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耀聖(ようせい)
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耀聖(ようせい)
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【クーン城近く・精霊の森】
貴族学校の生徒達は妖精見学の為、クーン城近くの森にいた。
「スゲェ美人だな」
男子生徒たちは皆、元女王であるアデールを間近で見て、溜め息を漏らす。
羨望の眼差しを一身に受け、アデールは慣れたように笑みを返す——。
「妖精に会えたら、優しく声を掛けてね」
アデールは精霊との相性も良く、何よりこの森の管理者だ。
案内にはうってつけなのだ。
「アデール様。捕まえたら駄目ですよね」
「捕まえることはできるけど、間違いなく逆襲されるわよ。怪我しても知らないわ(笑)」
捕まえようとすれば、忽ち数百匹が結集して、完膚なきまでに攻撃されると、アデールが念を押すと、学生たちは皆、青ざめていた――。
「見ることに専念します」
「そうしなさい」
まあ、妖精は気まぐれなので、見られたらラッキーだ。
とにかく、森に入ることになった――。
「さぁ、行きましょう。私が、あ……先頭で行くわ」
鼻の下を伸ばす男子達を尻目に、サラは先頭で森の中に入ってゆく。
いつも気軽に森へ入っているサラは、うっかり「案内する」と言いそうになる。
しかし慌てることなく取り繕い、森の奥を目指した。
すると――。
パタパタと羽ばたく音が聞こえてくる——。
「ステイシーは赤い髪すきなの?」
ズンズンと進むサラの前に、ふらりと妖精が現れた。
以前、加護をもらったときに出会った風の妖精が、サラの偽装を見破って話しかけてきた――。
「シー!名前を呼んじゃ駄目!サラと呼んで!」
「そうなの? あー、あの男から逃げてるんだ」
妖精が指差す先には、ウルフがいた。
彼は別の妖精を見つけて晴れやかな顔をしており、こちらの会話には気づいていない。
そして、心が読める悪戯好きな妖精は、ニヤリと口角を上げ、ウルフに近寄る——。
「あなた懐疑心と好意が入り混じってるね!」
「なっ!」
パタパタと羽をはためかせる妖精は本当に美しい。
しかし本心をいきなり読まれて、ウルフは狼狽える——。
「男子アルアルー」
――ッ
歯に衣着せぬ物言いをする妖精は、完全に揶揄っていた。
想像とあまりに違いすぎる行動に、ウルフは困惑しつつ、アデールに助けを求めた——。
「アデール様、妖精はこんなにフランクなんですか」
「貴方の雑念が面白いのよ、足掻いても無駄よ(笑)」
「……」
なんとも言えない表情をするウルフ——。
サラは心の中で「ナイス!」と呟きながら、距離を置く。
すると妖精は褒められたと思ったのか、フラフラと飛びながらサラの元に戻って来た。
「王子の興味は、サラの意外性……」
「脳筋好きなの? はぁ〜碌でもない奴ばかりに絡まれるわ〜」
なんとか乗り切ったサラは苦笑いしながら、集合場所に向かうのだった……。
※※※※※※
【シルヴァーナ・レイク・グランドホテル】
このホテルは、ルドルフの娘ジェシカが、数年前に宿泊需要の増加を見込んで開業したものだった。
その際、アーレイから「高級ホテルなら良い場所を提供する」と言われ、美しい湖と雄大な自然が広がるこの場所に建設した。
ちなみに、この場所は道路から直接アクセスすることができない。
学生たちは大型シャトルを使い、今まさにホテルへ降り立とうとしていた——。
「サラ、久しぶりに来たけど、めっちゃいいホテルだね(笑)」
「そ、そうですね、セシリア……(汗)」
シャトルに乗り込むと、なぜかセシリアが隣に座ってきた。降りるときも当然のように隣に並んでいる。
一緒にお泊まりした日のことを、セシリアがうっかり口にしないかと、サラはヒヤヒヤしている。
「さぁ、一緒にご飯食べましょ。最近、お肉食べてるのよ!」
「そうですねー(棒)」
ウルフは他の女子に囲まれており、サラに近づけない。
それを良いことに、セシリアはサラにベタベタと付きまとっていた。
セシリアが楽しんでいるのは間違いない——。
(ウルフが来ないから、まぁいいか)
セシリアの攻撃に諦めたサラは、結局、一緒に食事をし、食後のレクリエーションも共に過ごすことになった。
ちなみにウルフは、貴族令嬢たちに取り囲まれ、サラと一言も話さないまま就寝時間を迎える——。
「明日の朝は早朝出発です。各自、寝坊しないように」
「「「はーい」」」
さあ、いよいよ明日は実地訓練だ。
引率の教師が声をかけると、皆、大人しく部屋へ入っていくのだった。
※※※※※※
【惑星クーン・魔獣の森】
空が白み始める時間帯。
戦闘服を身にまとった学生たちが、魔獣の森の奥深くに姿を現す。
皆、緊張した面持ちで訓練用のライフルを手渡されていた。
「さぁ、ルールは至って簡単だ。小隊を組み、索敵、発見、攻撃。それだけだ」
「……(汗)」
学生の中で、実戦経験がある者などいない。当然のように皆は緊張で顔を強張らせていた。
ただ一人、サラを除いて——。
「木剣ないのかな……ないよね……これで殴ればいいか」
訓練用ライフルを横に持ち、まるで棍棒を扱うように振り回すサラ——。
「おい!」
様子を見ていたキースが、思わずツッコミを入れる。
サラは間違いなく、接近戦では銃床でぶん殴るつもりだ。
「えー、だって撃つより突っ込んだ方が早いし」
「脳筋の俺でも、その考えには至らない……」
あまりの脳筋っぷりに、キースはジト目になる。
もちろん、中身がステイシーだということも知っている。
(アーレイ……娘がここまで脳筋だって知っているのかな)
「……」
一連の流れを見ていたウルフは、言葉に詰まり、呆れた目でサラを見ていた――。
「出発時間は、マルロクマルマルだ! ちゃんと役割分担するんだぞ」
「「はい!」」
威勢よく返事をするのは良いが、これから五人の小隊を組まなければならない。
全員で動けば、敵に発見される可能性が高い為だ。
「小隊を組むわよ、クジでいいよね」
「いいよー」
そして、あみだくじで小隊のメンバーを決めることになった――。
「ゲッ!ウルフと一緒だし」
「まあまあ、そんなに嫌わないでよ」
ウルフは気を利かせ、護衛の人数を二人にまで減らしてくれた。とはいえ、サラたちの小隊は護衛を含めて七人。
いくらプロの護衛とはいえ、人数が増えれば、それだけ敵に見つかる確率も高くなってしまう――。
「護衛が付けば大所帯になるし……まあ仕方ないか……」
無理を言うわけにもいかず、装備を整えたサラはマップを広げ、周辺の地形を頭の中に叩き込んでいく。
※※※※※※
【後方支援・キースのテント】
現場で指揮を執るキースは、何かあれば機甲歩兵に乗り込み、対応するのが役目だ。
いまはドローンを飛ばし、戦場となる地域を監視している。
「ンッ?」
――その時だった、両隣に得体のしれない気配を感じる。
「至急、アーレイ陛下に伝達するのだ」
「はっ!」
「ここ、ここにいるの!」
パルエッタとパルティータが現れたのだが、気配が無いのでキースはキョロキョロと見回す。
すると、朧げに二人が見えた――。
「相変わらず分かりづらいよ」
「そんなことより、これを見るです」
パルエッタは身に着けていた多目的端末を取り出し、キースに見せた。
ちなみに、バグウサギさんは暗殺術に長けているため、今回の訓練への参加を断られていた。
彼女たちが森で戦えば、クーン組以外の生徒ではまず勝ち目がない。
そのため、今回はキースの後方支援を手伝っている。
「これって、本物の装備じゃねーか」
そこには迷彩服をまとい、実戦用のレーザー銃を構える数名の兵士が写っていた。
「こいつ、学生のグレイスだよ」
「間違いなくサラを狙っているの」
クーンの森に詳しいバグウサギは、サクッと偵察に行き、グレイスを発見したのだ。
これを見てキースは信じられない顔をする。
「なんだと、ステイシーを狙っているのか、これはまずいな――」
そして即座にアーレイに連絡を入れるのだった。
※※※※※※
【森奥深く・グレイスのチーム】
「このビーコンを頼りに行けばいい」
グレイスの多目的端末に表示されたマップには、赤い点が点滅していた。
その位置情報が示す目標は、もちろんサラだ。
「居場所が分かるなら、こりゃ楽勝だな」
グレイスは、後方支援の管理システムの機能を利用して、居場所を特定している。
これはハッキングではない――。
自社が開発したシステムだからこそ可能な、裏技だった。
「さあ、首狩りに行こうじゃないか」
不敵な笑みを浮かべるグレイス。
この時点で彼はサラを殺すつもりはなかった。
会敵するまでは――。
コメント
1件
わあ、修学旅行編の導入…って感じだね!妖精がウルフの心読んで「懐疑心と好意が入り混じってる」って暴露したシーンで草w サラが内心ナイス!って叫んでるの可愛い。そして後半の訓練、サラがライフルを棍棒代わりに振り回す脳筋っぷり笑った。キースの「俺でもその考えには至らない」が的確すぎる。最後のグレイスの「首狩りに行こう」で一気に不穏に。この切り替わりの温度差が好きだよ🥀 次どうなるかすごく気になる…!