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みるみるうちに少女の身体は裏路地へと吸い込まれていく。微かだが、その奥には腐敗臭が漂っていた。少女は恐怖で混乱した。とても冷たい壁に突き飛ばされると、男がポケットから取り出したナイフを少女に向かって構えた。
「嬢ちゃんは、アンリー・サルギスだね。悪いがここで死んでもらう」
「終わりだ」
と、急に少女の身体の中から非常に冷たい声がした。瞬間、銀髪の青年が少女の身体から飛び出した。
同時にザンッっと、鈍い音がしたと思ったら、男の首が真横にずり落ちた。
少女は銀髪の青年の黒いロングコートによって、目の前で起きた男の首と胴体が分離するという凄惨な場面は見ずに済んでいた。
「さあ、あっちへ。ノブレス・オブリージュ美術館へ戻るんだ」
少女に、なんとも優しい声で言った銀髪の青年は、銀の大鎌を握り直した。途端に、周囲の空気がこの世界にあるどんな雪や氷よりも冷たくなった。
これまでに漂っていた。辺りの腐敗臭の元が姿を現す。
路地裏を埋め尽くすかのようなゾンビがどこからか、うじゃうじゃと溢れでてきた。