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着地した地点はいわゆるエントランス的な広場らしく、真ん中に立ってる。
街を歩き進めると、自分と同じような外見の人もちらほらいて、少し安心した。
「一応メインストリートだから、ここでなんでも揃うぜ。」
あそこは本屋だのピザ屋だの、意外とちゃんと説明してくれる。
「ジャンヌとかにも連絡しとくからよ。まぁー一応、相棒も女だしな。一応。」
……何回も言うな、はっ倒すぞ。
というか、女性扱いなさすぎて悲しい。
道ゆく可愛い女性ヒーローたちに、サーティーンがニヤニヤしながら次々絡んでいく。
「よぉ、美人さんたち〜。俺っちの相棒と一緒にいるけどさ、今度デートしない? 俺っち、絶対楽しい夜にしてやるぜ? へへっ、想像しただけでワクワクすんな〜」
「へぇ、いい体してるじゃんか。今度一緒にトレーニングしよ🩷 俺っち、優しく……いや、ちょっと激しく教えてやるよ〜。どう? 俺っちのテク、試してみたくね?」
ニコニコ笑顔で、肩に手を回したり、ウインクしたりしながら声かけてる。
みんな軽くあしらって去っていくけど……サーティーンはヘラヘラしながら戻ってきて、私の肩をポンと叩く。
(……なんか、胸がチクチクする。嫉妬? まさか。でも顔が熱くなって、視線を逸らさずにはいられなかった。唇を軽く噛んで、言葉を飲み込んだ。)
「ったく、相棒。俺っちが人気者すぎて大変だわ〜。
ま、お前は俺っちの相棒だからよ、他の女なんか相手にしねぇから安心しろよ?」
……え、何その上から目線。
私は思わず視線を逸らしたまま、胸のざわつきを抑えきれなかった。
チャラいし失礼すぎるし……他の女性ヒーローたちにニコニコ絡んでるの見ると、なぜか嫌な気持ちになる。
でもその言葉に、胸のチクチクが少しだけ溶けていく気がした。
チャラいけど、目が少し優しくて……結局、甘んじて受け取っちゃう自分がいる。
サーティーンは私の表情をチラッと見て、ニヤッと笑みを深めた。
「へぇ、かわいいじゃねーか。おいおい、そんな顔すんなよ……俺っち、困るわ〜。」
(……困るって、こっちが困ってるのに。)
でもその言葉に、胸のざわつきが少しだけ溶けていく気 。
「ま、適当にくつろいでくれや。」
あれよあれよと街の説明をしながら進み、やっとサーティーンの根城に案内された。
黒を基調としたシンプルな部屋。
どさっとソファーに腰掛けた彼を横目に、とりあえず隣に座る。
そもそも、なぜ私はここに来れたんだろう。
アニメで見たように、サーティーンの鎌の空間移動能力が関係してるんだろうけど……。
考えれば考えるほど、よくわからない。
チラッとベッドでくつろぐ彼を見る。
「まぁ、帰れるかどうかは知らねーけど、俺っちも協力してやるからさ。
こまけぇこと気にすンなって。」
そう言って、ガシガシと雑に頭を撫でる。
最初は乱暴でびっくりしたけど……指先が意外と優しくて、髪をくしゃくしゃにしながらも、ちゃんと力加減を気にしてるのが伝わってくる。
ヘラヘラした笑顔だけど、目が少し柔らかくて、妙に安心する。
いまいち女扱いされてないけど……彼なりの慰めだと思うと、ここは甘んじて受け取ることにした。
(撫でられる感触が温かくて、現実じゃこんな優しさ、なかったかも……)
……正直、現実に戻るなんて、まだ考えたくない。
家族とのギスギスした空気、仕事で積み重なるミスとプレッシャー。
毎日が重たくて、息が詰まりそうだった。
でも、この世界に来てから……少しだけ、肩の力が抜けた気がする。
全部を忘れさせてくれるわけじゃないけど、
ここにいると、明日も頑張れそうな気が、ほんの少しする。
友達に会えないのは、やっぱり寂しい。
LINEの通知が来ない日々が続くと思うと、胸がキュッとなる。
一緒に笑った思い出とか、くだらない話で夜更かししたこととか……
それが遠くなるのは、怖いくらいに寂しい。
それでも今、
大好きな最推しがすぐ隣にいて、 乱暴そうで優しい手で頭を撫でてくれている。
この温かさが、こんなに近くにあるなんて。
このまま、ずっと……とは思わない。
でも、もう少しだけ、この時間が続けばいい。
夢なら、急に覚めないで。
せめて、もう少しだけ……。
思わず、サーティーンの袖をそっと掴んだ。
彼は一瞬動きを止めて、
「……おいおい、何だよその顔。
また死んだ魚みてぇな目してんじゃねーよ。」
小さく笑って、
でも手を振り払わずに、
もう片方の手でまた頭をくしゃくしゃに撫でてくれた。
「……相棒だからな。
俺っちが、ちゃんと面倒見てやるって言ったろ。 ……ま、帰りたくなるまで、好きにしろよ。」
その言葉が、胸の奥にじんわり染みて、
涙がこぼれそうになるのを、必死で堪えた。
(幸せすぎて、怖いくらい。でも……ありがとう。)