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"なぁ、俺たちの関係ってなんなの?"
そう思い始めたのは今頃ではない。YouTubeやInstagramその他の配信など、俺がちょっとちょっかい出すと「おーいやめろよ笑」と笑いつつ流される。面白半分なのか、それでもさらに続けると「まじでやめろ。」って。
そんなに拒否することなくない?俺たちって恋人だよね?"一応"だけど…
柔太朗からちょっかい出したときは嬉しそうにしちゃって。柔太朗を笑顔にさせるためにボケたりしちゃって。お前俺の事笑顔にしてくれたことあった?
そもそも俺、お前の前で笑ったことある…?
そんなこと思うと余計に勇斗の俺に対する冷たさが引き立って、気持ちもだだ下がり
"やばい。泣きそう"
最近仁ちゃんが元気ない。原因はだいたい想像できるんやけど、勇斗と柔太朗のあのやり取り見てれば流石の俺でもどうなんかなとは思う。
「おーい柔こっちおいで〜」
「今行くから待って〜」
ほら、今でもこれ。何に関しても柔太朗。勇斗ほんまにそれでいいん?仁ちゃんをおいて。仁人の笑顔を見る日がないくらい、毎日今にも泣きそうな仁人を見る。そんな仁ちゃんを慰めるかのように話しかけることしか出来ない俺に腹が立つ。
今日も今日とて、仁ちゃんの心が休まるように、仁ちゃんが少しでも勇斗を忘れられるように話しかけようとしたが今日はなにか違う。部屋に入ろうとした仁人を見て、
"あ、泣くわ"
そんな俺の予想は見事に的中した。
結局気持ちに耐えきれず涙が溢れた。溢れた涙はどうにも止めることが出来ず、これがメンバーに知られたら流石に合わせる顔がなくなる。そう思いながら影で早く止まれと静かに泣いた。
「…ちゃん!…んちゃん!」
自分の泣き声で周りの音が聞こえない。誰かが俺を呼んでいるのだろうか。
「仁人!」
今度ははっきり聞こえた。舜太が俺を呼んでいたらしい。目の前にいる舜太は涙でぼやけていても悲しい顔をしていることだけはわかった。すると、舜太が俺の顔を両手で優しく包み込むように触れ、指で涙を拭った。
「1人で泣かんといて。俺がいるから。そばに居てあげるから…」
なんでいつも舜太は俺の欲しい言葉をくれるんだろう。俺と舜太の脳はテレパシーでも繋がっているんだろうか。その言葉を聞きたいのは舜太からじゃないのに、何故か舜太が来てくれて、言葉をかけてくれて安心している自分がいる。
息を殺すように泣いている仁人を見つけ、心よりも先に体が動いていた。静かに泣いて…きっとこれも周りに迷惑をかけないよう仁人なりの優しさだろう。いつもメンバーを気遣って、自分のことは後回しにして。誰よりも仁ちゃんが優しいのは知ってるよ。けどもう俺の心も耐えられそうにない。なんで勇斗を選ぶん?自分を悲しませるような人を…
「ねぇ、仁ちゃん。俺じゃダメなの?仁ちゃんの隣」
舜太からの言葉に驚きは無かった。むしろ自分も"舜太だったら…"と少し気持ちが揺らぐことがあった。
"きっと舜太だったら、冷たい目じゃなく太陽のような笑顔で俺を見てくれるだろう"
"きっと舜太だったら、素っ気ない態度じゃなく優しい心で俺を包んでくれるだろう"
と。
「…俺も舜太がいい。もうこれ以上傷つきたくないわ…」
そう返事した俺に舜太はまた優しく俺を包み込んだ。
その後おれは"恋人"との最後の挨拶として連絡を入れた。
『勇斗、今日でこの関係も終わりにしようか。
俺はお前を笑顔にすることが出来なかったし、お前も俺を笑顔にした事がなかった。柔太朗に向ける笑顔が俺だったらいいのにと心の中で思ってても、きっとお前の隣は柔太朗なんだと気付かされるばかりで。今まで何も出来なくてごめん。
これからは"メンバー"として支えさせてください。』
久しぶりに仁人から個人連絡がきたと思ったらその内容に目を疑った。
「は…?これからはメンバーとして…?」
「勇斗どうした?」
そう柔太朗の言葉を置いて俺は仁人の元へ走った。(これが最後?仮に最後だとしてこの終わり方でいいのか?)俺の気持ちは今までにない焦りでいっぱいだった。
やっと舜太と話している仁人を見つけた。と思ったら仁人は今まで俺に見せたことの無い幸せに溢れた笑顔をして話していた。(お前ってそんな笑顔すんの…) 俺は言葉を失った。伝えようとした思いも伝えられなかった。いや、伝えてはいけないと思った。
どうにもできない気持ちを抱えつつも俺はスマホを開いた。
『俺もごめん。今まで辛い思いさせてたと思う。これからは俺も"メンバー"として支えていこうと思う。
今までありがとう。仁人の幸せを願ってます。』
俺たちは"メンバー"の関係に戻った。一緒に練習しステージに立ち、励まし合う関係に。これで良かったのだと自分自身に言い聞かせた。
今の俺にはどんな事でも優しく見守ってくれる恋人がいて、これが幸せなのだと感じる日々。だから勇斗も自分の幸せを見つけて欲しい。本当の幸せを。
「あなたの幸せを心から祈っています。」
end.