「シャンディはデートをしたことがないのか?どうして?」
キール様が少し動揺している。
「いままでペイトン様とお会いしたのはご挨拶を入れても数回ですし、会う時は我が家でお茶をするぐらいで。それにわたしは王都に3ヶ月しかいなかったので、あまりにも時間がなくて交流を深めることも難しくて…」
おふたりが ああ… と少し納得をしたような相槌をうつ。
わたしはペイトン様とデートはしたことがないけど、ペイトン様はよくデートをされているようだった。
去年の今ごろの婚約してすぐの頃に、偶然に街でデート最中のペイトン様を見かけたことがある。
わたしは、武器の補充で馴染みの武器工房を訪れた帰りに偶然にも街でペイトン様を見つけた。
しかし、知らない綺麗な若い女性と腕を組み、楽しそうに歩いておられたのよね。
恋愛小説のように「何をしているんですか!」と詰め寄る勇気もなく、ただ茫然とその様子を眺めていた。
ショックというよりは「やっぱりね」という感情が先だったように思う。
だって、あんな見目麗しいペイトン様がわたしのことを好きになってもらえるとは最初から思えなかったから。
そして、あの後は要らぬ好奇心でついつい後をつけちゃったのよね。
残念ながら、見てはならぬものを見たと思う。
だから、ペイトン様とのデートの思い出と聞かれたら、「知らない女性とデートをしているペイトン様の後をつけて行ったことがある」となる。
これを正直に目の前のおふたりに話すと驚くだろうし、きっと「デートの後をつけるなんて」と眉をひそめられそうなのでここでは伏せておこう。
「では一度王都の街に出て、人気店で食事をし、ショッピングをして流行を学び、そしてその体験から導き出される「流行の最先端」を3人で考えよう」
クリス殿下が言うと、なんか難しい研修のような感じがするけど、要は「王都の街に遊びに行く」ですよね。
「それ、いいですね。ついでにデートの練習も兼ねるってのはどうでしょう?目標は「スマートなエスコートと楽しい会話」です。特にクリスは気合いを入れてください」
キール様は以前にクリス殿下がなにか失敗したことがあったのか苦笑いだ。
「わかっている。デート中に会話できるように努力するよ。シャンディも協力してくれ。私はアドニスとのデートでほとんど会話が続かないんだ」
ボサボサの髪を照れ隠しのようにガサガサとされる。
きっとクリス殿下は、アドニス様のことが好きすぎて、アドニス様を目の前にされると力んでしまって、緊張されてしまうのかな。
「もちろんです!わたしも王都で流行のものを見たりするショッピングをしたいですし、それにデートの練習には興味津々です」
まずは王立学園の休日に、キール様の指導で「流行の勉強」「デートの練習」をすることとなった。
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