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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第11話 〚退かされた理由〛(西園寺恒一視点)
追い払われた、
という感覚はなかった。
ただ、
「立つ場所がなかった」。
それだけだ。
廊下を歩きながら、
さっきの光景を反芻する。
白雪澪。
笑っていた。
あの笑い方は、
前にも見たことがある。
無防備で、
未来を警戒していない顔。
(……だからこそ)
俺は、
近づかなかった。
触れずに、
様子を見るだけ。
それなのに——
海翔は、気づいた。
しかも、
迷わず前に出てきた。
「何してる」
あの声。
短くて、逃げ道を作らない言い方。
(俺が、敵だと分かってる)
いや、違う。
“危険”だと判断されたんだ。
それが、
一番、腹が立つ。
俺は何もしていない。
声もかけていない。
触れてもいない。
それでも、
排除された。
(……なぜだ)
答えは、
すぐに出た。
距離。
海翔は、
澪との距離を把握している。
近づきすぎず、
離れすぎず。
その距離を、
“守っている”。
俺は、
その外側にいた。
だから、
邪魔だった。
(信じてる、ってやつか)
鼻で笑いそうになる。
信じる?
中学生が?
そんな曖昧なものに、
澪を任せている?
でも——
澪は、守られていた。
予知がなくても。
心臓が黙っていても。
誰かが、
前に立っていた。
(……違う)
それは、
守りじゃない。
“囲い”だ。
自分だけが理解者だと思い込んで、
他を遠ざける。
よくある話だ。
(だから、壊せる)
海翔は、
俺を退かした。
それはつまり、
澪の選択肢から、俺を消したということ。
でも。
選択肢を消す行為は、
いつか必ず、反発を生む。
澪は、
考えるようになった。
選ぶようになった。
その時——
一つしかない道は、
不安になる。
(俺は、まだ外にいる)
完全に拒絶されたわけじゃない。
近づけないだけ。
なら、
別の角度から入ればいい。
直接じゃなくていい。
正面じゃなくていい。
澪が、
「自分で選んだ」と思える形で。
俺は、
歩きながら小さく息を吐いた。
退かされた理由は、
もう分かっている。
海翔は、
壁になった。
だから次は——
壁の外から、揺らす。
壊す必要は、
まだない。