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side.若
涼ちゃんの連絡があってから、全然帰って来ない。いつもはダッシュで帰ってくるのに、遅すぎる。
心配になったので、元貴と駅まで迎えに行く。
なにもありませんように。
若井「元貴、いた?」
大森「いない…絶対もう着いてるはずなんだけどな」
若井「あっちのロータリー行こっか」
大森「うん、そうしよ」
小走りで反対側のロータリーに行く。なんだか胸騒ぎがした。
藤澤「元貴っ!滉斗っ!」
知ってる声が、俺と元貴の名前を呼んだ。悲痛に、泣き叫んでいる。
はっと振り返ると、変な奴に絡まれてる涼ちゃん。
大森「おい、何してやがる?」
若井「離せ、ジジイ」
涼ちゃんが困惑した表情でこちらを見つめる。目から大粒の涙が大量に流れている。
震えるほどの怒りが体中を駆け巡って、目の前が真っ赤になる。
元貴とダッシュで駆け寄った。
大森「離せ」
おじ「それはできないね。この子は今から俺とホテルに行くんだ」
若井「離せっつってんだろ!」
おじ「嫌だね。さあ坊ちゃん、行くよ」
涼ちゃんが泣きながら抵抗したけど、俺たちが手を掴む前に車の中に入ってしまった。
窓をたたくと、運転手さんがロックを解除してくれた。
涼ちゃんに絡みついたジジイの腕を足で蹴る。そのまま涼ちゃんを抱きかかえてタクシーから離れた。
元貴がジジイの胸倉を掴んでぶちぎれている。
震えている涼ちゃんを抱きしめると、ふっと力が抜けた。見ると目を瞑っている。
怖かったね、ちょっと待っててね、と声をかけてふわふわの髪の毛を撫でた。
俺の上着の上に寝かせて、元貴のところに行く。
ジジイはタクシーの外に引きずり出されていた。
元貴が叩きつけるように地面に落とす。さっき通報すると、すぐに来ると言われた。
それまでにこの怒りをどうにかしないと。
おじ「彼のこと、大好きなんだね…。君たちが抱いてるのか?」
大森「黙れゴミ」
おじ「いや、残念だったよ。ハメ撮りすれば高くついたのに」
若井「黙れ。殺すぞ」
怒りで涙が出たのは初めてだった。こんな汚いやつに、こんなゴミに涼ちゃんは…。
殺意が沸いて、体中が煮えくりかえっている。
おじ「嫌だね。彼、顔がいいね。君らもそれが好きなんだろ?」
大森「っ!黙れ!」
元貴が大声をあげてジジイに向かってこぶしを振り上げた時、鋭い警笛が鳴った。
警察「全員動くな。…確保しろ」
元貴を後ろから抱きしめて、ゆっくり手を下ろさせる。元貴の嗚咽が聞こえて、俺もよく前が見えない。
おじ「ああ、最後に。」
若井「あ”?」
おじ「彼、とても弱っちかったよ。トレーニングが足りないんじゃないか?」
大森「黙れ」
おじ「はっ。怠け者なんだな。まったく、良い動画が取れなくて残念だったよ」
体中から血の気が引いて、心臓がバクバクと音を立てる。
やめろ、落ち着け。
頭ではわかっていたけど、もう遅かった。
ジジイの頭を狙って拳を握りこむ。
若井「死ね”っ”!」
そのまま駆け出した。涙でもう何も見えなくて、憎しみだけが頭を支配する。
ぐちゃぐちゃにして、引き裂いてやる。
若井「殺す”っ”!」
大森「若井っ!」
ヒーローだって人間だもん。
コメント
2件
辛すぎます…😭まぁヒーローも人間ですものね、怒りを抑えるのは難しい…