞ」
「何!?本当か!?」
「しらねェけどな」
「〜〜ッ!!」
万年筆をボキッと折ってから此方に蹴り掛かる。
全て避けたがな。
「あの…非常事態って?」
またしても何も知らない中島(18)が此方に問い掛ける。
「そうだった!探偵社に来い!人手が要る!」
「あ?ンでだ?」
「爆弾魔が」
「人質連れて探偵社に立て篭もった!」
「嫌だァ……もう嫌だ……」
起爆用スイッチを持って怯えるような声を出している。
「ぜんぶお前等の所為だ……『武装探偵社』が悪いンだ!!」
「社長は何処だ!早く出せ!!でないと____」
「爆弾で吹き飛んで皆死ンじゃうよ!!」
「…ありゃァ怨恨だなァ、」
「…犯人は探偵社に恨みがあって、社長に会わせないと爆破するぞ、と。」
「仕事柄、ウチは色んなトコから恨みを買ッちまうからなァ、」
「……」
人質の横に置かれた爆弾を観察する。
「……多分だが、ありゃァハイエクスプロオシプ…高性能爆弾だな。此処を吹き飛ばすには充分に威力を持ってる。」
「爆弾に何か被せて爆風を抑えるッつー手もあるが……あの状態じゃァ行けるかどうか…国木田、行ってこい」
「は!?」
「俺は探偵社の中で一番顔と異能が割れてやがる。国木田が行け」
「…分かった」
「おい、落ち着け少年」
「来るなァ!!吹き飛ばすよ!!」
起爆用のスイッチを見せ付けるように出す。
そうするとサッと国木田は手を挙げる。
「知ってるぞ、アンタは国木田だ!アンタもあの嫌味な『能力』とやらを使うンだろ!?妙な素振りを見せたら皆道連れだ!!!」
「…流石に武装探偵社に私怨を持ってるだけあって、社員の顔と名前程度は覚えてるか……」
「……却説、残る手は…」
中島の方を見遣り、にたぁ、と笑みを浮かばせる。中島の顔色が悪くなった。
「や、やややややめなさーい!!親御さんが泣いてるよ!!」
新聞紙を拡声器の様な形にして、中島が犯人に呼び掛ける。
「な、何だアンタっ!!」
中島はその一声で過剰に怯んだ。
ヘタレだなァ、彼奴
____『社員が行きゃァ犯人を刺激しちまう。』
____『となりゃァ、無関係で面の割れてねェ手前が行くしかねェんだ。』
____『むむ無理ですよそんなの!第一どうやれば____』
____『犯人の気を逸らしゃ良いんだよ。後は俺らがやる。』
____『そうだなァ、落伍者の演技でもして見りゃァどうだ?』
思い切り中島が首を横に振る。
____『安心しろよ、この程度の揉め事なんつーのは朝飯前なンだよ』
「ぼぼ、僕はさ騒ぎをき聞きつけた一般市民ですっ!!いい生きてれば好い事あるよ!!」
「誰だか知らないが無責任に云うな!!みんな死ねば良いンだ!!」
「ぼ、僕なんか孤児で家族も友達も居なくてこの前その院さえ追い出されて!行くあても伝手も無いんだ!!」
「え……いや、それは」
「害獣に変身しちゃうらしくて軍系にバレたらたぶん縛り首だしとりたてて特技も長所も無いし誰が見ても社会のゴミだけど」
「ヤケにならずに生きてるんだ!!だ、だだだから____」
……中島、駄目人間の演技上手いな……
いや、あれ演技というか本心か…?
「ね!だから爆弾捨てて一緒に仕事探そう!!!」
「え、いや、ボクは別にそういうのでは___」
国木田に『今だ』と合図を送る。
「手帳の頁を消費(つか)うからムダ撃ちは厭なんだがな……!」
「『独歩吟客』」
そう云って素早く手帳の頁に『鉄線銃』と書き込み、頁を破る。
そして異能で手帳の頁を鉄線銃(ワイヤーガン)に変える。
そしてこれまた素早く狙いを定め、起爆用のスイッチを奪う。
「なっ……」
隙が出来た。
「ッ!」
一発爆弾魔の横腹に蹴りを入れ、組み伏せる。
「一丁上がりィ!」
心底楽しそうな声色と表情で言い放つ。
へな、と中島は未だ情けない。
「わっ…!?」
中島がよろける。
その拍子に倒れ、「ピッ」と何かが起動する音がする。
その起動音は正しく___高性能爆弾の物であった。
「あ」
中島は情けない声を出した後、叫ぶ。
「あぁああぁあぁぁぁああああぁ!?!?」
「爆弾!爆弾!!後五秒!?」
途端、中島は爆弾に覆い被さる。
「莫迦野郎!!!!」
起爆まであと三秒。
二秒。
一秒。
零秒。
爆弾は、起爆する様子を見せない。
「…え……?」
「やれやれ……莫迦とは思っていたがこれほどとは」
「自己肯定感が死ぬ程低いとは思ってたが…自殺行為は辞めろよ…」
「へ?…………え?」
爆弾魔と人質____基、谷崎潤一郎とナオミの兄妹の方を見る。
「あぁーん兄様ぁ!♡大丈夫でしたかぁあ!?♡」
「痛だっ!?」
「いい痛い、痛いよナオミ!折れる折れる__と云うか折れたァ!!」
「……へ?」
「小僧」
思考停止している中島に国木田が呼び掛ける。
「恨むなら中原を恨め。若しくは仕事斡旋人の選定を間違えた己を恨め」
「…まァ、そういうこッた、敦」
「つまりはこりゃァ…一種の、入社試験てなこッた」
「入社………試験?」
「その通りだ」
武装探偵社社長
福沢諭吉_____
異能力『人上人不造』
「「社長/!」」
「しゃ、社長!?」
「そこの中原が『有用な若者が居る』と云うゆえ、その魂の真贋試させてもらった」
「手前を社員に推薦したンだが…如何せん手前が区の災害指定猛獣ッつー事から保護すべきか社内でも揉めたンだよ。で、社長の一声でこうなった。」
「で、社長……結果は?」
国木田が社長に問う。
「……中原に一任する」
「……」
「採用だッてなァ。良かったじゃねェか。」
「つ、つまり…?僕に斡旋する仕事と云うのは、此処の…?」
「…武装探偵社入社、おめでとう、敦。」
「うふ、よろしくお願いしますわ!」
「い、痛い、そこ痛いってば、ナオミごめん!ごめんって!!」
谷崎潤一郎_____
異能力『細雪』
その妹_____
ナオミ
「ぼ、僕を試すためだけに、こんな大掛かりな仕掛けを?」
「この位で驚いてちゃァ身が持たねェぞ?」
そう云うと、まるで虫のように後ろへ飛び退く。
「いやいや!こんな無茶で物騒な職場、僕無理ですよ!!」
「ヘェ、手前本人が無理ッつーなら強制は出来ねェなァ?」
「ってなると手前が住んでる社員寮引き払って貰わねェとな」
「あと寮の食費と電話の払いもあるが……大丈夫かァ?」
笑い混じりにそう云うと、しょうがなく敦は入社する事になった。