目が覚めると、知らない天井があった。
と、私が目覚めたことに気づいたらしい少女は、「お嬢様が目覚められました!」と言いながら部屋を出ていった。
誰だろう。侍女服を着てたけど……。
それにしても、ここはどこ?知らない部屋に、ふかふかの上質なベッド……。
それでも、伯爵家ではないことは分かった。
とさっきの侍女服の少女と茶髪の少年が部屋に入って来る。
少女は私に歩み寄り、優しく微笑んだ。
「お嬢様、お加減はいかがですか?」
彼女の問いかけに私は咄嗟に「大丈夫です」と答える。
「良かった」と安堵したように笑みを深める彼女に、少年は眉尻を下げて笑った。
「こらこらリエル。自己紹介は?」
その言葉に、彼女ははっ、と思い出したような顔をした。
私の真正面に立つと、自分の侍女服の裾を持ち上げ一礼する。
「改めまして、お初にお目にかかります。私はリエル・キジャックと申します。これより、お嬢様の専属侍女としてお仕えさせていただくことになりました。これからどうぞ、よろしくお願い申し上げます」
……うん?ちょっと待て。
「あの、専属侍女ってどういうことですか?それに、ここはどこなのですか?」
すると、二人ともきょとんとした顔をして、ああ、と納得したような顔をした。
「ここはフィアディル公爵邸だ。お前は公爵家に戻って来たんだ」
少年が口を開く。
ああ、そういうことか。これからはここで生活するんだ。……良かった。戻って来られたんだ。涙がじわりと滲む。
と、少年が自分の顔を指差した。
「それよりリリアーナ。僕のことは覚えてないのかい?」
え、全然覚えてない……。
私は彼の顔をまじまじと見つめる。
……あ!もしかして……。
「お兄様?」
すると彼は満面の笑みで頷いた。
大人っぽくなってたから全然気がつかなかった。
その人は、かつてアカデミーに追いやられた兄--クライヴ・テイル・フィアディルだった。
「お帰りなさい、お兄様」
「ああ、ただいま」
私は兄ににっこりと笑う。
すると兄も笑い返してくれた。
それから私たちは、色々なことを話した。
本来十八歳で卒業するはずのアカデミーを、飛び級に飛び級を重ね、兄は十五歳で卒業したこと。今までどんなことをして過ごしていたのかということ、親戚がマーティアン伯爵家だけだったので、兄が正式に公爵になったこと。たくさん話した。
そうして私たちは、穏やかな時間を過ごした。
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展開早すぎて草