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買い手なんて付く筈がない
そう、付く筈が無かったのに
青い模様が入った狐の仮面を被った黒髪の男
狐
元来、厄災などの穢れを遠ざける為の架空の生物
田畑、山の作物を守る神であり
生命の根源を司る “ いのち ” の神様
俺が願った結果が、今のこの状況と関係しているというのか。
男「お、兄ちゃん買ってくれんのかい?」
男「どんだけ出してくれんだ?」
狐面の男「幾ら出せばいい?」
男「そりゃもうあるだけに決まってんだろ」
狐面の男「….調子乗んな」
狐面の男が俺を繋ぐ縄を持った男に向かって金貨を数十枚投げつけた
当然、重力に従って金貨は男の顔にぶつかった後地面に落ちていく
なんせここは橋の上
不規則に散った金貨は数枚水の底へと落ちる
正気かこの男
こんな薄汚い奴隷にあんな枚数の金貨を払うなんて
どうかしてる
狐面の男「金は払ったからね」
「!ッぃ″、」
俺を繋ぐ縄を引くと狐面の男は歩き始めた
長時間繋がれているせいで手首が焼けるように痛いのもいつものことだったけど
この調子では折角縄の跡が消えてもまた残ってしまうだろう
買い手でもこの男のことは少し恨んでおくことにする
花街をしばらく歩き続けると突然雰囲気が変わった
多分、遊郭に入ったんだと思う
現在時刻は21時前後…多分
そろそろ妓楼が賑わい始める時間だ
狐面の男「顔上げて、着いたよ」
「!!」
言われた通り顔を上げると妙に小綺麗な妓楼が大きな橋の向こうに続いていた
妓楼の周りは藤の花に囲まれていて雰囲気がある
狐面の男「今日からお前はここの一員、俺に買われたのが運の尽きだね。」
狐面の男「….取り敢えずその汚い服をなんとかしなきゃな。」
狐面の男「こいつのこと風呂入れてきて」
「え、ちょっ」
狐面の男「お前さぁ…小さくない?」
「…貴方が大きすぎるだけだと思うんですけど」
明らかに背の丈があっていない着物を着せられれば誰でも文句は言うだろう
しかも女物
狐面の男「喋れるのか」
狐面の男「喋れるなら話は別ね、名前は?」
「向井奈緒…」
狐面の男「津金時」
奈緒「時…でいいの?」
時「いいよ。俺も奈緒って呼ぶし」
奈緒「時さ、俺の性別どっちだと思ってる?」
時「え、…付いてんの?」
奈緒「付いてるわ。俺男な?」
時「いや髪長いしまつ毛長いし…ぱっと見ほんとに女だよ」
奈緒「うるせぇ」
時「可愛くないなぁ…w」
奈緒「正直今はそんなのどうでもいいか」
奈緒「何が目的。 借金の押し付け?身体目当て?」
時「あーまぁ、どっちかって言われたら身体?」
奈緒「そっちかよ….」
時「俺が食うわけじゃないからね。因みに歳は?」
奈緒「17」
時「なんだ、丁度水揚げの時期じゃん」
奈緒「は…水揚げって、」
時「奈緒にとって初めて客を取る初夜の日。 その様子だとどういう意味かわかってるよね?」
奈緒「無理、ッ」
時「無理じゃない。やるんだよ」
時「これから奈緒には知らない客と寝てもらう。 遊郭ってのはそういう場所。」
奈緒「男に抱かれる趣味ないし…っ」
奈緒「はいそうですかってなる程俺物分りよくないしそもそも俺の意思でここに来たんじゃないのにッッ」
こいつの言うことを素直に聞くなんて絶対に嫌
言いなりになんてなってやるものか
時「意思、ねぇ…」
時「お前は奴隷、俺は買い手。奴隷が買い手に逆らう権利なんてあると思う?」
時「それとも、そんなこともわからないような頭なわけ?」
奈緒「ッッ….」
あぁ、久しぶりに感じた
空気が震えるような圧
奴隷になって数日、面倒くさくなったのか男からは圧なんて掛けられなくなった
時「逃げようとしてんのか知らないけどさ、 諦めたほうが身の為かもね。」
時「それに此処には男の相手を専門とする男娼が別館にいるし」
時「そんなにすぐ水揚げにはしないから大丈夫。 床の相手の仕方も習うし初めは舞踊とかからだと思うしさ」
時「兎に角、明日は着物の採寸があるから。 明日の朝10時に大門、わかった?」
奈緒「…..、」
時「返事」
奈緒「….は、ぃ」
時「寝る時はここ出て左曲がった部屋。 心配だったら他の遊女に聞きな」
時「じゃあ、また明日。」
「お前はもう俺のだよ」
奈緒「ッッ!!」
後ろ姿を見せたと思った刹那、振り返り俺の耳元でそう囁くと部屋から出ていった
やっぱり、神様は不公平だ
神様なんて信じない
信じてやらない
やっと見えた希望も、掴み損ねた
恐怖からか、何からかはわからない。
鳥肌が止まらなかった
俺はこれから生きていけるんだろうか
奈緒「趣味悪…」
あいつがいなくなり一人、部屋でそう呟いた。
ちょっとほんとにノベル難しい🥺
私の語彙力の有無が試されてる気がする
勿論そんなの元から無いんですけどね
でも結果的には書きたかったものが書けてるのでおっけーです
まじで前作の連載の#6ぐらいからずっと考えてたやつなので..
ちなみにここは物語の中で出てきた単語の意味を書く場所にしようと思ってます
妓楼 … 遊女を置き客を遊ばせる店のこと。
男娼 … 今で言う男性の同性愛者のこと。遊女と同じように客の相手をする。