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遊びに誘っていいのかもわかんねえし。
そんな俺の心中などつゆ知らず、ハルは満足気に微笑んでお礼を言うと
タクシーを拾うので、そこで解散する他なかった。
◆◇◆◇
帰宅後…
俺はベッドに体を沈ませてため息をつく。
……疲れた。でも楽しかった。
ハルも楽しんでくれてたと思う。
俺ってこんなんだったっけ……。
いや、これが普通か?もう自分でもよくわからなくなってきた。
すると、スマホの着信音が鳴る。
画面を見てみると、ハルからだった。
ハルから?!と内心舞い上がりながらも、平常心を装って「もしもし?」と出ると
「あ、あっちゃん?今大丈夫?」とハルの声。
「大丈夫だけど」と答えると、少し間を置いてからハルは話し始める。
「あのね、ちょっと親友のよしみで、お願いがあるんだけど…」
(く~~っ…親友…親友だってよ…!!…本当は恋人がいいけど、親友と言われるだけでもこんなに喜んでんのか俺……っ)
「なんだよ、お願いって」
「実は今度僕が高校の頃から推してるアニメキャラ、カニカニくんのコラボカフェが駅前近くでやるらしいんだ…!」
「あー…それって確か高校の頃お前がどハマりしてたやつだっけ?なんだよ、それで俺に着いてきて欲しいってことか?」
「うん、ひとりじゃ中々いけないし…あっちゃんがいればなにかと心強いかと思って!」
(?!可愛い!なんだこいつ!行くに決まってんだろもうデートだろ実質!!)
「ま、暇だし別にいいけど」
「ほんと?!ありがとうあっちゃん!!それじゃあまたあとで日時とか送るね!」
「おう」
通話を終えると、俺はガッツポーズを取った。
「っしゃあああぁ!!!コラボカフェに感謝!これで自動的にハルと2人でデートができるじゃねぇか!!?」
と、いうことだったのに…
「まさか沖口もいるとわな」
「そりゃこっちのセリフだっつーの!なんでお前がここにいんだよ?!」
翌週、待ち合わせ場所のカフェに入ると、なぜかそこにはハルだけでなく、後藤の姿があった。
「で?こりゃどういうことだ」
三人で席に座ると、ハルが心底嬉しそうに話す。
「いや、実はさっきそこでたまたま会ってね!なんと後藤くんもカニカニのファンだったんだよ~!!」
「あー…てかこれ、俺いる意味あるか?」
「そ、そうなっちゃうよねやっぱ…」
「あぁ、沖口はカニカニ興味無い感じ?」
「まあ、こいつに勧められてアニメ見てはいたけど、グッズ集めるほどでは……」
何だこの雰囲気。すっげえ一線感じるんだけど。
ここまで来て、ハルとデートできると思ったから来たのに、なんだこれ
こいつら2人で仲良くカフェでオタ活するんか??
「そうだね、あっちゃん…!僕が昨日無理言って誘ったわけだし、帰りたかったら全然…!!」
「ここまで来たら帰らねぇよ、俺に気使う暇あったらメニュー制覇すっぞ」
「あっちゃん……っ!!」
キラキラと目を輝かせては、嬉々とした表情を浮かべるハル。
「なんだ、実は沖口もカニカニ好きなのか?」
その横でニヤっとしながら俺に訊いてくる後藤に「違ぇわ!」とつっこむ。
そこに丁度ウェイトレスさんが水とお絞りを持ってくる。
俺たちはメニューと睨めっこをした後、食べれる分だけの注文をした。
「全制覇は無理かもだけど、このカニカニカレーは食べたい!」
「あとこっちのカニカマ丼もよくないか?!」
「わっ!可愛い!頼も頼も!!」
2人は大いに盛り上がっている。
かく言う俺は、目を細めてメニューと睨めっこをしながら、なににしようかと頭を悩ませる。
(つーか、アニメのモチーフがカニなだけあって、カニしかねぇな…意外と美味そうだけども)
「じゃ、俺はこの…カニカツカレー?にするわ」
「…って、それカニカニくんが街の生贄になろうとするあのシーンの再現じゃない?!」
「なっ、正しくそうじゃないか!!」
「えなにそれグロ、他のにすっかな」
「もしあっちゃんが食べれなくても僕と後藤くんが責任もって食べるから!注文しよ?!」
「そ、そう。てかあれってそんなグロアニメだったけ」
そんなこんなで各自の注文を済ませ、数分が経った頃。
食欲を唆るカレーの匂いと共にメインディッシュが運ばれてきた。
「うわ!超美味そう!!」
「早く齧り付きたいな」
「でけぇな」
2人も目をキラキラさせながらそのカレーを眺めていた。
ウェイトレスが去っていくと、三人揃っていただきますと一言。
食べようとスプーンに手をかける。
隣の二人があまりにも幸せそうにそれを頰張っているのを見て、俺も思わず喉を鳴らした。
そして、意を決したように一口掬って口に入れる。
(は?うっっま…………)
カレーは程よい辛さと旨味があって、そのルーにはカニカマと卵も入っているそうで
それがいい具合にマッチしていてめちゃくちゃ美味い。
そこからはもう止まらなくなり、ガツガツと食べ進めていった。
そうして完食。
結局、1番デカかったカニカマ丼は後藤が食ったし、なんならハルも追加注文して食った。
2人は終始満足そうな表情をしていた。