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第四話 サプライズ
事務所を出ると、路地裏の空気がいつもより重く感じた。手に握った紙の重みも、心なしかずっしりしている。
「さて……」
男は後ろからついてきて、無表情で言った。
「最初の仕事だ」
その言葉に、俺の胸がぎゅっと締め付けられた。仕事だ、復讐だ、こんなものが“仕事”として進んでいくのか。けれど、俺の気持ちにそれを止める余裕はない。
「俺が壊したいのは……」俺は静かに言った。これまで感じた怒りと痛みを、何度も言葉にしてみたかった。でも、こんなところで出すわけにはいかない。
「俺のすべてを奪ったアイツだ。名前も顔も、信じてた人間も、どれもこれもアイツに奪われた。恋人も、家も、未来も……全部だ」
言葉にするだけで、胸の奥が焼けるように痛い。
「俺はそのせいで、あの日からずっと死んでるようなもんだ。心も、感情も、もうあいつの手のひらで弄ばれてるんだ」
その言葉が、俺をさらなる深みに引き込むような感覚を覚えさせる。男はしばらく黙って、俺の言葉をただ聞いている。
そして、男の顔に微かな笑みが浮かんだ。それは冷徹で、どこか楽しんでいるような、興味深く見ているような笑顔だった。
「それがお前の――復讐か?」
その言葉に、俺は少し息を呑んだ。でも、ここで引き下がるわけにはいかない。冷静に、そして確信を持って言葉を返す。
「ああ、俺なりのアイツへの……サプライズだ」
その瞬間、男の笑みがほんの少し広がった気がした。俺がどれだけこの復讐を深く考えているか、男には分かっているのだろうか。だが、俺の口調や目の奥にこもる決意に、確かな狂気を感じ取っていたかもしれない。
「それが復讐だ」男は静かに言った。
男はポケットから名刺を取り出し、無言で俺に差し出す。俺はその名刺を受け取る。
「これを持っていけ。最初の場所だ」
「これだけか?」俺は少し驚いて聞いた。
男は冷静に俺を見つめ返し、口元を少しだけ緩めながら言った。
「もう、復讐は始まってる」
その一言が、俺の胸を突き刺す。俺が復讐を誓ったその瞬間から、すでに何かが動き出していたのだ。
男はその後、俺に背を向け、歩き始める。俺も名刺を握りしめ、しばらくその場に立ち尽くしてから、一歩踏み出した。
コメント
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復讐をサプライズっていうのいいな… 名刺渡してるのかっこいいな! これからどうなるんだ!?続き楽しみすぎる✨️!