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[三澄side]
「中堂さん!?中堂さん!!!」
顔を青白くさせた彼は、腹の中のものを全て吐き出して力尽きたように眠りについた。中堂さんがやけに熱をもっているように感じて、わしゃわしゃと前髪を掻き分ける。そして、汗ばむ額に手を置いた。
「何これ 、絶対40℃超えてるよ …!」
「と、とりあえずソファに!!」
東海林は怖がっていて、久部くんは吐瀉物が入った袋を持っている今、この大柄の男を運べるのは私と神倉さんしかいない。しかし、神倉さんは先に行ってソファを整えている。つまり、私が持ち上げろと…?決心して中堂さんを背中におぶる。
意外に軽々と持ち上げることができたことに驚いて後ろを見ると、中堂さんが小さく唸った。
「…お疲れ様でした」
コトン 、と音を立てて湯気が立ち上るコップが机に置かれる。
「ありがとうございます。…あの、神倉さん」
「何でしょう」
「中堂さん、まだ何か隠してますよね」
今日中堂さんがおかしかったのは、昨日木林さんと話してたことと必ず関係がある。だが、その前に神倉さんが何も知らないわけがない 。もう終わったはずなのに、なぜ木林と話していたのか。
「…私から話せることはありません 。」
「中堂さんの症状は迷走神経反射と言って、強いストレスにより引き起こされるものです。放っておいたらどうなるか …っ」
「何か知ってるなら話してくだ──」
「おい」
「…中堂さん 。起きたんですね」
起き上がろうとする彼を押さえつけ、自分自身の症状分かってますよね、と圧をかける。渋々従った中堂さんを見て溜息をつく。
こんな状態になるまで気づかないなんて…医者としてどうなのだろうか。まずは自分を責めた。
いや、元はと言えば自身の症状がわかった時点でこの人が休めばよかっただろう。この人も一応医者だ。
タオルケットに包まれた彼がこちらを見てくる。くるくるのくせっ毛の間に映る濁った瞳は、このオラ男をやけに幼く見せる。
「三澄 、暑い 。」
よく見たら物凄い汗の量だ 。今日2度目の、前髪を掻き分け額に手を置く動作をしてみると思ってもいない反応が返ってきた。
すり
普段は人に寄り付かない猫が他人の手を大切そうに抱えている。
「…このまま 動くな」
困惑しながら返事をする。少しでも冷たいものを近くに置きたいのだろう。
「あの 、!」
「三澄さん 、これ良ければ …」
いつの間にか買い出しに行っていた久部くんが帰ってきていたらしい。持っている氷嚢から水が滴っている。
疲弊しきっている私はすぐに久部くんから氷嚢を受け取り、抱えていた手と置き換えた。
「 ふ、つめてぇ」
彼はそう呟いて眠りについた。少し笑った気がしたのはきっと、気の所為だろう。
そして流石に限界を迎えた私は、後ろに気配を感じながらも意識を手放した。